「目的に応じた働き方」をかなえるフリーアドレス

働き方改革7:ポジティブな意識が運用成功のカギに

働き方改革促進の手段として
フリーアドレスの導入が増加

近年、働き方改革を推進する施策の一つとして、社員がオフィスで固定席を持たずに働くフリーアドレスを導入する企業が増えています。コクヨ独自の調査によると、企業におけるフリーアドレスの導入率は2008年には約16%でしたが、2017年には30%を上回りました。コクヨでも、1990年代後半にはフリーアドレスを実施し、さまざまなトライアルを通じて導入支援のためのノウハウを培ってきました。

では、なぜフリーアドレスが働き方改革の促進につながると考えられているのでしょうか。それは、フリーアドレス導入によって得られるメリットと関連があります。

フリーアドレスのメリット1:
オフィス空間を有効活用できる

コクヨでは、フリーアドレスのメリットが大きく分けて3つあると考えています。1つは「オフィスのスペースを効率的に使えること」です。

フリーアドレスを導入する際には、在席率に合わせて席数を決めるため、全社員分の席を用意することはほとんどありません。すると、当然ながら席数は減ることになり、オフィスのスペースに余裕が生まれます。必要ならそこにコミュニケーションスペースなどを設けるなど、限られたスペースを有効活用できるわけです。

ただし、フリーアドレスだからといって「全員がオフィスに顔をそろえることは100パーセントない」と考えるのは早計です。たとえば全社員数のうち8割の席数しか用意しないなら、「全員が出社したときは、残り2割の社員はコミュニケーションスペースで仕事をする」といったシミュレーションをしておく必要はあります。

フリーアドレスのメリット2:
部門やグループを超えたコミュニケーションが活発化しやすい

フリーアドレスでは一人ひとりが決まった席を持たないわけですから、同じ部門やグループごとに集まって座る必要がありません。近くに座るメンバーが毎日異なる顔ぶれということもあり、ちょっとした情報交換や相談をするにしても、新たな視点やアイデアを得やすくなります。

また近年は、市場における課題が複雑化している背景から、多くの企業で部門横断型のプロジェクトが増えています。その際に、フリーアドレスならプロジェクトに携わるメンバー同士で集まりやすく、わざわざ会議室を予約しなくてもすぐにミーティングができます。

コクヨでは企業のフリーアドレス導入に対して支援を行っていますが、実際に導入されたお客様からは、「今まで話す機会がなかった人と接点を持つことができた」「部門を超えてプロジェクトメンバー同士で集まりやすくなった」という感激の声をよくいただきます。

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フリーアドレスのメリット3:
社員一人ひとりが主体的に行動するようになる

1日のなかでも、資料作成に集中したり息抜きをしたり、ミーティングをしたりと、仕事のスケジュールや気分によってワーカーはさまざまな働き方をしています。その際、社員が固定席を持たないフリーアドレスのもとでは、仕事の内容やコンディションにあわせて最適な場所を選ぶことができます。

逆にいえば、一人ひとりが「この仕事はどこで行うのがベストなのか」を考えて働く場所をチョイスすることが求められます。たとえば、「この2時間で集中して企画書を書きたいからブース席で仕事をしよう」「チームメンバーとこまめに打ち合わせをしたいから、近い席を確保しておこう」といった具合です。

働く場所を選ぶことは、主体的に考えて行動する習慣につながります。固定席だと思考も行動も限られがちですが、フリーアドレスの環境は一人ひとりの自律を促します。

フリーアドレスの課題は
「部下のマネジメント」や「固定席化」

このように、フリーアドレス導入によって多くのメリットが期待できるのは事実です。しかし、最大限の効果を得るには、利用側の意識変革も求められます。たとえば多くの企業では、導入直後に管理職の社員から「部下が近くにいないため、マネジメントが難しい」という声が上がります。自由に席を選べるのがフリーアドレスの特徴であるにも関わらず、上司が部下に「自分の近くで仕事をしてほしい」と求めるケースもみられます。

また、フリーアドレス導入に際して、「自分の席がなくなってしまう」といったネガティブなとらえ方をする社員が一定数います。また実施後も、いつも同じ席に座る社員や、席に荷物を置いたまま退社する社員がいて、その席が「固定席化」してしまう現象がよく起こります。

利用者側が意識を切り替え
ポジティブに活用することが大切

これらの問題はすべて、利用者側の意識が固定席時代のままであることによって起こります。

確かに、業務内容によってはこまめな報連相が欠かせないセクションはあります。その場合は、「誰がどこに座ってもよい」というスタイルではなく、チームやグループでエリアを決め、その範囲内で自由に席を選べる「グループアドレス」や「チームアドレス」という形態を採用することも必要でしょう。

しかし基本的には、「席は決まっているもの」「フリーアドレスだと自分の席がなくて困る」という無意識の思い込みを捨て、「席を共有する」「気分や仕事の内容に応じて働く場所を選べる」というポジティブな思考に切り替えることが必要だといえます。そして、「席を移動するときは私物を残さない」「前日とは違う席に座る」といった最低限の運用ルールを決めておくことで、無理なくフリーアドレスに慣れていけるはずです。

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フリーアドレスがすべての組織・企業に
フィットするとは限らない

フリーアドレスを採用しようとする企業は増えていますが、どの組織・企業にもフィットするとは限りません。たとえば、社員の在席率が高い場合は、あえてフリーアドレスを導入する必要はないかもしれません。ただし、在席率が高くても「部門間のコミュニケーションを活性化し、イノベーションを起こしたい」といった明確な目的があってフリーアドレスを導入するケースもあります。

フリーアドレスは、「導入すれば何もかも変わる」といった万能薬ではありません。コクヨでは、「フリーアドレスによって何を変えようとしているのか」というお客様の要望をお聞きしたうえで、お客様にとって最適なスタイルをご提案していきます。




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太田 裕也 (Ohta Hironari)
コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント/プロジェクトディレクター。「働く場」としてのオフィス、「学ぶ場」としての教育施設、「暮らす場」としてのホテル等、多様な場のコンセプトワークや空間デザインを手掛けた。その後、「意識・行動・空間」を多面的にデザインするコンサルタントとして、数々の企業の戦略的ワークスタイルの実現を支援。2012年に全面リニューアルを行った自社「NEXT OFFICE」においては、「深輪・広縁」をコンセプトに、市場変化に対応し「違い」を生み出す、新しい働き方をデザインした。


2019.08.06
作成/コクヨ

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