レポート

2024.07.05

街を新しいビジネスの土壌に

人や企業が集い、つながる仕掛けをつくる

2024年5月29日、東京・天王洲に、北海道を拠点に幅広く事業を展開するサツドラホールディングス株式会社がインキュベーションセンター「EZOHUB TOKYO」を開業した。オープニングイベントでは、施設内覧などに続いて交流パーティーが行われ、寺田倉庫株式会社代表取締役社長の寺田航平氏とコクヨ株式会社社長の黒田英邦が登壇してのミニトークセッションが実施された。「天王洲の街がもつ可能性」「街が変わると何が起こるか」などをテーマに展開されたセッションの模様をレポートする。
写真左から)寺田航平氏、富山浩樹氏、黒田英邦

登壇者

■寺田航平氏(寺田倉庫株式会社 代表取締役社長)

■黒田英邦(コクヨ株式会社 代表執行役社長)
モデレーター:富山浩樹氏(サツドラホールディングス株式会社代表取締役社長 CEO )




天王洲を
「ベンチャーとスタートアップの街」に

「EZOHUB TOKYO」は、「北海道と日本をつなぐ"出島"」をキャッチフレーズとする施設。コワーキングスペースやシェアオフィスのほか、ショップ、カフェスペースなども備えている。まずはサツドラホールディングス株式会社の富山氏が、施設の設置場所として選んだ東京・天王洲への思いを語る。

富山:「EZOHUB TOKYOを開業するにあたって、たくさんの方から『なぜ天王洲にオープンするんですか?』と質問を受けました。実のところ、東京駅に近接する八重洲などいろいろな場所を検討していました。その中で、今回パートナーとして参画いただいている寺田倉庫の寺田社長とお話する機会があり、天王洲の街に対する熱い思いを共有していただきました。そこで私たちも、未来の天王洲をつくる一端を担いたいと考え、このエリアでのオープンを決めたのです」

6_rep_032_001.jpg 富山浩樹氏

続いて寺田倉庫株式会社の寺田氏が、天王洲の発展プロセスや自社で手がけるインキュベーション事業について述べた。

寺田:「天王洲は1980年代から再開発が進められ、オフィスビルが建ち並ぶ街になりました。ただ、オフィス以外の施設が乏しい面もあったので、もっと彩りのある街へと発展させていきたいと私たちは考えました。そこで、まずは"アートの街"をコンセプトに、アート関連のスポットをつくり、多様なイベントを実施してきました」

「一方で天王洲は、羽田空港や品川駅に近く、地方とのアクセスが非常によい街でもあります。そこで、東京と地方をつなぐハブとなり得る天王洲にベンチャー企業を集結させようとする動きも2010年代から始まっています。私たち寺田倉庫も、地方との連携を深めつつスタートアップやベンチャーを誘致するために、インキュベーション事業『Creation Camp TENNOZ』を起ち上げました」

6_rep_032_002.jpg 寺田航平氏

富山:「具体的にはどんな事業内容なのですか?」

寺田:「毎年シード期のスタートアップ企業10社を選ばせていただき、私たちが用意したインキュベーションオフィスに無償で入居し、事業構築していただきます。出資やアドバイスなどの支援もさせていただきます。コクヨ様に設計・施工をお願いしたオフィスもすでに完成しており、この場所から新しいスタイルのインキュベーションを始めていきたいと考えています」




街が変われば企業のあり方や
ワーカーの行動も新しくなる

コクヨ株式会社の黒田は、EZOHUB TOKYOの開業に参画することになった経緯や、街が発展することの意義について語った。

黒田:「コクヨでは、EZOHUB TOKYOのインテリア設計・施工を担当させていただきました。以前から富山さんや寺田さんの新しい挑戦に注目させていただき、いつかコクヨも関われればいいな、と思っていました。そこへ今回のお話をいただき、新しい場づくりにぜひ参画したい、と名乗り出ました。よいオフィスとは、その場所で新しい試みや面白い活動が行われている、ということだと思います。その意味で、EZOHUB TOKYOは、まさに"よいオフィス"になると信じています」

「コクヨの東京本社も天王洲から近い品川にあり、このエリアがどんどん変わっていくことを願っています。街が変わることによって、企業のあり方やワーカーの行動も新しくなっていくのではないでしょうか」

6_rep_032_003.jpg 黒田英邦




街の役割は
人と人とをつなげること

トークセッションのしめくくりとして、富山氏が登壇者2名に未来の街づくりについて質問する。

富山:「街づくりは、線や点ではなく"面"で取り組んでいくことが重要だと思います。セッションの最後に、天王洲でのコラボレーションに対する期待を一言ずつお願いします」

寺田:「EZOHUB TOKYOをはじめ、天王洲の街にはどんどんシェアオフィスが誕生しています。この勢いでシェアオフィスを増やしてベンチャー企業が集う環境をつくり、ひんぱんにイベントを実施してさまざまな人に登壇してもらいたいと思います。こうして人と人との接点をつくることで、新しいビジネスモデルが生まれていくのではないでしょうか。また、天王洲という街に多様な地域の結節点となり、地域のビジネスに東京がますます寄与できるようになればうれしいですね」

黒田:「コロナ禍以降、都市部における働き方はめまぐるしく変化しています。多くの企業がこの状況をチャンスととらえ、新しいビジネスを模索しています。ただ、1社だけで変化を起こそうとしてもインパクトは少ないので、各企業がどうつながって新しいことに取り組んでいけるかが重要です。このつながりを生み出すのが街の役割です。コクヨとしても街づくりの一端を担い、新しい変化を生み出すためにお役に立てればと願っています」

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寺田航平(TERADA KOHEI)

寺田倉庫株式会社代表取締役社長。三菱商事勤務や株式会社ビットアイル設立などを経て2019年より現職。経済同友会副代表幹事、株式会社マーケットエンタープライズ、株式会社コウェル、株式会社堀木エリ子アンドアソシエイツ、GO株式会社の社外取締役を務める。

黒田英邦(KURODA HIDEKUNI)

コクヨ株式会社代表執行役社長。2001年コクヨ入社。コクヨファニチャー社長などを経て2015年にコクヨ(株)代表取締役社長に就任、2024年より現職。

富山浩樹(TOMIYAMA HIROKI)

サツドラホールディングス株式会社代表取締役社長 CEO。2007年株式会社サッポロドラッグストアーに入社。営業本部長の傍ら2013年に株式会社リージョナルマーケティングを設立し、北海道共通ポイントカード「EZOCA」の事業をスタート。株式会社出前館など多数企業で社外取締役を務める。

文/横堀夏代 写真/MANA-Biz編集部