リサーチ
2016.10.04
2019年創設予定の「専門職業大学」に注目
スキルアップを目指す社会人入学を歓迎
文部科学省が新しい高等教育機関の創設に向けて動いている。既存の大学や短大、専門学校とどこが違うのだろうか?
2016年5月、中央教育審議会は実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関として「専門職業大学」(仮称)を制度化するよう文部科学省に答申した。文部科学省は2019年の創設を目指しており、短大相当の2~3年制と大学相当の4年制を設ける予定だ。グローバル競争が激化し、職業に必要な知識や技術が高度化するなか、現場レベルを引っ張ることのできる人材を養成するのが狙いだという。
既存の専門学校とどう違うのか?という疑問が浮かぶかもしれないが、中央教育審議会によると、専門学校は「教員数や施設設備に関する水準が緩やか」なことから、「教育の質が保障されたものにはなっていない」としている。
「専門職業大学」は次のような一段と高いレベルの内容となる。
・教員の4割以上を、実経験が5年以上ある「実務家教員」にする。
・卒業単位の3~4割を実習科目にする。
・2~3年制で300時間以上、4年制なら600時間以上の企業での実習を義務付ける。
・2~3年制では「短期大学士」、4年制では「学士」の学位を授与する。
これらに加えて、社会人が学びやすい環境整備をするのも、「専門職業大学」の特徴だ。
上のグラフで分かるように、日本の25歳以上の学士課程への入学者の割合はわずか2%で、諸外国と比べて著しく低い。日本ではいったん社会に出ると、高等教育を受けにくい環境となっている。「専門職業大学」ではこの点に配慮し、時間的制約のある社会人が入学しやすく、学びやすい教育課程を目指す。具体的には下記のような工夫がされる予定だ。
・社会人向けにパートタイム学生や科目等履修生として学べるようにする。
・長期履修制度や学内単位バンク、昼夜開講制などを促進する。
・短期の学修成果を積み上げ、学位取得につなげる仕組みを整備する。
・入学者選抜では、実戦的な職業教育の推進の観点から、実務経験や保有資格、技能検定での成績等を積極的に考慮する。
一層のスキルアップ、キャリアアップを目指すビジネスパーソンは、この「専門職業大学」の動向に注目してはどうだろう。
(出典)中央教育審議会実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の制度化について(審議経過報告)」、中央教育審議会総会「第3期教育振興基本計画の策定に向けた 当面の主な検討事項に係る参考データ集」をもとに作成