コミュニケーション
2016.07.19
上司への報告は「事実」と「意見」を分けて伝える
コミュニケーション5:曖昧な表現の多用は要注意
「事実」と「意見」を
セットで伝える
皆さんは、上司にトラブルの報告をするときに、「お前の意見はいいから、事実だけを伝えてくれ」と言われたことはないでしょうか。ところが別の機会に、事実だけを伝えると「事実はわかったが、お前には意見はないのか」と突っ込まれたりします。
なかなかやっかいな問題ですが、このケース、どうすればいいでしょうか。
通常、報告の内容には「事実」と「意見(もしくは推測)」の2つが含まれています。この「事実」と「意見」がゴチャゴチャになってしまうと、何を報告したいのかがわかり難くなり、また、「事実」か「意見」のどちらかしかなければ、相手は不十分と感じてしまいます。相手に報告する際には、この2つを明確に分け、まずは過去に起きた「事実」を客観的かつ冷静に伝えます。そして上司に「事実」を理解してもらった上で、これからの未来の「意見(もしくは推測)」を提示する必要があります。
過去に起きた「事実」は
断定的で具体的に伝えるのが基本
上司やクライアントに報告する際、「~のようです・らしいです」「~と思われます」という伝聞・推測の表現を使うクセがついている人をみることがあります。誰でも、自分が見ていない状況や、思わしくない状況を伝えるときには、曖昧な表現になりがちです。「~のようです・らしいです」といった語尾が曖昧なケースに加え、「ちょっと遅れそうです」「あまり良くない状況です」と頻度や精度が曖昧なケースもありますが、これでは現状がよくわかりません。
事実、つまり過去に起こったことについては、断定するのが基本です。「~でした」「~が起きました」とはっきりと言い切りましょう。もし自分が実際に見ていないのであれば、「鈴木さんの報告によると、・・・という状況です」とします。また、頻度や精度はできるだけ具体化、数値化しましょう。「少なくとも3日は遅れます」「Aの部品とBの部品に不具合がありました」と事実はできるだけ具体的に伝えるのが鉄則です。
「大丈夫」、といった根拠のない
「意見」は不信感につながる
ここまで報告をして、上司が状況を理解したら、次にこれからの対応策について話すことになります。未来について事実ありませんので、そこから先はもちろん意見を言うことになるわけです。「~というトラブルが起こりました。現状報告はここまでですが、よろしいでしょうか。では、その対処策についての私の意見ですが・・・」と言って、過去と未来を切り分ける意識で話すよう心がけましょう。
注意してほしいのが、「大丈夫だと思います」というような根拠のない表現を多用しないことです。「大丈夫」を使う場合でも、「既に、別の職人を現場に3人向かわしているので、大丈夫だと思います」と具体的な理由を提示しましょう。根拠のない「大丈夫」は、相手の不信感や不安にもつながります。
なお、トラブルなどの伝えにくい内容は、ついメールで済ませがちです。コミュニケーションツールとして便利なメールですが、つい感情的になりがちですし、ニュアンスも伝わりにくいものです。言いにくいことこそきちんと口頭で、事実と意見を区分して伝えるよう心がけたいものです。
下地 寛也(Shimoji Kanya)
コクヨ㈱入社後、行動と環境(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する研究・分析を担当。2003年より、クライアントの企業変革のコンサルティングや研修コンテンツ企画を担当する。著書『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)、『コクヨの1分間プレゼンテーション』(中経出版)、『コクヨの5ステップ ロジカルシンキング』(中経出版)、『コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術』(中経出版)、『コクヨのコミュニケーション仕事術』(総合法令出版)