リサーチ
2020.09.01
人材不足・働き方の変化が進む時代に求められる「人事評価制度」の構築
コストカットなら自社運用が理想だが「適切に運用できるか」に不安の声
企業における適切な人事評価は、賃金の決定だけではなく、生産性の向上や業績アップのためにも重要な意味を持つ。2020年1月、人事評価クラウドを提供する株式会社あしたのチームは、『人事評価制度の導入および運用に関するアンケート調査』を実施。人事評価制度の構築および再構築を考えている40代~60代以上の経営者109名の回答から、人事評価制度の意義や今後の課題を考察する。
企業やビジネスパーソン個人にとって「人事評価」は重要事項であるが、社内の人事評価に苦慮する企業や、現行の人事評価に不満を抱くビジネスパーソンは多い。また、明確な人事評価制度を持たず、評価の基準が明確でない企業もある。
近年、効率よく公平な人事評価を実現し、社員の育成をはかるために、人事評価制度の構築・運用を外注する企業も増えているが、経営者層はどのように考えているのだろうか。
株式会社あしたのチームが実施した『人事評価制度の導入および運用に関するアンケート調査』において、経営者の47.7%が人事評価制度を「自社で構築したい」と回答したのに対して、「専門のコンサルタントに依頼したい」、「社労士に依頼したい」は合計41.3%だった。
人事評価制度を「自社で構築したい」と回答した人に理由を聞くと、46.2%が「多額のコンサル費用をかける予算がない」と回答しており、「予算はあるが、コンサルに費用をかけたくない」という回答も17.3%。また、構築後の運用方法についても、「費用を一切かけたくないので自社で運用予定」がトップだった。
人事評価制度の導入・運用にあたって、「構築費や運用費などのコストをできるだけ抑えたい」と考える経営者が多いようだ。
人事評価制度の運用方法について「費用を一切かけたくないので自社で運用予定」と回答した人に、自社運用の不安要素を聞いたところ、下図のような内容が挙げられていた。
運用後の分析や改善、評価項目の設定や見直しが、適切に行えるかどうかについて不安視する声が目立つ。これは、人事評価制度の構築・運用の"ノウハウ"が不十分であることに対する懸念といえるのではないだろうか。
社員一人ひとりの能力を理解して個性を伸ばしていくことは、社員のやりがいを向上させて成長を促し、ゆくゆくは企業の業績アップにもつながる。だからこそ人事評価制度は、自社の理念や経営方針、求める社員像にマッチした内容で構築される必要がある。
そして、導入した後も適切な運用を遂行すること、何か問題点があった場合には速やかに見直しを行うことが大切だ。そうでなければ、実態と評価に乖離が生まれ、社員の育成や業績アップにつなげていくことは難しくなるだろう。
人材不足が進み、働き方の多様化も加速する近年、優れた人材の確保・育成は、企業にとって大きな命題となっている。時代に合わせた新しい社員教育が必須となるなか、企業は人事評価制度に対して、もっと真剣に向き合うことが望ましいのではないだろうか。
調査ではコスト面の理由から外注への壁が高かったが、同時にノウハウに対する不安も読み取れた。適切な制度の構築・運用のためには、専門コンサルタントや社労士への依頼を、長い目で見た投資と考えるべきかもしれない。また、自社で行う場合も、ノウハウや他社の例といった情報を集めたり、社員の意見をヒアリングしたりするなど、慎重に進める必要がありそうだ。
【出典】株式会社あしたのチーム 『人事評価制度の導入および運用に関する意識調査』