組織の力

2016.06.23

チャレンジ精神を忘れない、サイバー流の人材育成とは?〈後編〉

トライ&エラーを高速回転させる社風

強い企業文化を持ち、チームで大きな成果を出し続けるサイバーエージェント。前編では、その社風を生み出す核となる人材育成のこと、採用に関することを伺いました。後編では、次々と新しい事業を生み出し、なおかつ「挑戦した敗者にセカンドチャンスを」というミッションステートメントを持ち、トライ&エラーできる環境作り、組織の制度などについて、社長室室長の胆畑匡志さんに伺った。

スキルよりマインド
を育む研修制度

「新卒入社ですぐに社長になった人もいます。それぐらいフラットなので、新入社員だからといって、言われたことだけをやっていれば良いわけではないのも事実です。たとえば、研修では、自分たちで考え、動き、アウトプットするグループワークを行いました。そして、それには評価がつく。すでに競争が始まっているんです」
 
新人研修でも、いわゆるマナー研修などが中心ではないようだ。それよりも、社会人のスイッチを入れること、すでに競争が始まっている意識を持ってもらうことに注力したオリジナルの新人研修になっている。
「チャンスはたくさんあるから、そのチャンスを取りに行くマインドが必要なんですね。仕事を覚えるまでは……じゃなくて、入社したらすぐに始まっている。そのマインドセットが最も重要です」
 
また、昨年スタートした30歳以上対象の次世代リーダー研修『CA36』も、選ばれた人たちが、役員からお題を与えられ、プレゼンテーションするといった、他にはない研修になっている。
「去年は1年で36名、今年は半年で18名を選出したのですが、とにかく優秀な人材が埋もれない仕組みも必要なんですね。優秀な人が役員に名前を覚えてもらって、全員の役員と接点をもつことを意識的にやっています。普段聴くことのない、事業に対する役員の思を知ることができ “ここの角度から考えた?”とか“ここはどうなっているんだっけ?”といった、細かいフィードバックももらえるため、参加者にとっては、大きな学びの場になっています」
 
 
 

これからの社会で
求められる人材とは?

新しい事業を創りながら、その事業を創る過程の中で人材を育成していく。採用チームで採用活動をしながら、採用担当の育成にもなっていく。話を聞いていると、常に一石二鳥以上のプランがあり、ありきたりなものになりがちな組織の仕組みにアイデアが組み込まれている。そして、すべてのネーミングがわかりやすく、面白そう!と思わせてくれる。
 
「社員が覚えてくれないネーミングだと浸透しない。社員が『あした会議」の件、連絡来ていたねって、すぐに思い出せるネーミングじゃないと。そういう努力はものすごくしています」
遊び心のあるネーミングは、ただ面白さを狙ったのではなく、社員の心と行動を促す努力なのだ。最後にそんな胆畑さんに、「これからの社会で必要とされる人材とは? 」と伺ってみると「全力廻り道」という言葉が返ってきた。
 
「マーケットのスピードはどんどん速くなっています。何年後にどうなっているのかわかりません。だから、変化を楽しみ、対応できる人。今年、藤田が新卒に送ったメッセージが「全力廻り道」という言葉なんですね。ブログでも書いていたので、全社に伝えたいんだと思うんですが、僕もこの言葉は身にしみました。効率とか生産性を求めがちですが、変化が多い時代には、全力で廻り道ができる人材が必要だと。エラーしても、またチャレンジして、トライ&エラーを繰り返しながら、一気に突破する力が求められるんだと思います」
 
文/坂本真理 撮影/ヤマグチイッキ