リサーチ
2016.09.26
男女で違う! 英語学習"地の頭"の使い方
新しい学習方法の開発につながるか?
英語を学習する時、男女の脳活動に違いがあることがわかった。さらに研究が進めば、よりスムーズに英語を習得するためのヒントを得られるかもしれない。
英語を学ぶ際、男女は無意識のうちに、互いに異なる方法で学んでいるらしい――2015年8月、首都大学東京大学院の「言語の脳遺伝学研究センター」の研究グループが注目すべき調査報告を行った。
外国語の習得においては「声に出す」復唱は重要な行為で、復唱の正確さと学習における語彙獲得能力との間には関係があると言われている。今回、6歳~10歳の小学生男女484人を対象に、単語を復唱する時の脳活動を調べ、復唱時に脳のどの領域が活動しているかについて、光トポグラフィ(近赤外光を使って、脳の活動を “見える化”する技術)を用いて調べた。すると学習が進んで習熟度が向上するにつれて男女間で脳活動に顕著な違いがあることが明らかになったのだ。男女で違いが見られたのは、脳のなかでも音韻処理に深く関わると考えられている頭頂葉の「角回・縁上回」と呼ばれる部分だ。
男子は英語を復唱する時、この「角回・縁上回」をはじめ、言語に関わる広い脳領域を活動させていることが明らかになった。これに対して、女子では「角回・縁上回」の部分の脳活動はほとんど見られず、言語に関わる脳領域の限られた部分を使っていた。
つまり、男子は英語学習で女子と同程度のパフォーマンスを得るために、頭頂葉の領域に大きな活動を促すような負荷をかけている可能性があるという。
また、英語の学習時間に強く相関する習熟度と脳活動の関係を調べた結果、ここでも興味深い結果が出た。
習熟度が低い段階では、男女の脳活動のパターンや大きさに顕著な違いは見られなかった。しかし、男子では習熟度の向上につれて、言語に関わる広い脳領域の活動を高めていったのだ。一方、女子の場合、習熟度が向上しても、やはり言語に関わる脳領域の限られた部分だけが活動していた。
この結果から、男女が同程度の学習成果を得ている場合でも、学習の方略には性差があるということが分かった。
これまでにも研究によって、英語の学習方法における男女の違いが報告されており、例えば女性は実際に声に出すなど聴覚を使った方法をとる傾向があるのに対し、男性は目で見て覚える視覚的な方法をとる傾向にあるという。こうした違いに、今回明らかになった能処理の性差もリンクさせてさらに研究を深めると、小学生の英語学習において科学的な根拠に基づく、より効率的な英語学習方法が開発されるかもしれない。
(出典)首都大学東京「英語学習における脳活動に男女差~小学生約500人を対象に英語習熟度と脳活動の関係を調査~」をもとに作成