ロジカルシンキング
2016.05.30
「それでホント大丈夫?」と言われないために
ロジカルシンキング5:結論は相手が聞きたい理由で支える
自分が言いたい理由は
相手が聞きたい理由とは限らない
ある家電メーカーの若手社員が、新商品に使う液晶パネルの外部調達について上司に報告しました。
「(結論)A社の液晶パネルが良いと考えています」
「(理由1)液晶画面はダントツにキレイです」
「(理由2)耐久テストの結果を見ても他社より優れています」
「(理由3)消費電力もわが社の要求を満たしています」
開発者である若手社員は自分のアタマにあること、つまり商品の性能面ばかりを並べて「A社の液晶パネルを使いたい」と、結論づけようとしています。でも上司はどう考えるでしょうか?
「性能面が良いのはわかるけど、ほかの条件などは大丈夫なのかい?」
上司は新商品の発売を実現するために、コストや納期なども気にしているので、この若手社員の報告だけでは不十分です。こんなことにならないためのスキルが前回の『あなたの話、ヌケてます! モレてます!』で説明した、「ミーシー」、つまり「ダブリ」も「ヌケモレ」もない状態で考えるという概念です。
「(結論)A社の液晶パネルが良いと考えています」
「(理由1)液晶の性能は、画面・耐久性・消費電力などで優れています」
「(理由2)仕入価格はわれわれの提示した価格で対応してくれます」
「(理由3)納期については発注後3日で届けてくれるので大丈夫です」
「(理由4)会社の信頼性と工場・財務状況も確認し、OKです」
ミーシーの概念を使って、このように相手が納得する「ダブリ」「ヌケモレ」のない理由を考えることが大切です。
聞き手が求める理由を
ヌケモレなくしよう
相手の興味がありそうな理由を選ぶためにはどうすればよいのでしょうか?そのためにはまず、考えられる理由の候補をできるだけ拾い出します。
たとえば、B 社のパソコンを勧める場合
ステップ1:考えられる理由の候補を拾い出す(機能は?・デザインは?・サービスは?・軽さは?・保障は?・価格は?...)
そして拾い出した理由の候補から、聞き手の思考パターンをイメージして、相手が聞きたいことを考えます。優先順位をつけて絞り、聞き手が納得するのに必要十分な理由を選びます。
ステップ2:相手が納得し、興味のある理由を絞り込む(結論: B社のパソコンが良い! 理由:機能が優れ、価格が手頃、デザイン性が高い)
これを文章にすると・・・
「(結論)B社のパソコンが良いと考えています」
なぜなら
「(理由1)私たちが日頃の業務をするための機能はすべて揃っています」
「(理由2)予算内の価格で、他社のパソコンと比べても価格差はありません」
「(理由3)空間の雰囲気にぴったり合う、デザイン性の高いパソコンです」
限られた時間ですべての理由を話すことはできません。聞き手も納得するのに必要最低限の理由だけを聞きたいはずです。そのための「理由の候補の拾い出し」と「相手が納得する理由の絞り込み」をしましょう。
相手視点のミーシーを意識することで、せっかく考えて話したのにヌケモレを指摘されたり、同意してもらえなくて困ったりすることは、かなり少なくなるはずですのでぜひ挑戦してみてください。
下地 寛也(Shimoji Kanya)
コクヨ㈱入社後、行動と環境(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する研究・分析を担当。2003年より、クライアントの企業変革のコンサルティングや研修コンテンツ企画を担当する。著書『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)、『コクヨの1分間プレゼンテーション』(中経出版)、『コクヨの5ステップ ロジカルシンキング』(中経出版)、『コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術』(中経出版)、『コクヨのコミュニケーション仕事術』(総合法令出版)