チェックワード

2018.06.15

「浮き足立つ」のはウキウキしているからではない

本日のチェックワード 62「浮き足立つ」

「連休前で、みんな浮き足立っていますね」

 連休が始まる直前の金曜日、ランチタイム中の雑談であなたが何気なく上記のような発言をしたら、先輩社員が笑い出しました。なぜでしょう?
「浮き足立つ」というと、「浮かれてそわそわしている状態」だと思っている人がいます。しかし、そもそも「浮き足」とはつま先立ちの状態を表す言葉で、転じて落ち着かない態度を指します。そして「浮き足立つ」は、「浮き足」で「立つ」ことから、「落ち着きをなくし、今にも逃げ出しそうなこと」をいいます。「期待で目の前のことに集中できないこと」を表すこともありますが、どちらかといえば不安なときに「逃げ出しそうな状態」というニュアンスを強調して使うことが多いようです。ちなみに、うれしさや期待でそわそわしている状態は、「足が地に着かない」という表現を使うのが適切です。
 今回の例でいえば、あなたは「連休前だからみんなそわそわして逃げ出しそうな状態ですね」と発言したことになるのです。聞き手は「仕事から逃げ出したい、ということかな?」と思うかもしれません。ユーモアセンスのある人なら「まあ確かに、連休前はサッと仕事を切り上げたいよね」と解釈してくれるでしょうが、生真面目な上司だと「不謹慎な!」と怒り出す可能性もあります。「みんなそわそわしていますね」といったシンプルな表現を使う方が安全です。

この使い方で差が出る

・A社に経営破綻の噂が流れ、取引先企業は浮き足立っています。

監修/篠崎 晃一(Shinozaki Koichi)

東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編修代表や、テレビ番組「ワーズハウスへようこそ」(日本テレビ系)の監修など幅広い分野で活躍。『えっ?これっておかしいの!? マンガで気づく間違った日本語』(主婦の友社)など、日本語の誤用に関する著書も多い。