オフィス空間をトリガーにして働き方を変える

働き方改革5:オフィスの役割を問い直す

テレワークが普及する今こそ
「コミュニケーションの場」としてのオフィスが求められている

働き方改革において、多くの企業では「働き手の確保」と「生産性の向上」を二大テーマとしてとらえ、解決に向けて取り組んでいます。これらのテーマを追求していくと、一つの方向性として、オフィスに縛られないテレワークなどの働き方が浮かび上がってきます。そうなると、「オフィスという場は役割を失っていくのではないか」という考え方が出てきても不思議はありません。

しかし私たちコクヨでは、働く場が社外へと拡がりつつある今の時代だからこそ、オフィスに求められるものがあると考えています。それは「コミュニケーションの場」という役割です。

オフィスという場所に社員が集まって直接コミュニケーションをとることで、リモートでは生まれないアイデアが誕生し、新しい製品やサービスにつながる可能性は大いにあります。また近年は、企業が抱える課題も複雑化しているため、課題解決には部門やグループを超えた連携が不可欠です。その意味でも、オフィスにおけるコミュニケーションが重要になってきているのです。

コミュニケーションをテーマとしたオフィスづくりを
コクヨの自社オフィスで実践

これからの時代におけるオフィスのあり方を示すため、コクヨではこれまでに何度も、「コミュニケーションのあり方を問い直すオフィス空間づくり」というテーマで自社オフィスのリニューアルを行ってきました。

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たとえば、霞が関オフィスにおいては、「縦(経営層と管理職層、現場など)のコミュニケーション」と「横(部門間)のコミュニケーション」の活性化を目指し、オフィス空間の随所に仕掛けを盛り込みました。それぞれの内容をご紹介します。
(2012年の全面リニューアルから2017年10月末までの運用事例です)

縦のコミュニケーション活性化策:
経営戦略の「見える化」

2012年頃、コクヨにおけるコミュニケーションの課題として浮き彫りになったのが、「経営戦略の社員への浸透が不十分であること」でした。近年は市場変化がめまぐるしく、事業計画をこまめに軌道修正していくことが求められます。修正した内容はタイムリーに社内全体へ伝えていくことが不可欠です。最新の経営戦略が現場に浸透していなければ、社員が方針に沿わないアクションをとってしまう場合もあり、生産性の向上につながらないからです。

そこでまずは、ブラックボックス化していた経営会議室をガラス張りに変え、会議の参加者や雰囲気を社員が感じられるようにしました。また、経営会議で決まった内容はタイムリーに大型ディスプレイに流し、社員がすぐキャッチできるようにしました。

成果は確実に現れました。霞が関オフィスのリニューアルから1年後に社内アンケートを行ったところ、66.1%の社員が「経営戦略が見えるようになった」と答えたのです。

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全面リニューアル後の2013年のWEBアンケート結果

横のコミュニケーション活性化策:
職種の行動特性に合わせて席仕様を工夫

横のコミュニケーションでは、「『報・連・相』がしづらい」という声が、営業職など社外での仕事が多い社員から挙がっていました。そこで私たちは、一定期間にわたって営業職の社員がオフィスでどんな動きをしているかを観察しました。コクヨでは法人のオフィス移転やリニューアルをお手伝いさせていただく際、働き方やオフィス空間をどのように変化させれば良いかヒントを探るために、お客様の行動観察を行っています。自社のリニューアルにおいても同じように行動観察をして、より明確な課題や解決策をあぶり出したのです。

観察の結果、社外での仕事が多い社員は、自席周辺での短いコミュニケーションに本質的な課題を抱えていることが明らかになりました。営業職の社員にとって会社にいる時間は大切な社内コミュニケーションの時間なので、他部門の社員などが頻繁に訪れます。その際、自席まわりの空間が窮屈だと、話しかけてきた相手と無理な姿勢で会話をしなければならず、快適なコミュニケーションができません。

そこで、社外での仕事が多い社員の席に工夫を加えました。コクヨでは「グループアドレス(グループごとに座る場所が決まっているフリーアドレス)」を採用していますが、営業職の社員が座る席を、4人の島型対向レイアウト(デスクを向かい合わせ、1つの島を形成するスタイル)で統一したのです。このレイアウトだと、社員は必ず角の席に座ることになります。デスクの角を効果的に使った短いコミュニケーションがしやすく、報連相も簡単にできます。アンケートでも、「報連相がしやすくなった」という声が78.3%に上りました。

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全面リニューアル後の2013年のWEBアンケート結果

あるべき働き方が決まると
具体的なオフィス空間が見えてくる

コクヨ自身のリニューアル実例からわかるように、オフィス空間は「現在の働き方にどんな課題があるか」「働き方をどのように変えれば生産性や創造性が高まるか」と考えるところから始まります。多種多様な課題の中から本質課題を導き出し、その本質課題を解決する働き方を定めることで初めて、必要となるオフィスのレイアウトや家具の仕様が見えてくるのです。

もちろん、「どのような働き方に変えていくべきか」を明確に特定することは単純作業ではありません。私たちは、「こうあるべき」という企業方針と、「こうありたい」という現場の要望をまず把握し、ギャップをあぶり出し共通認識化します。そしてこのギャップを埋めるための働き方(行動)を具体化していくのです。

働き方を再定義することによって必要なオフィス空間が決まり、オフィス空間が変わることによって働き方改革が加速します。私たちは今後も、オフィス空間づくりを通じてお客様が生産的かつ創造的に働けるよう支援を行っていきます。

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太田 裕也(Ohta Hironari)
コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント/プロジェクトディレクター。「働く場」としてのオフィス、「学ぶ場」としての教育施設、「暮らす場」としてのホテル等、多様な場のコンセプトワークや空間デザインを手掛けた。その後、「意識・行動・空間」を多面的にデザインするコンサルタントとして、数々の企業の戦略的ワークスタイルの実現を支援。2012年に全面リニューアルを行った自社「NEXT OFFICE」においては、「深輪・広縁」をコンセプトに、市場変化に対応し「違い」を生み出す、新しい働き方をデザインした。


2019.06.05
作成/コクヨ

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