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ポイントサービスの現在地
知っておきたいトレンドワード35:ポイントサービス
普段から何気なく「どうせ払うなら少しでもポイントが貯まる方法で」と考えるほど、ポイントは消費活動と切っても切れないものになっている。差別化が希薄化し、サービスの強化や再編の動きが激化しているポイントサービスについて解説する。
ポイントサービスとは
ポイントサービスとは、消費活動を促すことを目的に、企業などが発行するトークンのことで、商品やサービスの価格を下げずに、ポイント付与という形で、メリットを提供するものです。 1960年代から、一部の百貨店やスーパーマーケットで、独自のポイントカードやスタンプカードが導入されていましたが、1980年代に、家電量販店が値引き交渉の負担減と、顧客の囲い込みを目的に導入したのが、普及のきっかけと言われています。 1990年代には、マイレージサービスが開始されて、マイルとの連携が盛んになり、2000年代には、大手コンビニ各社がポイントを導入。各店舗やサービスそれぞれで発行する独自ポイントから、TポイントやPontaポイントなど、共通ポイントへと展開していきました。 2010年代以降、キャッシュレス決済やオンラインショッピングの普及に伴い、複数サービスをまたいで顧客の囲い込みに力を入れ、ポイント経済圏を形成する事業者も現れました。 日本は、世界有数のポイント大国と言われており、GMOメディアが行った調査では、「意識してポイントを貯めている(ポイ活)」人が88.6%おり、87.5%の人が、「ポイントが貯まるとそのサービスの利用頻度が上がる」と、回答しています。
代表的なポイント経済圏
現在の日本での代表的なポイント経済圏は以下の通りです。 ・楽天ポイント (楽天) ・PayPayポイント (ソフトバンク) ・dポイント (NTTドコモ) ・Pontaポイント (KDDI) ・WAONポイント (イオン) ・Vポイント (CCCMKホールディングス株式会社) ※三井住友フィナンシャルグループの「Vポイント」とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の「Tポイント」が統合 スマートフォンの普及と携帯電話での決済機能が結びつき、携帯電話大手各社が、ポイント経済圏の競争で存在感を高めています。グループ内の金融サービスや通信、スーパーなどの店舗やオンラインストアでの買い物、提携クレジットカードの利用などで、ポイントが貯まる仕組みになっています。 それぞれのポイントサービスの利用者数(延べ)は、それぞれ日本の総人口に匹敵する水準まで到達しており、さらなる差別化に向けて、既存ポイントサービス間の統合や連携強化の動きが激しくなっています。
ポイント導入のメリット
ポイントを導入することでの事業者にとってのメリットには、次のような点が挙げられます。
顧客の囲い込み・差別化
最も大きなメリットは、ポイントによって新規の顧客を獲得したり、ロイヤリティを高めてリピーターになってもらうための動機づけができる点です。ポイントサービスが魅力的であれば、来店動機やリピートにもつながり、選んでもらうことにつながります。 そのため、企業も、獲得ポイント数によるランク制度を導入して、ランクが上がるほどポイント還元率を高くするなど、「ここで購入すればするほど得をする」、と感じさせるための施策を行っています。
取得した顧客データを、商品開発や販売戦略に活かせる
顧客の購買履歴、来店日時や決済時間、属性、商品の組み合わせなどを分析することで、消費者行動やニーズを知ることができ、商品開発や販売戦略の立案に活かすことができます。 また、クーポンの配布、オススメ商品の提案など、顧客に直接情報発信しやすくなります。
ポイント獲得のため、顧客単価増につながる場合も
ポイントサービス事業者によっては、「5000円以上の購入でポイント10%アップ」など、購入金額によって、ポイントの還元率を変動させる場合があります。そのため、ポイントめあてのついで買いやまとめ買いなどによって、購入単価アップにつながることも。 また、利用者側のメリットとして考えられるのは、以下の通りです。 ・貯まったポイントを利用して買い物ができる ・特典や割引サービスを受けられる ・キャンペーン情報や新商品情報などを受け取れる
ポイント導入のデメリット
また、ポイント導入による事業者にとってのデメリットとしては、次のような点が挙げられます。
コストがかかる
店舗でポイントサービスを導入する際には、システム開発が必要な場合が多く、初期費用が必要になります。 共通ポイントの加盟店となる場合、ポイント還元分のコストは加盟店が負担する場合がほとんどです。また、スマホでのポイントサービスを導入する場合、サーバーやアプリ利用料も発生するため、ポイントサービス導入により利益が圧迫される可能性も。 一方ポイントサービス事業者側も、膨大なデータを安全に管理するための、さまざまなシステムの管理費や、ポイントサービスの利用者を増やすためのキャンペーン費用や広告費がかかります。
オペレーション負担増
ポイントサービスの運用に際し、特に実店舗では店側に作業負荷がかかります。ポイント付与作業に加えて、スタッフに向けて研修やマニュアル作成などの対応も必要です。 また、ポイントサービス事業者は、顧客データの情報流出を防ぐため、会員管理システムの保守・管理が必要です。さらにポイントの不正獲得や不正利用を防ぎ、条件に応じて正しくポイントを付与するためのポイント付与・管理システムや、キャンペーン管理システムなどの運用も必要となります。 また、利用者側のデメリットとして考えられるのは、以下の通りです。 ・ポイントに有効期限や利用制限がある ・ポイント目的に余計な消費をしてしまうことも ・サービスに登録することで、メールやDMなどの販促物が大量に送られてくる ・個人情報流出リスクや、意図せず第三者提供を承諾している場合も ポイントによって支払った金額の一部が還元され、得をした気分になりますが、企業側に個人情報を提供しているということは意識し、登録前に確認しておいた方がよいでしょう。
新たなポイントサービス
最近では、ポイントを貯める仕組みは、買い物だけではなくなりつつあります。例えば、アメリカ発祥の、移動距離に応じてポイントが貯まるサービスがあります。コロナ禍に、健康増進サポートサービスとして、徒歩と自転車のマイルを20倍にしたところ、一気に利用者が増加し、バスや電車などの混雑緩和、ソーシャルディスタンスの確保につながったという事例があります。 他にも、アンケートに回答した人にポイントを付与する、ゲームで遊んだらポイント付与など、「ポイ活」の手段も増えています。2024年問題(運送業界の人で不足や労働環境問題)への対策として、置き配やゆとりのある配送日を選んだ人に、ポイントを付与する実証実験を行ったり、マイナンバーカードの登録促進として、ポイント付与のキャンペーンを行うなど、促進したい行動を行った人に対するポイント付与を、政府や自治体が行うケースも増えてきています。 こうした、消費以外の行動でポイントが貯まるサービスも増えており、ポイントサービス市場は年々規模が拡大しています。それに比例して、「ポイ活」に励む人も増えており、ポイントを家族や友達にプレゼントする、寄付に使うこともできるなど、活用先も広がっています。 一方、個人情報の取り扱いが正しく行われているか、ポイントが正しく付与される会社かなどには注意が必要です。 また、20万円以上の利益が出ると確定申告が必要になるため、年間で自分がどのぐらいの利益を得たのか把握しておく必要があります。 ポイントサービスの競争が激化し、差別化されにくくなっている中、大手の連携など業界再編の動きが活発になってきています。「GAFA」台頭の背景にも膨大な顧客データがあるように、今はどれだけのデータを保有し、ビッグデータとして活用できるかが企業の強みになる時代。ポイントという顧客接点を企業がどう活かせるか、消費者としてどのような利点を得られるようになっていくのか、今後の進化が注目されています。