組織の力

2016.07.26

今を生き抜く"強い組織"を目指す〈前編〉

『スーパー戦隊シリーズ』から読み解く時代の変化

予測不可能な時代を生き抜く “強い組織” とは? いま、企業人に何が求められているのか? そんな問いからスタートした3回連載企画。前編では、“強いチーム” の代表であるスーパー戦隊にヒントを得ようと、『スーパー戦隊シリーズ』の初代プロデューサーを務め、40年以上にわたりスーパー戦隊と共に歩んできた東映株式会社テレビ事業部門エグゼクティブ・プロデューサー 顧問の鈴木武幸さんのもとを訪れた。そして、時代による組織のリーダー像やチーム編成の変化を探るべく、各スーパー戦隊がいかに世相を反映してきたのかについて伺った。

女性の社会進出を反映し、
大きくなる女性メンバーの存在感

女性メンバーの位置づけにも、この40年間で大きな変化があった。初代『秘密戦隊ゴレンジャー』から女性メンバー(モモレンジャー)はいたが、当初は存在感が薄かったという。
「初期は、女性メンバーはおまけ的な存在でした。可愛ければいいという感じで、役割やキャラ設定もあまり考えていませんでした。女性メンバーが主役になるストーリーもほとんどなく、女性は陰ながら男性を支える、という社会の風潮がそのまま反映されていたと思います」
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鈴木顧問の机の周りには、子どもたち憧れのヒーローがいっぱい。

しかし、1980年代に入り、女性の社会進出を推進する動きが出てくると、鈴木顧問はいち早くスーパー戦隊シリーズに取り入れた。1984年に放映された『超電子バイオマン』では、女性メンバーを2名にしたのだ。これは、折しも「男女雇用均等法」が制定される前年のこと。まさに、時代を半歩先取りした挑戦だった。
「ちょうどこの頃に、視聴者から『レッド(リーダー)のピンチをピンク(女性)に救わせて!』という手紙が届いたのが、とても印象に残っています。女性が積極的に前に出て活躍する時代が来るなと感じました。そこで、女性メンバーを2名にしたのですが、スポンサーをはじめ周囲からは女性は2人もいらないと、大反対を食らいました。しかし、結果的には、それまで脇役だった女性メンバーの存在感が大きくなり、ストーリーにも深みが出て大変好評でした。これなら女性5名でもいいのでは、という意見まで出たほどです」
『超電子バイオマン』をきっかけに女の子のファンも増え、以降のシリーズ作品では女性メンバーが大きな活躍を見せるようになった。『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年放映)をはじめ女性メンバーが複数登場するシリーズもあり、現在放映中の『動物戦隊ジュウオウジャー』でも、ジュウオウシャーク(青)とジュウオウタイガー(白)が女性という設定だ。

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『スーパー戦隊シリーズ』40作目となる現在放送中の動物戦隊ジュウオウジャー』。地球を襲う宇宙の無法者集団「デスガリアン」に人間とジューマン(異世界ジューランドの住人)がジュウオウジャー(イーグル、シャーク、ライオン、エレファント、タイガー)となり、立ち向かう。

『スーパー戦隊シリーズ』にも見て取れるリーダー像やチーム編成の時代による変化を踏まえたうえで、中編・後編では、組織やリーダーの在り方の変化や今後求められる姿について、学術的観点から探っていく。
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鈴木 武幸(Suzuki Takeyuki)

東映株式会社テレビ事業部門エクゼクティブ・プロデューサー 顧問。1968年東映に入社。テレビ部にてプロデューサーを務める。ドラマからアニメ、特撮作品までプロデュース作品は多岐にわたる。なかでも『スーパー戦隊シリーズ』には立ち上げから携わり、同シリーズを長期ヒット作品へと育て上げた。その後、テレビ部の総責任者を経て、常務取締役、専務取締役などを務め、2016年6月には取締役を退任し、顧問に就任。現場を離れた現在も、東映作品を見守り続けている。

文/笹原風花、撮影/曳野若菜