リサーチ

2021.04.07

ワーケーションは「旅する」と「働く」の新スタイル

「ワーケーションしたい!」は39%

ワーケーションはニューノーマルな働き方・休暇の過ごし方として注目されているが、働き方の多様化は、休暇の過ごし方の多様化とも表裏一体だ。総合旅行ブランドのエクスペディア(Expedia)は2020年8月『ワーケーションに関する意識調査』を実施した。

ワーケーションとは

ワーケーションとは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、休暇と仕事の両立、具体的にはホテルやリゾート地などの休暇先で、リモートワークで仕事をすることを意味している。

近年、働き方改革の一環として導入する企業が増えてきたことに加え、新型コロナウイルスの影響を受けている地域経済の再活性化を目的として、環境省がワーケーションの推進事業実施を決定。令和2年度の補正予算にて補助金の交付も行っている。

ワーケーションは「好きな場所で仕事をしたい」「仕事をしながらでも自由な日程で旅をしたい」という人にはメリットが大きい一方で、「休暇と仕事は完全に切り分けたい」という人には魅力的ではないかもしれないが、今までになかった新しい働き方、そして新しい休暇の過ごし方・旅行スタイルとしても認知されはじめている。

エクスペディアが実施した『ワーケーションに関する意識調査』によると、年代に関係なく、半数以上がワーケーションの意味を「知っている」と回答している。

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「したい」のに「できていない」のはなぜ?

ワーケーションをしてみたいかを聞くと、「したい」と答えたのは39%。年代別に分析すると、若い人ほど利用意欲が高い。またワーケーションの利用経験に関しても、若い世代ほど経験者が多い傾向が顕著だった。

若い世代のほうが、ワ―ケーションへの意欲も経験値も高い理由としては、若者がより柔軟な仕事スタイルを選ぶ傾向がある一方で、年齢が上がることで、仕事への責任や役職なども上がるため、休暇と仕事を両立しにくくなるいことも影響していると考えられる。

とはいえ、ワーケーション経験者は全体で16%、20代でも3割以下と、経験者はまだまだ少ない。新しい働き方の一つとの認知は広がるも、実現するには本人の意志だけでなく、会社側の協力も不可欠だ。

コロナ禍でテレワークが進んだとはいえ、ワ―ケーションとなるとその範囲を超える。勤怠や休暇制度の見直しも必要となるため、簡単ではないようだ。

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メリット・デメリット

調査では、ワーケーションを「したい」派と「したくない」派に、それぞれ理由を聞いている。

<ワーケーションをしたい理由>

「リフレッシュできそう」「ストレスが軽減できそう」「生産性が上がりそう」など、働く視点から見たメリットに加え、「少ない有休日数で旅先に長期滞在できる」という、旅の視点から見たメリットもランクイン。また、新型コロナウイルス影響下でリモートワークに慣れたことも、ワーケーションへの関心が高まる大きな要因になっているようだ。

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<ワーケーションをしたくない・できない理由>

1位の「仕事とプライベートの切り分けが難しそう」は、在宅勤務でもよく指摘される内容。旅先は誘惑が多く、メリハリがつけにくいかもしれない。2位の「旅先でまで仕事をしたくない」は、ワーケーションを「働き方」ではなく「休暇の過ごし方」として考えると、納得の意見。

また「旅先で就業できる仕事内容ではない」「会社に認められない」など、ワーケーションをしたくてもできない...という内容も、ここに挙げられていた。

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ワーケーションは
柔軟な働き方・休み方の新スタイル

休暇の過ごし方・旅行スタイルとしてワーケーションを考えたとき、年末年始やお盆、週末などの混雑を避けて宿などの予約が取りやすい平日に動けるメリットは大きい。会社にワーケーションが認められれば、従来は多くのビジネスパーソンにとって難しかった「旅先での長期滞在」も可能になるだろう。

働き方としてのワーケーションもまた、大きな可能性を秘めている。新型コロナウイルス感染拡大以前から、働き方改革の一環として、リモートワークやABWが注目されていた。柔軟な働き方メリットは、ワークライフバランスの実現に加え、自分の裁量でスケジュールを決め、ストレスの少ない環境で仕事をすることによって、意欲や生産性の向上なども期待されていた。これまでは、自宅やコワーキングスペースが主だったが、今後は「旅先」も一つの選択肢になるのではないだろうか。

ワーケーションは柔軟性の高い働き方であり、休み方でもある。たとえ仕事が閑散期でも、周囲の目や万が一のトラブルなどを気にして長期休暇の取得をためらってしまう日本人の性質と、仕事とつながりを持ちながら安心して旅を楽しめるワーケーションは、相性も良いと考えられる。

調査結果からは、ワーケーションはまだまだ一般的とはいえず、会社制度も発展途上であることが読み取れた。しかし新型コロナウイルスによって半強制的なテレワークを経験したことが実績となり、恒常的なテレワーク導入を推進する企業も少なくない。それと同じように、思い切って導入してみると、ビジネスパーソンたちの満足度や意欲、生産性を上げる施策になり得るかもしれない。


【出典】エクスペディア(Expedia)『ワーケーションに関する意識調査』
作成/MANA-Biz編集部