リサーチ
コロナ禍で迎えた2回目の年末年始、ワーカーの意識はどう変わったのか
ワーカーの意識の変化にあわせて企業がやるべきこととは?
新型コロナウイルス感染拡大から2度目の年末年始を迎え、久々に行動抑制が緩む傾向も見受けられた。ハイブリッドワークにも慣れてきた2022年の年明け、ワーカーは何を思うのか。行動や意識に変化はあったのか。危機意識の変化、働く意欲や働き方について、コクヨが実施した調査結果をもとに考察する。
コロナ禍3年目の危機意識
2021年の10月以降は全国的に感染が下火になり、東京でも一日の新規感染者数が50人を下回る日が続いていました。人流も戻り始め、緩やかなオフィス回帰も見られました。そんな中でワーカーの危機意識に変化はあったのでしょうか。2つの側面から見ていきます。
年末年始の外出への意識
まず行動面に変化はあったのか、年末年始の外出予定について聞いてみました。昨年と比較して家族・親族の元に帰省した割合は14.7ポイント増えており、2年ぶりの帰省を心待ちにしていた人が多かったことがわかりました。 また、忘年会と新年会の予定についても聞いてみたところ、忘年会に比べて新年会の実施予定は大きく減少傾向がみられました。コロナ流行の落ち着きが見られた年末は危機意識も緩み、少人数ながらも忘年会をした人が一定数いましたが、年始から新しい変異株(オミクロン株)の感染が一気に広がりを見せ、再び緊張感が高まったことで新年会を控える傾向に動いたと考えられます。
緊急事態宣言への意識
緊急事態宣言解除前(2021年9月30日)と現在の危機意識の変化について聞いてみたところ、約3割の人が「危機感は増している」と答えた結果になりました。緊急事態宣言下よりさらに危機感が増していると答えた背景には、調査を実施した1月13日から15日には全国の新規陽性者数が3万人迫る勢いで「第6波」の兆しが見え始め、感染を急拡大させているオミクロン株の特徴などもまだわからない状況だったことが影響していると考えられます。また8割の人は変わらず危機感を持ち続けていることもわかり、長期化するコロナ禍が人々に常にストレスを与えていることは想像に難くないでしょう。
2022年、withコロナ時代の企業に期待すること
年始の経営・上司の挨拶で期待できること、という問いに対しては「新しい働き方を実現する施策(36.6%)」がもっとも多く、コロナ禍の一時的な施策ではなく恒常的に多様な働き方ができることへの期待が感じられました。次いで「事業をより成長させる施策(24.3%)」と、感染拡大防止施策よりも企業成長につながる施策に期待を寄せる、ワーカーの自社の成長に対する前向きな意識が感じられました。 一方で「期待できそうなことはない(23.6%)」という回答が昨年度の同じ時期の調査結果(19.4%)より4.2ポイント増えています。年頭の挨拶では今後の会社の方向性や中長期的な計画が語られることが多いなかで一定数が「期待できない」と答えたことには注視が必要です。コロナ禍で在宅ワークが増えたことによる物理的距離の影響も大きいと考えられますが、厳しい状況下で企業がどう行動したのかが自社への期待を左右し、結果、気持ちが離れてエンゲージメントが低下した可能性も考えられます。
2022年、ワーカーの働く意欲
次にワーカー自身の働く意欲について、いくつかの観点で聞いてみました。成長へのポジティブな姿勢が働く事に対してどのような意識に表れているのか、調査からみえてきました。
社内活躍・キャリアアップ
「仕事で今年頑張りたいこと」という質問に対して、まず「チャレンジしたいことはない」という項目が昨年度より12.3ポイント減少していました(昨年28.8%→16.5%)。逆に大幅に増加したのが「新たな資格取得」(22.3%→31.1%)。他に傾向として「昇進・昇格」(16.2%→19.4%)「キャリアビジョンの棚卸と再設計」(11%→12.3%)「自身のキャリアビジョンに合った異動」(9.1%→12%)など、現在の組織での活躍に注力し、足元を固めようという意欲が見られました。 反対に「副業へのチャレンジ」(21.7%→19.7%)「自身のキャリアに合った転職」(12.6%→8.1%) など新しい環境での活躍を志向する項目は昨年度より減少傾向に。コロナ禍で働き方や生活が一変した当初は「移住」や「転職」「複業」など新しい働き方や暮らし方がメディアでも大きく取り上げられていましたが、コロナとの共存にも慣れ、冷静に足元を見て自身のキャリアを着実に高められる方向性にワーカーの関心がシフトしてきているのではないかと推測できます。
仲間との協働
では今後成長に向けてワーカーが安心して働くためにオフィス環境に必要なものは何か、という問いに対しては「多様な働き方が可能な制度(56%)」が最も多く、コロナ禍で得た働き方の多様性を維持したいという期待の表れといえるでしょう。 また、「仲間から頼ってもらえること(32.7%)」「上司との密なコミュニケーション(30.1%)」「仲間との団結力・結束力(24.6%)」「同部署の同僚との協業(23.9%)」といった仲間と協働することが、働くうえでの「安心」を高めることも見えてきました。対面でのコミュニケーションが減り帰属意識の低下が懸念されるなか、ワーカー自身も仲間とのコミュニケーションと協働による心理的安全性を求めていることが推察されます。 一方で「他部署の人とのより活発なコミュニケーション」「部署を超えたプロジェクトへの参画」などはあまり選ばれていないことから、コロナ禍で希薄になってしまった、より身近な仲間や同僚と関係性の再構築をより重要と感じていていることが見てとれます。
信頼と自己肯定感の獲得
ワーカー自身がモチベーション高く働くために必要なことも、「仲間から頼ってもらえること(42.7%)」「上司との密なコミュニケーション(30.1%)」「上司からの期待(28.2%)」「仲間との団結力・結束力(25.9%)」「同部署の仲間との協業(25.6%)」といった項目の数値が高く、やはり他者との関わりや自分が役に立っているという実感、信頼を寄せられることが自己肯定感や自己効力感を高め、モチベーションに寄与することがわかりました。働く意欲を高める土台として、オフィスで毎日顔を合わせて働いていた時には当たり前すぎて意識していなかった「仲間」の価値がより顕在化したのがコロナ禍だったのかもしれません。
まとめ
今回の調査で、コロナ禍3年目を迎えた2022年、ワーカーの意欲はポジティブに変化してきており、そのなかで仲間とのつながりや自己肯定感・自己効力感を感じられるコミュニケーションを求めていることがわかってきました。 コロナ禍でコミュニケーションの大切さを再認識したからこそ、今後も続くと期待される多様な働き方のなかで、コミュニケーションの質やその先にある関係性を大切にしたいという気持ちを強く持つようになっていることが伝わってきます。 オフィスという場も、テレワークでは得られない、共に働く人たちとの質の高いコミュニケーションや協業を実現できる場としての価値がより求められるようになっていくことが予想されます。今改めて、自社の環境を「仲間づくり」という視点で見直してみる必要があるのかもしれません。
実施日:2022.1.13-15実施
調査対象:社員数500人以上の民間企業に勤めるワーカー
ツール:WEBアンケート
【図版出典】:Small Survey 第31回「2022年の始まり」
河内 律子(Kawachi Ritsuko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。