HOME > ソリューション > コクヨの社員研修「スキルパーク」 > コラム > ワークスタイルの選択肢を拡げるテレワーク
働き方改革の取り組みが活発化する中で、テレワークを取り入れる企業が近年増加しています。コクヨでも、働き方改革を推進中のお客さまから「テレワーク導入を検討したい」とご相談をいただく機会が増えています。
テレワークとは「tele(離れて)」と「work(働く)」をつなぎ合わせた造語で、自社のオフィスではない場所で働くワークスタイルを指します。テレワークが注目されているのは、「生産性の向上」と「労働力の確保」という働き方改革の二大テーマを達成する手段として有効だと考えられるからです。
働く場所をオフィスの外に拡げることによって、ワークスタイルは変わります。たとえば営業職の社員は、商談前後にわざわざオフィスに行かなくても仕事ができるので、時間や労力を効率的に使うことができます。個人が効率的に働くことによって、企業の生産性も上がります。
また、働く意欲はあっても育児や介護などで出社が難しい社員も、在宅や郊外型のサテライトオフィスで仕事をすることが認められれば、離職せずに働き続けることができます。企業にとっても、貴重な人材の確保につながるわけです。
コクヨでも、2000年代前半からテレワークを導入しています。この数年は、コクヨにフィットするテレワークのスタイルを検証する目的から、育児・介護に従事する社員以外にも在宅勤務が認められるようになってきています。
モバイルワークで働く社員も多く、私自身も、15年ほど前から外出先でのテレワークを実践してきました。近年は通信環境が整ってきたうえ、ICTツールの充実ぶりも著しく、快適なテレワークが実現しつつあると感じています。
ただし、テレワークで働く社員が増えるにつれて、デメリットも生じています。社員同士が顔を合わせる機会が限られるため、ちょっとした思いつきや気づきを対面で共有する機会が減ってしまったのです。
変化のスピードが速いこの時代に、常に新しいモノやサービスを生み出していくには、社員同士がアイデアを出し合う「共創」が重要です。テレワークによるインフォーマルなコミュニケーションの不足は、企業にとって大きな損失となります。
モバイルワーク歴が長い社員は、SNSやskypeのようなインターネット電話サービスを利用してコミュニケーションをとっていますが、ICTツールをうまく活用できない社員も少なくありません。コミュニケーション不足を解消するためには、ICTを上手に活用しつつ、定期的にオフィスに集まり対面でのミーティングの機会を設けることも重要です。
テレワークに関心を寄せる企業は多いものの、2018年8月に総務省が発表した『平成30年版情報通信白書』によれば、企業におけるテレワーク普及率は13.9%にとどまっています。テレワーク導入に際しては、「部下と直接顔を合わせていないと管理ができないのではないか」というマネージャー側からの不安がよく挙がります。それ以外にも、以下のような問題が考えられます。
問題1:勤務中の怪我や事故が起こったときの対応
テレワークにおいては、自宅や外出先で怪我や事故に遭遇する可能性があります。オフィス以外の場所で社員が働くにあたって、何かあった場合の企業側の責任を線引きすることが、難しい場合があります。そのため考えられるリスクを想定した社内ルール制定や労災制度の正しい理解など、環境整備と運用が求められることもあります。
問題2:情報漏洩のリスクがある
社外で仕事をするとなると、社内に比べて情報漏洩リスクは高まります。テレワークだからといってセキュリティの品質が下がることのないよう、インフラを整えておくことが必要です。
問題3:社員の業績評価が難しい
営業職であれば売り上げなどの評価指標が明確ですが、企画・マーケティング職などは成果が見えにくく、どのような基準で評価を行うかが難しいケースもあります。場合によっては、評価のしくみを再考することも必要になります。
テレワーク導入によるリスクを完全に排除することは、非常に難しいでしょう。「絶対に事故が起こらない」ということはあり得ないからです。テレワークのメリットが大きいと考えるなら、リスクを低減させる施策をしっかりとおこない、まずはあれこれトライアルをしながら導入した際の感触を探ってみてはいかがでしょうか。
たとえば、ある企業では、部長や課長などの管理職からテレワークを試すことによって、働く場所が離れていても、部下をマネジメントできるかを検証しています。また私はお客さまに、社内の会議室に課長を除いたチームメンバーが集まって1日仕事をする「仮想テレワーク」や、一部のセクションだけで実施する「ミニマムテレワーク」を実施する方法をオススメしています。
テレワーク導入のメリットはたくさんありますが、一つお伝えしたいのは、「テレワークを取り入れない選択肢もある」ということです。たとえば、社内の施設で毎日実験を行っている研究職の社員にテレワークを適用したらどうなるでしょうか。その社員は実験ができなくなるわけですから、当然ながら企業としての生産性向上にはつながりません。社員からも、「在宅では仕事ができなくて困る」と不満の声が上がるでしょう。
テレワークは、ハイパフォーマンスを発揮するための選択肢の一つに過ぎません。同じ職種の社員であっても、働き方のスタイルによってテレワークがフィットする人とそうでない人がいます。生産性を上げるための一手段としてテレワークのメリットとデメリットを理解したうえで、導入するかどうかの判断が必要になるのです。