テレワーク・リモートワークの必須ツール

多様な働き方を支えるコミュニケーションツール

今の日本社会は、少子高齢化による労働力不足、長時間労働と過労死の問題、国際比較における労働生産性の低さなど、さまざまな課題を抱えています。これらの課題に対し、2019年4月に「働き方改革関連法案」が施行され、企業には、労働環境の改善など具体的な施策が求められました。そして、この法案を受けて今、多くの企業では多様な働き方を可能とする環境や制度を整え始めています。

多様な働き方を実現する具体的な取り組みとして、注目を集めているのが、テレワークやABW(Activity Based Working)。テレワークやABWといったワークスタイルでは、働き方の自由度を高める一方で、対面でのコミュニケーションの機会が減ってしまうため、リモートでもオフィスと同じようにコミュニケーションがとれるよう、ツールの活用が欠かせません。現在は、さまざまなコミュニケーションツールがありますが、目的や用途に合わせて使い分けたり、自分たちの組織や文化にあったコミュニケーションツールを選ぶこと、そして、社員一人ひとりがツールを使いこなせるようになることが重要です。 このコラムでは、リモートでのコミュニケーションを支える、働き方改革には欠かせないコミュニケーションツールの選び方と使い方のヒントを紹介します。

働き方改革はコミュニケーション改革

「働き方改革関連法案」を受け、テレワークやABWといったワークスタイルを積極的に導入する企業が増えています。テレワークによって、自宅や外出先などオフィス以外の場所でも働けるようになり、ABWによって、働く場所だけでなく、働く時間帯も自由に決められるようになります。しかし、社員自身が働く時間帯や場所を自由に決められるようになると、これまでと同じやり方ではコミュニケーションが難しくなり、仕事に支障をきたすことにもなりかねません。 多様な働き方を実現させるためにも、また、仕事を効率化しながら生産性を上げていくためにも、働く場所や時間帯に左右されることなく、スムーズなコミュニケーションができる環境を整える必要があるのです。

多様な働き方を支えるコミュニケーションツール

企業や組織、働き方にあったコミュニケーションツールを導入すれば、社員同士の連携はスムーズになります。たとえば、チャットを使えばチーム内のちょっとしたやり取りはもちろんのこと、報告・連絡・相談もタイムリーでスムーズに行えます。既読通知機能を活用すれば、読み忘れなどによる情報伝達の遅れを防ぐことができるので、急ぎの依頼や迅速な判断が必要な場合などに役立ちます。また、掲示板やダッシュボードを使えば、リモートワークの社員も常に社内の状況を把握できますし、カレンダーに1日の業務予定を入力しておけば、社員一人ひとりの仕事の状況を把握することができるので、リモートでの業務管理も可能です。 リモートワークによって、社員が孤独を感じ、仕事に対するモチベーションの低下を引き起こす場合もありますが、コミュニケーションの取り方次第では、オフィスワークと同等、もしくはそれ以上にコミュニケーションの質を高めることができるため、社員一人ひとりの働きやすさにつながり、結果、社員のモチベーションを高めることにもつながるのです。

コミュニケーションツールは用途や目的にあわせて賢く使い分ける

一昔前のビジネスシーンでのコミュニケーションといえば電話やメールが主流でしたが、最近はLINEやFacebook、twitterのようなコミュニケーションツールが日常生活に浸透したことで、ビジネスシーンでもメッセンジャーやチャットの利用が進んでいます。また、インターネット通信回線の高速化やワイヤレス化が進んだことで、テキストだけでなく、高品質の画像や音声、映像も利用できるようになりました。 これらの変化や進歩により、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションツールの選択肢は以前とは比較にならないほど拡がり、利用できるコミュニケーションツールも多種多様です。 そして、それらの多種多様なコミュニケーションツールには、どれもメリットとデメリットがあるため、導入にあたってはしっかりと検討する必要があります。 たとえば、勤怠管理やスケジュール管理、ドキュメント管理などが行える「グループウェア」は総合的にビジネス上のやりとりを支援してくれるツールですが、初期費用や運用費用が高くなることも珍しくありません。企業の業務形態に合わせてカスタマイズを行うとさらに費用がかかってきます。 一方、無料で使えるチャットは、社員同士の連絡、相談を活性化させるのに効果的です。チャットは操作が簡単なだけでなく、グループにも特定の個人に向けてもメッセージを送信できるため、業務にあわせてグループを作成してメッセージを共有したり、個人的な相談をしたりと使い分けることがきます。ただし、チャットの性質上、会話感覚でのカジュアルなコミュニケーションには適していますが、相手や状況によっては、無作法と受け取られてしまい、印象を悪くする場合もあります。 相手や状況、伝えたい内容によって、適したコミュニケーションツールを賢く選んで、使い分けることが重要なのです。

コミュニケーションツール別活用バイブル

ビジネスシーンで用いられているコミュニケーションツールの種類と機能はさまざまです。似たような機能をもったツールも複数ありますが、活用シーンや目的によっては、使い勝手に大きな差が出てしまう場合もあります。ここでは、現在日本のビジネスシーンで使われている代表的なコミュニケーションツールの特徴やメリット、使いこなすコツなどを紹介していきます。

(1)メッセンジャー

メッセンジャーとは、インターネットを介して相手に簡単にメッセージを送る仕組みのことです。正式名称は「インスタント・メッセンジャー」。「Skype」や「Googleハングアウト」には基本機能としてメッセンジャーが備わっています。

<メリット①:コミュニケーションをタイムリーでスピーディーにする>

メッセンジャーの最大の特徴は、タイムリーでスピーディーなコミュニケーションを可能にすることです。メールのようなかしこまった挨拶を抜きにして、会話感覚でメッセージを送れるため、つい後回しになりがちな報告や、わざわざ聞くのも...と思ってしまう仕事上の質問なども、気づいた時や思い立った時にパパっとメッセージを送ることができます。また、操作が簡単なので、忙しい仕事の隙間時間でもメッセージを送ることができ、時短や効率化にもつながります。

さらに、プッシュ機能を使って、メッセージの着信を端末の画面上で知らせる設定にしておけば、メッセージを読み忘れる確率も低くなります。プッシュ機能を常にONにするルールを部署やチームで徹底しておけば、急なトラブルへの対応や、早急に上司の指示を仰ぎたい時などにも役立ちます。

<メリット②:スレッド×時系列表示でメッセージ管理が楽にできる>

メッセンジャーには、スレッド機能が備わっています。この機能を使えば、特定の話題やテーマ、グループごとにメッセージを分けて表示させることができます。そのため、複数のメンバーと一対一でメッセージをやり取りしたり、同時進行している複数のプロジェクトのグループメッセージをやり取りする場合でも、メッセージがごちゃ混ぜになることがありません。また、スレッドごとにメッセージは時系列で表示されるため、誰がいつ、どのようなメッセージを送ったのかが一目瞭然なので、話の流れを辿りやすいのもメリットです。また、時系列が長くなってしまっても、検索機能を使って必要な情報を探すこともできます。

<メリット③:スレッドでチームコミュニケーションが円滑になる>

チームで仕事をしたり、プロジェクトに参画していると、複数のメンバーに対して、同時に連絡や報告、情報共有をする機会がたびたびあります。そんな時に活躍するのがメッセンジャーのスレッド機能です。チームやプロジェクトごとにスレッドを作成しておけば、日々の報連相はもちろんのこと、スキルや知識をシェアしたり、メンバーから意見を募ったり、誰にしていいのかわからない質問なども、とりあえずスレッドにメッセージを投稿すれば、気づいたメンバーから返答をもらえたりと、様々な目的のコミュニケーションシーンに対応します。対面コミュニケーションでは、その場にいる人としか話題を共有できませんが、スレッド上であれば、自分が直接会話に入っていなくても、他のメンバー間の会話から状況が理解できたり、必要であれば、途中からでも会話に加わってアドバイスするなど、つねにゆる~くつながり続けることができます。会話をする感覚でメッセージが送れるので、コミュニケーションが希薄化しやすいリモートワーカーや在宅ワーカーとの報連相にも向いています。

<メリット④:スレッドは編集・削除ができる>

メッセージを送った後からでも、編集が簡単にできるのもメッセンジャーのスレッド機能のメリットです。ツールによっては、送信済みメッセージの編集・削除ができない、誤送信のリスクがあるものも多く、ビジネスシーンには向いていません。しかしスレッドには、送信済みのメッセージでも内容を自由に編集・削除できる機能が備わっているものが多くあります。

<コツ①:メンション機能でメッセージを確実に読んでもらう>

メッセンジャーのメンション機能とは、「@(ユーザー名)」というようにメッセージを送りたい相手の名前の前に@(アットマーク)を付けることで、誰に向けたメッセージなのかを一目でわかるようにする機能です。

チームのスレッド上でメッセージをやり取りする場合、参加しているメンバーが多くなればなるほど、「自分が返事しなくても、だれかが返事してくれる」という心理が働きやすく、投稿されたメッセージへのレスポンスが下がります。また、メッセージの中には、メンバー全員に共有はするけど、特定の個人から意見がほしい場合もあります。たとえば、状況をメンバー全員に共有しつつ、リーダーの判断を仰ぎたいなど。そんな時に、メンション機能を使えば、「私」に向けたメッセージであることを一目で相手に伝えることができるので、レスポンスの確立が上がります。

また、メンション機能を使って相手にプッシュ通知を送れるツールも多くあります。メッセージを送信すると相手の端末にお知らせが表示されるため、スレッドの中でメッセージが埋もれにくくなり、早急な返答が必要な時に便利です。

<コツ②:メッセージの運用ルールを決める>

メッセンジャーの特徴を最大限に活かすためにも、ルールを決めておくことが大切です。メッセンジャーの最大の特徴は、タイムリーでスピーディーなコミュニケーションですので、用途や目的に応じて下記のようなルールを決めます。

メッセンジャー運用ルール例
  • ・挨拶や前置きは省き(できるだけ短くし)、要点をコンパクトにまとめる(箇条書きなど)
  • ・メッセンジャーを一日〇回確認する(目的に応じて確認頻度は検討)
  • ・返事必須のメッセージはメンションを付ける
  • ・メンション付きメッセージには、できるだけ早く、必ず返事をする
  • ・メッセージを投稿しやすい雰囲気をつくる

メッセンジャーは、日々のちょっとした会話からアイデアや知識の共有、業務の報連相や判断を仰ぎたい場合など、さまざまなビジネスシーンで活用でき、その用途や目的によって、運用方法もさまざまですが、メッセンジャーの特徴を活かし、タイムリーでスピーディーなコミュニケーションを実現するためにも、メッセンジャーに参加しているメンバー全員に意識してほしいポイントがあります。

メッセージ受信者は、チェックを怠らず、返信を求められたら必ず迅速に返すこと。メッセージ発信者は、読みやすさとともに誰に何をしてほしいのかを明確にすること。これらを意識することで、たとえリモートワークなどで対面でのコミュニケーションが難しい場合でも、オフィスにいたときと変わらない、円滑なコミュニケーションが可能になります。

(2)ボイスチャット

ボイスチャットとは、インターネットなどを介して、音声でリアルタイムに会話できるシステムのことで、「Skype」や「Googleハングアウト」に付加機能としてついています。

ボイスチャットの機能は電話とほぼ同じですが、通信にはインターネット回線を使い、二人以上の複数人での会話、ビジネスシーンではリモートミーティングに使われることが多いツールです。こうした電話との違いから、ボイスチャットならではのマナーがあり、このマナーを守って使わないと逆に不便になりかねませんが、チーム内で決まり事やルールを設けて運用すれば、快適なコミュニケーションが実現します。

<マナー①:相手の話に割り込まない>

ボイスチャットでは、「相手の話に割り込まない」が鉄則です。発言の途中で誰かが割り込んでしまうと、音声が聞き取りづらくなったり、マイクの感度によっては、お互いの声がぶつかりあって、言葉がほとんど拾えなくなることもあります。ボイスチャットでは誰かが話し始めたら他の人は聞き役に徹し、一人ずつ順番に話すようにしましょう。また、ボイスチャットでミーティングをする際には、進行役を決め、会話をコントロールするのも、ボイスチャットでのミーティングを円滑に進めるコツです。

<マナー②:相手の発言を聞く>

ボイスチャットを使ったミーティングでは、誰もが気持ちよく発言できるよう相手への気遣いが大切です。「相手の話に割り込まない」が鉄則のボイスチャットでは、特定の個人が一方的に話し続けてしまうと、他の参加者は発言するタイミングを図れず、ストレスを感じることもあります。ボイスチャットは相手が見えないので「ミーティングをしている」「大勢と話している」という前提を忘れてしまいがちです。通常のミーティング以上に、周囲へ気を配って会話をつなげていくよう心がけましょう。また、こうした「ひとり舞台」にしないためにもミーティングの進行役を立てることも重要です。

<マナー③:意思を表明してから話し始める>

ボイスチャットを使ってミーティングをするときは、話し始める前に「話しますよ」と意思表明をしましょう。「すみません、〇〇ですが」「△△ですが、よろしいですか」など、自分の名前を名乗りながら声をかければ、他の参加者は「〇〇さんが話すんだな」と聞く体勢を整えてくれます。この声かけをせずに、いきなり本題から話しはじめてしまうと、「誰?」「何?」と、顔が見えないぶん疑問が先立ち、肝心の話しが頭に入ってこない、なんてことも起こります。また、声かけによって発言が重なってしまうのを防ぐこともできます。

<マナー④:音声が途切れてもイライラしない>

ボイスチャットの精度は通信環境に左右されるため、ミーティング中にたびたび回線が途切れることも多々あります。回線が途切れがちでは相手の発言も断片的にしか聞き取れず、会話の内容も理解できないので、自分から発言することもできずイライラする、なんてこともあります。ただ、そのイライラが声から相手に伝わってしまうとミーティングの雰囲気が悪くなります。回線の不調はよくあることで、しょうがないことだと寛容に受け入れましょう。よほどつながらないときはタイミングを変えるなどして、ストレスをためないよう工夫することも大事です。

<コツ①:重要ポイントは復唱する>

ボイスチャットでは、重要な部分を復唱するのがコツです。対面コミュニケーションでは、興味の度合いや理解度などを相手の表情や仕草などから、ある程度読み取ることができますが、音声だけのボイスチャットではそれができません。また、インターネット環境によっては雑音や音声の途切れがあり、重要なポイントを聞き逃してしまう、なんてこともよくあります。そのため、重要な情報、議論したいポイントなど、相手に確実に伝えたいことは、復唱するようにしましょう。また、「もう一度繰り返しますね」といった前置きをすることで、参加者の意識も自然と発言に集中してくれるので有効です。

議事録作成のためにも復唱は効果的です。多くの場合、議事録は書記係がリアルタイムでメモを取って後からまとめますが、復唱することで、議事録への書き漏れも防ぐことができます。

<コツ②:録音機能を議事録代わりにする>

音声での会話を複数人でできることがボイスチャットのメリットですが、メッセンジャーのように文字として会話を残こすことができません。ただ、ツールによっては録音機能が備わっているので、機能をオンにして会話をすれば、後から内容を聞き返すことができます。議事録を作成する手間も省けるので、積極的に活用したいポイントです。万が一、ボイスチャット中に聞き取れなかったことや聞き漏らしたことがあったとしても、録音を再生すれば内容を確認することができます。 録音機能がない場合は、スレッドを活用するのがオススメです。ボイスチャットは従来の対面ミーティングと違って、板書を参加者全員で見ながら会話をすることができません。誰が何を発言したかを板書によって共有することは、議題を整理したり、共通理解を図ったり、重要なポイントをリマインドするといった、ミーティングを円滑に進めるうえで重要な役割を果たしています。そこで、音声だけのボイスチャットをしながら、書記係がスレッドに書き込んでいけば、会話の内容を参加者全員で共有できるだけでなく、後々は議事録にもなるので、一石二鳥です。

(3)ビデオチャット

ビデオチャットとは、ボイスチャットにウェブカメラによる画像機能を実装したシステムのことで、インターネットを通じてお互いの映像を見ながら、リアルタイムにコミュニケーションをとることができます。テレビ電話とも呼ばれ、「Zoom」や「Skype」などがあります。

<メリット:臨場感のあるミーティングができる>

「Zoom」などのビデオチャットでは、お互いの顔を画面に映しながら会話ができ、相手の表情や反応を見ながら話せるのがメリットです。また、ミーティングなどで資料を共有する場面でも、画面に映すだけで簡単に共有できるだけでなく、画面上の資料を編集したりWordなどに板書したものを、参加者がリアルタイムで確認できるため、対面でのミーティングに近い状況をつくり出すことが可能です。

リモートワークが浸透していくと、同じチームのメンバー同士でも会う機会やコミュニケーションの機会が減ってしまい、団結力や一体感が薄れてしまうことも。そんな時に力を発揮するのがビデオチャットです。ビデオチャットなら相手の表情や仕草を確認しながら会話ができるので、上司が熱く語ればその熱量が伝わりますし、同僚がイキイキと語る姿を見て、励まされたりと、お互いの想いを共有することができます。ビデオチャットを上手く使えば、チーム全体で士気を高め、大きな目標にも向かっていけるようになるのです。

<マナー①:相手の発言を聞く>

相手の顔を見て話せるビデオチャットでは、つい対面と同じ感覚で発言してしまいがちです。ただ、対面のミーティングよりも参加者が受け取れる情報量は少ないので、気遣いを怠らないようにしましょう。たとえば、ボイスチャットと同じく、複数の参加者が同時に話しをしてしまうと、互いの声がかぶってしまい誰の発言かわからなくなったり、聞きとりづらくなったりします。

ビデオチャットでも、「相手の話に割り込まない」を鉄則に、他の参加者が話しているときは口を挟まず、質問や同意は話しが終わってからにしましょう。そして相手の発言を聞く姿勢を大切に、誰もが気持ちよく発言できる雰囲気をつくりましょう。

<マナー②:意思を表明してから話し始める>

ビデオチャットでは、相手の表情や反応を見ながら会話することができますが、対面の時ほどにはお互いのことを察知することはできません。そのため、コメントを返すタイミングや発言するタイミングを図るのは、ボイスチャット同様に難しい部分があります。ビデオチャットでも、「すみません」「よろしいですか」などと、発言する意思を表明してから話し始めることで、同時に発言してしまうことを防ぐだけでなく、他の参加者の意識が自分に向かい、より深い理解にもつながります。

<コツ①:カメラのセッティングに配慮する>

ビデオチャットでは、使用する通信機器(パソコンやタブレット)に内蔵されたカメラ、もしくは専用のwebカメラと連動させることで音声と同時に画像を配信しています。

ビデオチャットのメリットは、リモートでもお互いの顔を見ながら会話ができることなので、顔がしっかり映るようにするのがコツです。ただ、カメラの傾きによって画面全体が傾いていたり、顔に影がかかって表情が見えなかったり、自宅を見られたくないのでビデオ機能をオフにするなどなど、コミュニケーションを円滑にするという画像の役割が上手く機能していな場合もあります。

ビデオに映りたくないのでビデオチャットは苦手、という人もいますが、仕事としてビデオチャットに参加するからには、ビデオ機能をオンにするのが最低限のマナーであり、表情が見えるようにカメラの位置と角度と照明を調整するのは、相手への最低限の配慮と言えます。

<コツ②:録画を残す>

ビデオチャットには録画機能がついていることもあります。結論にいたった経緯や今後のスケジュールなどを後からでも確認できるので便利です。後々見返す必要が出そうかどうかを見極め、必要に応じて録画しておくのが安全です。ただし、記録として残ってしまうので、参加者には事情を話し、承諾してもらうのがマナーです。

<コツ③:ミーティング中に議事録も作成する>

ビデオチャットのミーティングで議事録を作成する場合も、ビデオチャットの付属機能を活用して、板書していくのがコツです。画面共有機能を使って、板書しているテキストをリアルタイムで共有したり、チャット機能を使って板書すれば、書記係だけでなく参加者全員が書き込むこともできます。後々の使い勝手を考え、議事録に使うツールを選んでください。

<コツ④:不具合が起きたらボイスチャットに切り替える>

ビデオチャットでは、通信環境によって映像が上手く映らないこともあります。画面にノイズが走ったまま中継を続けることで、発言が聞きとれない、会話が成立しない、話しに集中できないなど、ミーティングが成り立たない事態も起こりえます。原因がはっきりしている場合はその場で対応することもできますが、電波が原因であることがほとんどで、その場合は即座に解消することはできません。

ミーティングの時間は貴重ですので、トラブル対応に時間を費やすのではなく、ビデオチャットの調子が悪いときは潔く、音声だけのボイスチャットに切り替える決断も必要です。音声のみの通話であれば、問題なくつながることも少なくありません。ボイスチャットになってもおおまかな進行方法はビデオチャットと同じです。気持ちを素早く切り替え、トラブルで時間を無駄にした分、ミーティングの効率化を意識して協力し合いましょう。

(4)ファイルの共同編集

ファイルの共同編集とは、「G Suite」や「Office365」などのクラウドサービスを利用して、権限のある複数のユーザーが同じファイルを共同編集することです。共有ユーザーも編集権限もファイルごとに任意で設定できるので、必要なファイルを関係者だけに共有して共同編集することで、機密性を保ちつつ作業効率を上げることが可能です。

<メリット①:日々の記録・更新作業を効率化する>

個々人の日々の成果をチームとしてまとめて記録する際、共同編集ツールを利用すると便利です。たとえば、業務の進捗状況の記録を共同編集ツールで管理すれば、記録を一つのファイルに集約する手間を省くことができ、時短と効率化につながります。また、メンバー同士で互いの状況を確認できるだけでなく、自然と他のメンバーに「見られている」という意識も働くので、記入忘れなどが減ります。リーダーにとっては、タイムリーにメンバーの進捗状況が確認できるので、早め早めの対応が可能となります。

<メリット②:共同編集で複数の知恵を結集する>

提案資料やプレゼンテーション資料などを、同僚や上司の意見やアイデアをプラスしてブラッシュアップする際、共同編集ツールが役立ちます。対面で相談する時間が取れないときでも、相手は都合のいい時に資料を見ることができます。また、複数の人の意見を聞きたいときなどは、同じファイルを編集するので、重複することがなく、他の人のアイデアを踏まえて、新しいアイデアを出すなどの相乗効果も期待できます。

<メリット③:複数人で1つの議事録をまとめる>

ファイル共同編集ツールは効率的に議事録を仕上げるための手段として注目されています。速やかに議事録を作成するには、ミーティング中に同時進行でまとめていくのがコツです。ファイル共同編集ツールを使えば、複数人が同時に議事録に書き込みができるので、書記担当の負担は減り、議事録作成時間も大幅に短縮できます。しかも、複数人の視点が入るので内容も正確です。個人の主観に偏らない客観的な議事録が残せます。

<注意点:閲覧権限や編集権限は慎重に>

ファイル共同編集ツールのリスクとして、ファイル共有のプロセスがとても簡単で便利なため、あれもこれもとファイルを共有してしまうことが、情報漏洩につながる場合もあります。また、誰もが簡単にファイルを編集できるため、うっかりミスが改ざんにつながってしまうことも起こりえます。

このような事態を防ぐためにも、閲覧や編集の権限範囲はつねに慎重に決めることが重要です。また、ツールを使用する端末も制限し、想定外の状況で編集が行われないように工夫します。そして、共同作業期間が終了したファイルはドライブから削除し、別の場所に保存するなど、いつまでも共同作業ができる状態にしておかないことも大切です。使いやすく、誰もが操作できるツールだからこそ細かいルール設定が不可欠です。

コミュニケーションツール活用の注意点

<企業:情報漏洩には細心の注意が必要>

コミュニケーションツールを導入するにあたり、注意が必要なのは情報漏洩の危険性です。とくに、リモートワーカーや在宅ワーカーはどのような状況でツールを使用しているのか、企業側は監視できません。万が一にも、機密情報や顧客の個人情報が流出してしまえば、企業活動への影響は避けられません。また、十分な情報セキュリティ対策を実施していなかったとして世間の批判を受けることにもなります。

<企業:セキュリティ対策や使用ルールを厳密に>

コミュニケーションツールを取り入れる場合、セキュリティソフトなどの対策も同時に選定しましょう。また、使用ルールも細かく定めます。ツールに登録するユーザー、端末を限定して変則的な状況下で利用しないよう社員を教育します。さらに、社内研修を実施するのもひとつの方法です。全社員がセキュリティへの意識を高く保てば、情報漏洩をはじめとする問題の発生率を下げることができます。

<個人:周りへの配慮を忘れない>

リモートワーカーの場合、コワーキングスペースやカフェで仕事をする機会も多々あるでしょう。このとき、ビデオチャットやボイスチャットを利用するのであればマナーに注意しましょう。大きな声で話していると周囲の迷惑になるからです。また、騒がしい場所でチャットに参加すると、雑音が混じって他の参加者のストレスとなります。環境次第ではマイクをミュートし、メッセージだけで参加するなどの工夫が必要です。

<個人:うっかり情報漏洩することも>

リモートワーカーが外でコミュニケーションツールを使う際、情報漏洩のリスクも考えるべきです。「どうせ誰も気にしていない」と思い込んでいると、予想外のトラブルを招きかねません。とくに、売り上げや顧客情報についての話をするときは細心の注意が必要ですので、ビデオチャットやボイスチャットに参加するさいは、周りに人がいない場所などを選んで参加しましょう。また、身内であっても情報を漏らしていいわけではありません。家族がチャット中近くにいたら部屋を出てもらうなど、セキュリティのルールを徹底することが肝心です。

コミュニケーションツール活用のために社員を育成する

コミュニケーションツールは、日々は便利に使いやすく進化しています。ビジネスシーンや業務内容によってツールを使いわけるので、ツール導入初期の段階では、その操作方法や運用ルールを覚えきれない、わからない、と戸惑う社員も必ず出てきます。また、せっかく操作方法を覚えたのに、バージョンアップで操作方法が変わったので使えなくなった、なんてことも起こります。 多様な働き方の実現や業務効率化のためのコミュニケーションツール導入なのに、使えない、使われない、ということになっては意味がありません。企業側はただを導入するだけではなく、社員一人ひとりがコミュニケーションツール使いこなせるよう、サポートしていくことも重要なので。

このコラムのまとめ

変化の激しいこれからの時代を企業が生き抜いていくためには、働き方改革は必須と言えます。改革すべき点は企業によって異なりますが、社員にとって働きやすい環境を整えることは共通の企業課題であり、それはすなわち、多様な働き方を可能にすることにほかありません。多様な働き方を認めつつ、企業が業績を上げていくために、コミュニケーションツールの活用は不可欠であり、今の時代においては、パソコン同様に当たり前に使える基本ツールになりつつあります。

数あるコミュニケーションツールの特徴やメリット、デメリットを踏まえ、目的や用途に合わせて、適切なツールを賢く使い分ければ、業務効率化はもちろんのこと、社員同士のコミュニケーションの質を高め、業務の質向上、ひいては企業の成長にもつながっていきます。また、自然災害の多い日本にとっては、BCP(事業継続計画)の観点からも、日頃からコミュニケーションツールを使いこなせているかどうかが、非常事態時の事業継続を大きく左右します。

コスト、ツール選別、インフラ整備、社員の教育など、導入のハードルはいくつもありますが、今後の企業を継続・成長のためには、今すぐにでも検討すべき最優先事項の一つがコミュニケーションツールであることは間違いないのです。

2020.03.23
作成/コクヨ

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