リサーチ
2017.09.01
新入社員が理想とする「働き方」とは?
若者が重要視するのはキャリアより自由に使える時間の確保
少子化や団塊の世代の大量退職などによる労働人口の減少や、ベンチャー志向の学生が増えるなど様々な要因で、大手企業でも就職希望者有利の「売り手市場」となる中、入社して3年のうちに約3割が離職しているという現実もある。「若者に選ばれる企業」になり、優秀な若手人材を確保するために必要なことは何か。少し前まで就職希望の立場だった新入社員への意識調査から、現代の若者が「職場に求めること」の傾向を探る。
公益財団法人日本生産性本部は、新入社員に向けた教育プログラム等の参加者を対象とした意識調査を行った。その中で、入社した会社の志望順位を聞いたところ、第一志望での入社の割合が、2000年代では最高を示す79.5%であった。
だが、希望通りの会社に入社した人が多いはずなのに、一方で「条件の良い会社があれば、さっさと移る方が得」と考える人の割合も、2009年を境に再び増加傾向にある。特に、2017年の36.2%は、前年の28.0%から格段に増えており、最高水準である2000年代前半の数値に再び近づく結果となった。
そんな「条件」の判断基準がうかがえるデータがある。彼らに残業についての考えをたずねたところ、「残業は多いが、仕事を通じて自分のキャリア、専門能力が高められる職場」よりも「残業が少なく、平日でも自分の時間が持てる職場」を希望する人が圧倒的に多く、74%を占めた。
そのように残業の少ない環境を整備するためには、働き方改革が急務である。実際、働き方改革で最も関心のある勤務形態をたずねたところ、1位が「転勤のない地域限定勤務」、僅差の2位に「在宅勤務制度」がランクインした。この結果から、自分のしたいことができる時間の確保を実現できる、会社という場所にとらわれない働き方を希望する傾向が強いことがうかがえる。
しかしながら、こうした新入社員の希望は、現実の企業において反映されているのだろうか。
在宅勤務も含めた、情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない働き方であるテレワークについて、総務省が国内企業向けに行った「平成27年通信利用動向調査」によると、「導入している」「導入していないが、具体的に導入予定がある」と答えた企業は、全体の約1/5に過ぎず、柔軟な働き方を働き手が望んでいても、やはり現状では、受け入れる企業の方で対応できていないようだ。
テレワークは導入にあたって、ITツールやセキュリティ等の見直し、法律の確認、会社と働き手がスムーズにコミュニケーションをとれる仕組みづくりなど、解決しなければならない課題が多い。また、地域限定勤務などの制度関係も、取り入れるためには大改革をしなければならない企業もある。しかし、テレワークをはじめとした、これからの会社を担う若い世代が望む制度を充実させることで、優秀な若い人材に「選ばれる企業」になるだけでなく、離職者が減るなど多くの社員にとって働きやすい職場となるはずだ。企業は新たな価値観を反映した働き方を模索していく必要があるだろう。
(出典)「2017年度 新入社員 春の意識調査」(公益財団法人 日本生産性本部)、「平成28年版 情報通信白書 第1部」(総務省)をもとに作成。