リサーチ
2016.04.25
子育て先進国スウェーデン。出生率回復のカギは父親の育児参加?
育児時間の捻出がワークスタイルを見直すきっかけになる
父親の家事育児時間~日本は1日1時間、
スウェーデンは3.5時間
イクメンという言葉もすっかり定着し、入学式や卒業式に両親で参加する姿が普通になってきている様子を見ると、日本の父親も子育てに積極的に参加するようになってきているな、と思う方も多いと思います。内閣府のデータによると、6歳未満の子どもを持つ父親が1日に行う家事時間は1時間7分、そのうち育児時間は39分となっています。これは子どもとゆっくり関われる土日を含めた1週間の平均値なので、仕事に忙しい平日はもっと少ないでしょうから、日本の母親の負担は、まだかなり多そうですね。
諸外国をみてみると、子育て先進国といわれるスウェーデンの父親は、家事に3時間21分、うち育児に59分を費やしています。日本と比べると、1日平均2時間半も多く家事育児を行っていることになります。
スウェーデンの父親がこんなに多くの時間を家事育児に費やすことができる理由は、国の政策と積極的な利用にもありそうです。スウェーデンでは、両親の育児休業制度や所得制限のない児童手当など保障が充実しており、男女とも子育てをしやすい環境が日本と比べて整っています。そのおかげもあってか、スウェーデンでは、1.5人まで割り込んだ合計特殊出生率(ひとりの女性が生涯に出産する子の数)が2013年には1.9人まで回復しています。日本は現在1.4人で、政府は、保育園の定員を50万人増やすことで2017年末までに待機児童ゼロを達成する計画などを打ち出していますが、いまのままだと、難しいかもしれませんね。
父親の仕事時間を2.5時間減らして
出生率を1.4から1.8にあげる?
たとえば、日本のおとうさんもスウェーデン並みの家事育児時間を確保できたとしたら、どうでしょう? もちろんそれだけで出生率がすぐにあがるわけではありませんが、家事育児をとりまく女性の環境は大きく変わっていくかもしれません。
1日にあと2時間半の時間をつくりだす。一見難しそうですが、例えば、モバイルワークを取り入れ在宅で仕事をすることで、往復2時間かかる通勤時間をそのまま育児時間に充てることができます。また、つい長引いてしまう会議を、定刻で終了できるよう進行やプレゼン資料のまとめ方に工夫をするなど、組織全体で働き方やいつもの仕事の仕方を考え、変えていくことで、時間を捻出していくことはまだできそうですね。
【出典】出生率/厚生労働省「人口動態統計」・GLOBAL NOTE(世銀統計)、
男性の家事育児時間 / 内閣府「男女共同参画白書」
樋口 美由紀(Higuchi Miyuki)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/THE CAMPUSオフィスカイゼン委員会ファシリテーター
総合商社、教育企業において顧客向けサービス事業に従事後、コクヨ入社。経験を活かし「人に寄り添い成長を支援する事業」として幼児教育事業を新規に立ち上げ、教育プログラム開発や人材育成、顧客対応などに携わる。その後「ダイバーシティ」「ウェルビーイング」をテーマに、人生100年時代の企業とワーカーのよりよいあり方をリサーチ。現在、2021年2月に品川に新しくオープンしたコクヨのニューオフィス「THE CAMPUS」にてオフィスカイゼン委員会ファシリテーターとして、オフィスカイゼン活動にも携わっている。