仕事のプロ
2020.12.10
組織の「心理的安全性」を高めるために〈前編〉
安心感がパフォーマンスを最大化する
コロナ禍をきっかけにテレワークが普及し、社内コミュニケーションのあり方も短期間で急激に変化した。離れて働くことが多いからこそ、管理職やチームのリーダーは、組織全体の生産性が高まるよう留意する必要がある。その生産性向上のベースになるといわれるのが、近年ビジネスシーンでよく聞かれる「心理的安全性」というキーワードだ。今だからこそ求められる心理的安全性の重要性について、コクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部コンサルタントの立花保昭が解説する。
テレワークが増えた今だからこそ 心理的安全性の担保が重要
チームメンバーが心理的安全性を感じるためには、当然ながら普段からのコミュニケーションが大切です。しかし、コロナ禍によって、チーム間のやりとりがオンライン中心になったという企業様は少なくありません。 コミュニケーションスタイルが変化したことによって、これまで部下との関係を意識的に築いてこなかったリーダーがマネジメントに苦労するなど、以前からの潜在的課題がコロナ禍により顕在化するケースが出てきているようです。 またテレワークの増加で、「組織やチームへの帰属意識低下」という問題も浮上しています。自分のアウトプットや仕事ぶりを評価してもらう機会が減るため、『チームの一員として役立っている実感が持てない』と感じるワーカーが増えているのです。 だからこそ管理職やリーダーの方は、「チームの中に自分の居場所がある」と感じて活躍してもらうためにも、心理的安全性を担保する取り組みを行っていくことが重要です。一番大切なのは 安心感だけで終わらず挑戦を促すこと
ただし、部下やチームメンバーに「心理的安全性を感じてもらうこと」自体が目的であってはいけません。大切なのは、心理的安全性を担保したうえで、本人のもつ将来へのビジョンやスキルに見合った挑戦をさせることです。 例えば、「この会社で3年後、5年後にはどうなっていたいか」といった部下のキャリアイメージを1on1などでつかみ、そのキャリア像に向けて、本人のポテンシャルより少し高い能力が必要な「挑戦の場」を与える、といったアクションが求められます。 その際のリーダーの役割は、「何かあっても大丈夫だよ」とメンバーを安心させること。イメージとしては、ロッククライミングに挑むメンバーを見守るビレイヤー(クライマーの安全確保をする役割)のような感じです。 『万一失敗してもリーダーが受け止めてくれる』と思うことができれば、メンバーも思い切ったチャレンジができます。 部下やチームメンバーに最大限のパフォーマンスを発揮してもらうために、心理的安全性の確保に努めていきましょう。心理的安全性を高めるための具体的なアクションは、後編でご紹介します。 【関連記事】 〈後編〉 組織の「心理的安全性」を高めるためにリーダーが身につけるべきスキルとは立花 保昭(Tachibana Yasuaki)
コクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部 ワークスタイルコンサルタント/1級ファイリング・デザイナー/オフィスセキュリティコーディネータ
1990年コクヨ入社。出向した総合商社での大手流通業向け中国製品の開発・輸入・販売、コクヨでの開発営業、及び上海でのカタログ通販ビジネス立ち上げ等の経験を生かし、現在は企業向けの働き方改革の制度・仕組みづくり、意識改革・スキルアップ研修などをサポート。