HOME > ソリューション > コクヨの社員研修「スキルパーク」 > コラム > 女性活躍推進は女性と企業のマインド変革から
働き方改革において、「女性活躍推進」は注目度の高いトピックの一つです。2016年に女性活躍推進法が施行されたことからも、女性の活躍に対する政府の本気度がうかがえます。では、なぜ女性活躍が重要視されているのでしょうか。その理由として、「労働人口が減少していくなかで、働き手として女性に活躍してもらわなければならないから」という側面も確かにあります。
しかし、真に女性の活躍が期待されているのは、多様な価値観をビジネスに取り入れるためではないでしょうか。このことは、モノやサービスに対するニーズが多様化していることと関連しています。つまり、これまではビジネスの現場で多数を占めていた男性の価値観に偏りがちでしたが、これからは、女性や外国人、高齢者などさまざまな価値観をもつ人が知恵を出し合っていくことが、日本にとって不可欠というわけです。
女性活躍推進法では、一定規模以上の企業は自社における女性活躍の現状を分析したうえで、数値目標を含む行動計画の策定や公表を行うことが義務づけられています。
では、女性活躍の現状分析はどのような指標で行われるのでしょうか。分析のための基礎項目としては、「採用者に占める女性比率」「勤続年数の男女差」「女性管理職比率」などが設定されています。なかでも女性管理職比率は、女性活躍が進んでいるかどうかの指標とされており、政府は「2020年までに指導的地位(管理職)に占める女性の割合を30%にする」という目標を公表しています。
各企業も、それぞれ数値目標を立てて女性管理職の登用に取り組んでいます。私自身も、さまざまな企業のお客様において女性活躍に向けての施策を取材させていただく機会が多く、そのたびに本気度を実感しています。
しかし日本全体で考えると、女性管理職の登用は決して進んでいるとはいえません。内閣府による「平成29年版 男女共同参画白書」によると、民間企業において平成28年度時点で部長職に占める女性の割合は6.6%、課長職で10.3%となっています。また、会社規模が大きくなるにつれて女性管理職の割合は減っていきます。
出典:「男女共同参画白書 平成29年版」より階級別役職者に占める女性の割合の推移
ではなぜ、女性管理職登用はなかなか進まないのでしょうか。よく言われる理由の一つとして、女性自身が管理職昇進を望まないことが挙げられます。コクヨが約1万人のビジネスパーソンを対象に実施した調査では、昇進を望むかどうかの質問に対して「現状のままでよい」と答えた女性が約半数を占めています。
しかし、管理職になりたくないからといって、「活躍したくない」とは限りません。「仕事の幅を拡げたいですか?」といった趣旨の質問には、32.8%の女性が「拡げたい」と答えています。私がさまざまな企業でお会いした女性を思い出してみても、多くの方が「自分を成長させたい」という気持ちを抱いていると感じました。
一方で、あるシンクタンクが公表した調査結果から は、女性の自己評価の低さがみえてきます。「私が管理職なんてとんでもない」という女性の謙虚さがマイナス要因となり、管理職登用が進んでいない事実も見えてきます。また、女性の自己評価が低くいというだけでなく、管理職に対しての理想像も高く、そのギャップが男性よりも大きく、結果、しり込みしてしまっている現状もあると感じます。
管理職登用ばかりが活躍の道ではありませんが、「現状維持」だけではなく自分らしく活躍することを女性自身も、企業も追求していくべきではないでしょうか。
女性活躍の推進に向けて、不可欠の要素が3つあると私は考えています。
最も重要なのは「女性自身が意識や行動を変えること」です。私はコクヨのオウンドメディア『WorMo'』(https://www.wormo.net/)の取材を通じて、たくさんのワーキングマザーとお会いしてきました。そこでよく感じるのは、「女性は自分の気持ちや事情を周りにあまり説明しない」ということです。
仕事に対してどんなスタンスで向き合おうとしているのか、育児や家事との両立で困っていることはないのか、細かいことでいえば「保育園のお迎えがあるからもう帰らなければいけないけれど、本当はもっと作業に打ち込みたい」といったことまで周りの人に説明し、企業も女性の事情を理解しておくことが双方にとって快適な働き方につながると思います。
多くの企業は、たとえばワーキングマザーの育休復帰に対して、時短や在宅勤務などいわゆる「女性に優しい」制度をたくさん用意しています。しかし実際にワーキングマザーの声を聞くと、「気兼ねしてしまって制度を活用しづらい」という声も少なくないのが現状です。
もちろん制度設計は大切ですが、「女性のための制度」という打ち出し方では、かえって女性が使いづらい面もあります。そこで、育児や介護に従事する女性だけでなく、管理職などにも適用範囲を拡げる工夫をされている企業もみられます。働き方改革が叫ばれている現在、女性だけでなくビジネスに関わる全ての方 がもっと生産性高く働くことが求められています。
多くの人が制度を気軽に活用しているのを見て、女性も「私も在宅勤務の制度を使って生産性を高めよう」と意識を切り替えて使うようになり、それが企業文化になっていくものです。
また、女性の部下に対して上司が意識を高めることも求められます。上司の方は、「大変だから無理しないで」ではなく、「個性を活かした活躍を期待しているよ」という姿勢が必要ではないでしょうか。
たとえは育休明けの女性は、「私は時短で働いているし、今の働き方で会社に貢献できているのか自信がない」と感じている方が多いものです。だからこそ、期待する姿勢が女性をバックアップすることにつながります。(会社に)貢献しているという実感がモチベーションを高くし、またキャリアに対する意識を生むという相乗効果が見込めます。「イクボス研修」などを活用して変革を進めようとする企業も増えています。
私の理想は、政府も企業も「女性活躍推進」と謳わなくなることです。さまざまな個性を持つ人々が集まって組織をつくり、それぞれの持ち味を活かして生産性を高めていくことで、すべての人が活躍する社会が実現するのではないでしょうか。今は「女性」が注目されていますが、真の目的は「ダイバーシティの実現」です。