リサーチ
コロナ禍で見えた社内会議の改善点
意識改革とスキルアップが必要
新型コロナウイルスの影響でテレワークが浸透。会議のあり方も変化し、その実態やオンライン会議の常態化によって想定される課題などが見えてきた。これからの会議に必要な改善ポイントについて、コクヨ株式会社が実施した調査結果をもとに解説する。
コロナ禍における オンライン会議の割合
調査によると、社内会議の回数は1週間に5回以下がほとんどで、1週間に1度も会議がないという回答も3割強ありました。また、「100%オンライン会議」は28.3%にとどまり、「オンライン会議は50%以下」が61.4%と半数以上に上りました。 調査が行われた2020年12月は、新型コロナウイルス感染の再拡大で、2度目の緊急事態宣言発令が迫っていた時期。そのなかで5人中3人以上が2回に1回は対面会議を行っているのは思いのほか多い印象ですが、コクヨの別調査(新型コロナウイルス収束後の働き方について)で、12月上旬の出社状況について59.2%が「毎日出社」と答えたことをあわせて考えると、当然の数字ともいえそうです。 〈関連記事〉緊急事態宣言から半年で薄れた危機意識
会議時間は1時間が最多
会議の平均時間は「1時間」が最も多く7割弱。コクヨ社内のオンライン会議調査(2020年1~6月におけるWEB会議の活用状況について)でも1時間以内の会議が約7割だったことからも、オンライン会議の場合は1時間が標準的で、対面の会議より短い印象があります。また、対面会議においても感染対策の観点から時短になっていることが推察されます。 〈関連記事〉ポストコロナにおけるコミュニケーションスタイル
会議室の利用が大幅減 会議自体がなくなる例も
調査では、会議体と場所についても、新型コロナウイルス感染拡大以前と現在の変化をたずねました。どの会議体でも会議室の利用が大幅に減少している一方で、オンライン会議が増えています。特に、「企画会議」「アイデア創発会議」「定例ミーティング(部会・朝会など)」の3項目で、その傾向が顕著でした。また、すべての会議体で「コロナ禍により会議がなくなった」という声もあがりました。 感染対策の主軸である「3密回避」の観点から、会議手段の見直しに加え、参加者選びや会議そのものの必要性が問い直されていると考えられます。
会議のモチベーションに影響する要因
会議を有意義なものにするためには、参加者のモチベーションを高く保つ必要があります。調査では、「会議の集中・モチベーションに影響する要因」を、オンラインとオフライン(リアル)に分けて聞きました。 会議の内容が参加者の集中力やモチベーションに影響することはもちろんですが、会議の環境も重要です。調査からはオンライン・オフラインに共通して「聴覚」への影響が集中力やモチベーションを左右することがわかりました。 オンラインでは特に「参加者が出す雑音」がマイナス要因として高く出ていますが、マイクが周囲の雑音まで拾ってしまうため、オフラインの時以上に気になるのでしょう。ただし、この雑音はオンラインでは避けられない問題です。オンライン会議では「音」に注意をはらう必要があり、集中力やモチベーションを高めるうえでも重要といえるようです。
オンライン会議は 活発な意見交換が課題
感染リスクの点から会議室の利用が減っていることは先に触れましたが、そのことがモチベーション低下につながらないことも調査から見えてきました。だだし、留意したいポイントもあります。 「聴覚」への刺激が集中力やモチベーショに影響しやすく、オンラインの方がそのリスクが高い傾向がありますが、特に「企画会議」や「アイデア創出会議」ではその傾向が強いことも別の回答から見えてきました。また、雑音などの環境要因に加えて、オンラインでは「伝わりにくい」「自由に発言しにくい」「臨場感に欠ける」「テンポが悪くなる」「発想のレベルが下がる」「楽しくない」といった理由も挙げられていました。 企画会議やアイデア創発会議においては、ブレインストーミングなどで活発にアイデアを出し合うことが求められ、自由闊達で一体感を得られる環境が適しています。考えを発言しにくい、臨場感に欠けるといった状況では、本来の目的である企画やアイデアの創発が難しくなるため、会議の内容にあわせたオンライン・オフラインの使い分けや、オフラインでも活発な意見交換ができる工夫が必要になりそうです。
これからの会議に必要なこと
調査結果からは、今後の会議のあり方について、以下4点の重要ポイントが読み取れました。
1.会議はオンライン・オフラインの併用が理想
ネット環境やツールなど設備の充実が不可欠。また、オンライン・オフライン両方の参加者がストレスなく会議にのぞめるような運用ルールの構築も求められます。
2.感染予防への配慮
オフィスで行われる会議では、参加者の座る位置(密回避)や換気、会議の設定時間を短縮、参加人数の制限などの感染予防対策が行われています。設定された時間を厳守し、接触時間を極力減らすことも重要です。
3.ファシリテーターのスキルアップ
現状、調査によると、ファシリテーターとして「時間通りに予定会議を終了する」「円滑な進行」「時間通りの開始」といった時間管理に対しての配慮は十分感じているという結果が出ています、しかし、オンライン会議が増えるなか、会議の質を向上させる役割が、より重要になってきます。オフラインで実現できていた活発な意見交換をオンラインで実現するために、参加者をまとめて臨場感や一体感を高めるスキル・テクニックが求められます。
4.会議の見直し
オフィスでは物理的距離が近く互いに声をかけやすかったこともあり、必要以上の会議がセッティングされたり、参加者の人選が甘くなったりする傾向がありました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、時間や場所への配慮、参加者の厳選など、会議設定で気をつけるべき点が変化しています。これを機に会議の再整理を行い、実りの少ない会議は思い切って省き、効果・効率を重視した会議設定へと意識を変えていく必要があるのではないでしょうか。
テレワークをはじめとした柔軟な働き方は、ポストコロナでも、継続・拡大していくことが予測されます。働き方が変われば業務フローの見直しも求められるのは必然で、会議も例外ではありません。 これまで働き方改革でも課題として挙げられることが多かった「会議」は、新型コロナウイルス感染拡大によって改善・改革に向けた大きなきっかけを得たといえるでしょう。実施日:2020.12.1-2実施
調査対象:社員数500人以上の企業に勤めているワーカー
ツール:WEBアンケート
【図版出典】Small Survey「社内会議」
河内 律子(Kawachi Ritsuko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。