仕事のプロ

2025.01.22

ライフラインチャートで満足要因を知り、未来に必要なビジョンを描く

「ライフラインチャート」で見えてくるもの

これまでに起きた印象的なできごとをふり返り、その時々の満足度を曲線で表現するライフラインチャート。単なる職務経歴のふり返りではなく、満足度の上下を見ることで、自分がキャリアを築いていくうえで重視している価値観やゆずれない軸が見えてくる。キャリアを考える連載7回目では、自分を知るツールのひとつであるライフラインチャートについて、コクヨのキャリアコンサルタントの成田麻里子が解説する。

ライフラインチャートとは

ライフラインチャートとは、これまでに起こったできごととその時の自分の思いを時系列に曲線で表現したものです。横軸は時間、縦軸は満足度を表します。
期間(時間の幅)は社会人になってからとか、小学生頃までさかのぼるなど、目的に合わせて様々な方法があります。また、仕事で起こったできごとのみ抽出してもよいし、プライベートと仕事をあわせて1本で表現することもあれば、2本の曲線で表現する方法もあります。
満足度(縦軸)の基準値は主観でよく、自分にとってニュートラルな状態を基準線として、それより満足度が高かったか低かったかで決めていきます。ポジティブな捉え方をする方の場合は、すべてがプラスに位置するかもしれませんが、それでもかまいません。

具体的な書き方は、まず過去に起こった重要なできごとや印象に残っていること、転機になったできごとをピックアップし、それに対する満足度に点を書いていきます。例えば部署異動や昇進などのポジション変化、転勤、転職、資格取得、結婚、子どもの誕生などのできごとを挙げるケースが多いです。
点をつないで曲線にした後、それぞれのできごとに吹き出しをつけて、当時の感情や、なぜそう感じたのかなどを追記していきます。そのできごとの中でも細かい満足度の起伏はあったと思いますが、大きくふり返って、この時期の満足度は高かった、低かったくらいの緩やかな感覚で決めていきましょう。

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複数の方でのワークショップや研修受講時に作成することがあるかもしれません。その時に、何を書き出すか、どこまでまわりの方に開示するかは、ご自身の可能な範囲でかまいません。見られたくないこと、思い出したくないことがあれば、書く必要はありません。目的に合わせてどのできごとをピックアップするか選べばいいですし、ご自身のなかで消化しきれていないネガティブなできごとを無理やり書き出す必要もありません。




ライフラインチャートを通して
「思い出す」「なぜ」を考えることが重要

ライフラインチャートを書くことで、これまでの人生で起きたできごとを思い出していきます。この「思い出す」ことが重要なプロセスなのです。現在に至るまでにどんなできごとがあったのかを棚卸し、全体像を俯瞰して見ることで、どんな積み重ねが今の自分につながっているのか、視覚的につかむことができます。

また、曲線を眺めながら満足度の高いところも低いところも、「なぜ」そう感じたのかを深く考えることで、自分の大事にしている価値観やゆずれない軸になるもの、どんな状況だと物足りなさを感じるのかなどにも気づくことができます。

例えば、「自分はリーダーとしてチームを率いる役割を果たしている時に一番満足度が高い」、「忙しすぎて睡眠時間が削られたり、忙殺されて考える時間も取れず疲労が蓄積している時は満足度が低い」など、自分のモチベーションを左右する要因が見えてきます。




キャリアへの活かし方

ライフラインチャートを通して自分の価値観や選択の基準を知ることで、これから先どんな未来を歩んでいけば高い満足を得られそうか、そのために何ができるか、といった中長期的なキャリアビジョンを描くことにつながります。 また、ライフラインチャートを通して過去のできごとを相対的に見てみると、その時は「最悪だ、どん底だ」と感じていたことも、「今ふり返ってみると当時とは感じ方が変化している」ということに気づけるかもしれません。

例えば「育児中は仕事との両立が難しくて仕事を辞めようか悩んでいたけれど、今ふり返ればあの時に仕事のやり方を大きく変えて効率化できたことが、管理職になった今に活きている」と気づけるかもしれません。
例えば、「困難な状況にぶつかった時は大胆にやり方を変えてみる」「ひとりで抱えこまず、まわりに相談する」など、ふり返ることで気づけた困難の乗り越え方は、今後、新しいことにチャレンジする際に必ず役に立つはずです。

ライフラインチャートの最も重要な役割は、これまでにどんなできごとがあり、何に満足し、何に苦労したのか、困難な壁をどう乗り越えたのかをしっかりふり返り、未来につなげること。これまで頑張ってきた自分を認め、今後に向けて自分を鼓舞してあげる...、そんな使い方もオススメしたいです。



成田 麻里子(Narita Mariko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
コクヨ入社後、10年間にわたりオフィスデザインやワークスタイル研究、新規事業企画に携わる。現在は企業向けサービス[コクヨの研修]スキルパークにおいて、人材育成、働き方改革に関わる研修企画および講師を担当。

連載監修/河内律子(コクヨ キャリアコンサルタント)
ライター/中原絵里子