仕事のプロ
2020.10.07
オンラインコミュニケーションのお作法〈部下編〉
遠隔コミュニケーションにおける上司の悩みとは?
テレワークの導入により、企業では電話やメールに加え、多様なコミュニケーションツールを活用して遠隔コミュニケーションを行う機会が増えました。それに伴い、若手社員と同様に、上司も遠隔コミュニケーションの中で、さまざまな悩みを抱えています。上司がどんなことに悩み、部下はそれにどう対応したらいいのでしょうか。
テレワーク下での上司の悩みは
部下の業務状況が見えないこと
コクヨは緊急事態宣言下の4月、若手社員にテレワーク中のコミュニケーションツールの利用状況についてヒアリングをしましたが、そこから上司が抱える悩みも見えてきました。
オフィスで顔を合わせて仕事をしているときは、部下からこまめに報告がなくても、その仕事ぶりから業務状況を見て取ることができました。しかし、テレワークになると、部下からの報告なくして業務状況の把握は不可能です。そのため、若手社員と同様、テレワーク中は上司も部下の業務状況が見えないことに不安を感じているようです。
〈上司の不安〉
■メールの返信が遅いため、作業に戸惑っているのかメールに気がついていないのか判断することができない
■カレンダーに予定が入力されておらず(在宅勤務後にルール設定を始めた)何の作業をしているのかわからない
さらに、テレワーク中はクライアントなど外部とのやりとりも、オンラインツールを使った遠隔コミュニケーションが主流となります。対面で仕事をしていれば、「あのお客さまに〇〇の報告をしました」「この資料を先方に送っておきました」など、口頭ですぐに確認できた進捗状況が、テレワーク中はできなくなります。こうしたタイムリーな進捗確認ができないことにも上司は不安を感じるのです。
オンラインコミュニケーションのお作法〈部下編〉
■SNSツール活用の提案を積極的に行う
ほどんどの企業では、これまで主に電話とメールでコミュニケーションをとってきました。そのため、チャットなどの新たなオンラインツールの使い方に慣れていない上司が多いようです。なかには、「いつなんどきも、急ぎの連絡はチャットではなく電話をするもの」といった固定観念から抜け出せない上司もいます。
これを解消するには、まずは部署やグループ内でコミュニケーションツールの使い分けのルールを決めること。その際、部下から上司に、最適と思われるツールの使い方や便利な活用法を提案するといいでしょう。
上司の中には、新しいツールのメリットを理解できていない人もいます。「こんな便利な方法があるので、チャットを使ってみませんか? 」と具体的な提案をするなど、部下から積極的に新たなツールの活用を促す働きかけをしていきましょう。
■進捗状況はこまめに連絡する
テレワークだからこその上司の悩みも、部下の対応次第で解決します。ただ、あらたまって進捗報告しようとすると「どう伝えようか」と、報告のためのメール作成に時間がかかり、面倒になるもの。
そのため、まずは用件だけを簡潔に書いてスピーディに送れるチャットを活用し、こまめに状況を報告するといいでしょう。若手社員ほど、頻繁に上司に連絡をするのは悪いと思いがちですが、「ちょっとした情報発信をしてくれたほうが安心する」という上司の声も多くあります。
〈上司が安心〉
■「簡単な報告があると、一から作業状況を聞かなくても困っているポイントや一緒に解決できそうな場合に早急に対応ができる」
■「用件を押さえて分かりやすくチャットで表現できれば、メールを丁寧に書くよりも業務効率はあがる」
■上司と情報共有ができる状態をつくる
外部の人にメールをするときは上司をCCに入れたり、メールをした後、「あの内容について返信しておきました」とチャットで連絡したりして、速やかに上司と情報を共有するよう意識しましょう。
■連絡が遅れたときは遅れた理由を一言添える
上司も部下からの連絡を待つのではなく、自ら連絡をして情報を得る必要がありますが、部下から返信がないことに、「何かトラブルが起きているのでは? 」と不安になる場合もあります。
すぐに返信できないときは、「先ほどは会議中でした」「お客様と電話中でした」など、どうして遅れたのかがわかる一言を添えて返信をすると、上司は状況を把握できて安心します。
対面で仕事をしているときは、そうした一言は必要なかったかもしれませんが、お互いの状況が見えないテレワークでは相手を安心させるため、情報共有できる一言を盛り込むことが大切です。
■ツールのメリットや活用法をさりげなく伝える
使い分けのルールを決めても、最初のうちは「連絡は電話やメールでするもの」という固定観念がなかなか抜けない上司もいます。
「チャットはスピーディなコミュニケーションが魅力」というメリットを上司が理解しやすいよう、部下からチャットをするときは、「すぐに確認したい内容なので、チャットで失礼します」といった前置きを加えるなど、ツールのメリットや活用法をさりげなく伝える工夫が必要です。
また、日頃からチャットを使用しているメンバーとの会話の状況を実際に見せて、便利な機能や業務がスムーズに進んでいる状態を一緒に理解してもらうという方法も有効です。
■チャットでは要点を最初に書く
さらに、チャットは短文の入力が多く、報告内容が不十分になって用件がわかりにくくなりがち。上司が「チャットは使いにくい」と感じないよう、「○〇社との打ち合わせの件です」「△△についての確認です」とクライアント名や要点を最初に書くなど、上司が目で追いやすい書き方をするのがおすすめです。
そのほか、複数のメンバーの中から、必ず見て欲しい相手を指定できるメンション機能(@名前:アットマークの後に名前を表示する機能)を使うのもいいでしょう。
オンラインコミュニケーションで部下が実践すべきこと
■SNSツール活用の提案を積極的に行う
■進捗状況はこまめに連絡する
■上司と情報共有ができる状態をつくる
■連絡が遅れたときは遅れた理由を一言添える
■ツールのメリットや活用法をさりげなく伝える
■チャットでは要点を最初に書く
オフィスで共に仕事をしているときは、上司が部下の様子を見ながら、何気なく声をかけることができました。しかし、テレワーク中の遠隔コミュニケーションでは、テキストベースで部下にどう声がけをしたらいいか、わからなくなっている上司もいます。
距離が離れていて、相手の状況や心情をつかみにくく、不安を感じているのは上司も部下も同じ。両者が双方向のコミュニケーションを心がけ、ツールを上手に使い分けて「報告・連絡・相談」を積極的に行っていきましょう。
中村 彩(Nakamura Aya)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルリサーチャー
2018年コクヨ入社。働き方のコンサルティング業務のほか、社内社外セミナー、新人研修企画などの活動にも着手。