リサーチ
2018.02.09
増加するパワハラ、どう解決するべき?
取り組んでいる対策が効果的とは限らない!
民事上の総合労働相談では、「いじめ・嫌がらせ」の内容が5年連続でトップ。平成28年度は70,917件と、前年に比べ6.5%増加した。職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が問題視されているにもかかわらず増加している現状を踏まえ、企業内のパワハラをなくすための取り組みとして、どういった対策が効果的なのかを調査結果から探っていこう。
厚生労働省の発表した「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、全国380ヵ所にある総合労働相談コーナーに、平成28年度中に寄せられた総合労働相談は113万741件。前年度に比べ9.3%増えた。
そのうち、法制度に関することや労働基準法違反などの相談を除いた、民事上の個別労働紛争相談は25万5,460件。相談内容の上位3つは上から「いじめ・嫌がらせ」「 自己都合退職」「 解雇」だった。「いじめ・嫌がらせ」は5年連続トップの相談内容で、70,917件と全体の22.8%を占め、前年に比べ6.5%増加。職場でのパワハラが多数報告されていることが浮き彫りとなった。
また、厚生労働省委託事業の委託を受け東京海上日動リスクコンサルティング株式会社が調査した結果をまとめた「平成 28 年度 厚生労働省委託事業 職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によれば、パワーハラスメントが職場や企業に与える影響について企業に調査を行ったところ、パワハラ予防を重要と考える企業もそうでない企業も「職場の雰囲気が悪くなる」という回答が最も高かった。その後に「従業員の心の健康を害する」、「従業員が十分に能力を発揮できなくなる」が続く。
さらに、企業がパワハラ予防のために実施している取り組みと、効果が実感できた取り組みの調査では、興味深い結果がうかがえる。実際に企業が行っている取り組みは上から「相談窓口を設置した」、「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」、「就業規則などの社内規定に盛り込んだ」などだが、効果を実感できた取り組みは、「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修を実施した」、「一般社員等を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」が上位にあがった。
実施した取り組み1位であった「相談窓口を設置した」は3位であり、効果がある取り組みと企業が実施している取り組みのギャップが見える結果となった。また、特に効果が薄いとされているのは「社内報などで話題として取り上げた」「ポスター・リーフレット啓発資料を配付または掲示した」などである。
ここから見えるのは、全体への広報などの個人の問題として実感しにくい提示方法や、相談窓口などの被害者側だけのケアよりも、パワハラをする側、される側どちらにも個人の問題として意識できるような研修や講演などの方が「効果が高い」ということである。管理職、一般社員どちらの立場でもパワハラについて認識・認知させ、「何がパワハラに当たるのか」「パワハラを受けたらどうすればいいのか」という企業内でのルールと対処法を定めることが、実際のパワハラ予防につながっていくのだと考えられる。
(出典)「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)、「職場のパワーハラスメントに関する 実態調査報告書」(厚生労働省)をもとに作成。