組織の力
2016.07.04
「働きがいのある会社」調査から見える、成長企業の法則〈後編〉
「働きがい」の根底にあるものは?
世界49か国で行われている「働きがいのある会社」調査からは、企業が変化の大きい社会を生き抜くためのヒントが見えてくる。日本でこの調査を手がける機関Great Place to Work®Institute Japanの今野敦子シニアコンサルタントに、「働きがいのベースにあるものは何か」「どうすれば働きがいのある職場が実現するか」「職場の働きがいは企業の成長とどう関わってくるのか」などをお聞きした。
信頼関係の源は
「期待を超えた行動」のやりとり
信頼が根底にある職場をつくるうえで重要な要素はいろいろあるが、今野氏は「なかでもキーになるのはリーダーの行動」と語る。
「経営側が働きがいのある会社をつくろうと決断し、『信頼』をベースにさまざまな制度をつくることは大前提です。しかし、それだけでは、職場の雰囲気は変わりません。チームをまとめるリーダーが業務管理だけでなく職場づくりも担い、メンバー1人ひとりと信頼関係を築くことによって、職場の雰囲気が変わり、組織全体に連帯感が生まれるきっかけになると考えられます」
GPTWでは、信頼関係を築くための手法を「Giftwork®」と呼んでいる。この言葉の意味を、今野氏は次のように説明する。
「Giftwork®とは、従業員と経営・管理層がお互いに、期待を上回るものを提供し合うような交流を指します。この繰り返しによってリーダーと部下との間に信頼関係が育ちます」
では、具体的にリーダーはどんな行動をとればGiftwork®の実践につながるのだろうか。GPTWが複数企業の従業員に向けて、「これまで上司にしてもらったことで、印象に残っているできごとは?」と質問を投げかけたところ、「転職の際、配属予定先の上司から『入社を心待ちにしています』と直筆の手紙を受け取った」、「若手社員時代にやりたかったプロジェクトを任せてもらい、『思いきりやりなさい、責任はとるから』と言ってもらえた」などの回答が寄せられた。
これらの事例からわかる通り、リーダーが部下に対して期待を超える行動を起こすことが、Giftwork®の第一歩といえそうだ。期待を超えるやりとりがリーダーと部下との間でひんぱんに行われるようになれば、「働きがいのある会社」が実現する可能性は高い。
さて、2016年2月に発表された「日本における働きがいのある会社」ランキングを眺めると、ある特徴に気づく。職種はさまざまだが、上位にランクインしている企業はいずれも次々とイノベーションを起こし、成長を続けているのだ。今野氏は、成長や変革の原動力になるのが「働きがい」だと語る。
「ランキング上位企業に共通するのは、ダイバーシティのある職場づくりです。さまざまな人がいれば、社会がめまぐるしく変化しても、多様な顧客の立場にたって求めるものをいち早くキャッチし、ニーズに合う商品やサービスを提供できます。多様な人材が社内で活躍し続けるためには、従業員一人ひとりの労働環境やワークスタイルなどを常に見直し、『働きがい』を高める取り組みを行っていくべきだと思います。その努力を続けることで、企業は顧客からも従業員からも選ばれ続けるのではないでしょうか」