仕事のプロ
2020.12.24
今こそ求められる「ナレッジマネジメント」とは?〈前編〉
ナレッジの拡張・共有で生産性を高める
昨今、企業や組織におけるナレッジマネジメントの取り組みが広がりをみせている。ナレッジマネジメントの狙い、目的として、知(ナレッジ)の共創によるイノベーション創出への期待も高い。一方、ナレッジマネジメントの効果には、効率化・生産性向上という側面もあり、イノベーション創出同様に大きなインパクトがある。ナレッジの共有が効率化・生産性向上にどう効果的なのか、コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタントの吉澤利純氏に解説してもらった。
組織に求められる
「ナレッジマネジメント」とは?
組織のナレッジマネジメントとは、個人やチーム・部署などに留まり、属人化しがちなナレッジを、組織全体にオープンにしてみんなで共有、活用することで、新しいナレッジを生み出し、またそのナレッジを共有し活用する、そんなサイクルを回していくというマネジメントの考え方です。
変化の激しい今の時代は、新しい価値を生み出せない組織は相対的に衰退してしまいます。絶えず新しいものを生み出さねばならず、そのためには各自が保有するナレッジを共有し、拡張し(増やし)、知を共創していく必要があるのです。
ここで、「ナレッジ」について補足しておきましょう。ナレッジはとても幅広く多様です。業務上で知り得た知識・情報やスキルの他、個人的に学び習得したもの、経験によって得た知見、そしてさらなる情報収集を可能にする人脈もナレッジと言えます。
また、無形のものに限らず、資料やデータなど有形のナレッジもあります。ナレッジ共有には、誰がどんなナレッジを保有しているのか、求めるナレッジがどこに格納されているのかを見える化することが重要になります。
ナレッジの共有・拡張により新しい価値を生み出す、つまりイノベーションを創出するというのがナレッジマネジメントの究極の目的ですが、ナレッジを共有する過程で、生産性や業務の効率性が高まるというのも大きなメリットです。
イノベーションを生み出すという大目標は、日々の業務のなかでは実感しづらいかもしれませんが、目下の業務効率化に効果があるという視点で捉えると、ナレッジマネジメントをより身近に感じられるのではないでしょうか。
ナレッジマネジメントの
4つのフェーズ
ナレッジマネジメントを成功に導くためには、一人ひとりの知識を、「表出化」「素材化」「血肉化」「共創化」する4つのフェーズに分けてマネジメントし、サイクルとして回していくことが重要だと考えています。ナレッジマネジメントによる「知の共創(ナレッジ・コ・クリエーション=ナレコク)」です。
「知」の表出化
最初は、「表出化」です。個人の内部にあるナレッジを外部に引き出し、見える状態、読める状態に可視化するフェーズです。具体的には、経験、知見といった目には見えないけれども際立ったナレッジを持った個人へのインタビューによりノウハウ・知識を聞き出して記事化する、また個人が作成しオープンになっていない優れた提案資料などを収集して公開する、などのアクションが考えられます。「知」の素材化
「表出化」によって可視化されたナレッジを、探せる状態、使える状態(素材)にするのが「素材化」です。収集した提案資料を他の人がアレンジして活用しやすいよう、フォーマットを標準化したり、使いたい資料がすぐに見つけられるよう、資料の格納場所や電子フォルダの体系を改善したりというアクションがこれに当たります。「知」の血肉化
ワーカー一人ひとりが、素材になったナレッジから学び、新たな知識としてインプットするのが「血肉化」です。ここで重要なのが、「素材化」したナレッジをインプットしてもらう仕掛けです。メールやポスター、サイネージなどを使って、素材となったナレッジを組織内に広く周知する。また、セミナーや研修会を実施して、ナレッジの吸収(インプット)を促します。吸収したナレッジを使う、つまりアウトプットすることでワーカー個々人の「血肉」となります。「知」の共創化
血肉化された個人のナレッジを組み合わせて新たなナレッジを共創するのが、「共創化」です。そして、共創化のカギはコミュニケーションにあります。コミュニケーションが自然と活性化するような空間や仕組みをつくったり、共創を目的とした社内外の交流会やワークショップを企画するなど、場と機会をつくっていくことが必要です。新しい価値を生み出し続けるためには、この4つをグルグルと回すことが重要です。今回は、業務改善につながるという視点から、特に「表出化」「素材化」「血肉化」のフェーズに着目して詳しく解説していきたいと思います。
吉澤 利純(Yoshizawa Toshizumi)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1級ファイリング・デザイナー/オフィスセキュリティコーディネーター ストア事業、営業、新規事業企画部門を経てワークスタイルコンサルティング部門に所属。 主に、ナレッジシェアリング構築のコンサルティング、オフィス構築、運用改善コンサルティングを担当し、お客様の働き方改革をサポート。