組織の力

2018.07.23

フリーランス活用で企業が進化する時代へ〈前編〉

広がる“フリーランス”という働き方

日本人の働き方や働くことに対する意識は、今、大きく変わりつつある。かつての主流だった“フルタイム正社員・終身雇用志向”にとらわれない多様な働き方、生き方を自ら選択する人も増えている。その一つが、専門的な知識やスキルを活かし、特定の企業や組織に属さずに働く“フリーランス”だ。そして、近年はこのフリーランス人材を積極的に活用する企業も徐々に増えてきている。そこで今回は、フリーランスと企業とのあり方について、株式会社Warisワークアゲイン事業統括/Waris Innovation Hubプロデューサーの小崎亜依子氏に伺った。

高い専門性を持ち、企業のイノベーションの
一端を担う「変革型フリーランス」

従来は、フリーランスというと、デザイナー、ライター、カメラマン、ヘアメイクなど、一部の専門性の高い職業に限定されるイメージがあった。しかし昨今は、オフィスワーカーとして必要な高度なスキルを持つ人材がフリーランスとして必要とされるようになっており、その市場が拡大し、活躍の場が広がっている。そうしたなかで、「どのようなフリーランスを目指すべきか、また、企業はフリーランスをどう活用すべきかといったことを踏み込んで考える必要がでてきた。また、フリーランスの数は増えているもののその実態は明らかではないという課題もあった」と小崎氏は言う。

そこでWarisは今年、帝京大学の中西穂高教授と協力し、今後目指すべきフリーランス像を「高い専門性を持ち、取引先企業と対等な関係を通じて、企業の組織変革やイノベーション創出の触媒としての役割を担うフリーランス」と定義。「変革型フリーランス」と名づけ、「変革型フリーランス実態調査」を行った。調査では、「変革型フリーランスはどういう人たちなのか」、「変革型フリーランスにはどうやったらなれるのか」、「企業は変革型フリーランスとどのような関係を築いていく必要があるのか」の3つの視点に基づき、7000人以上のフリーランスを対象にアンケートを実施した(回答者は167名。詳しい調査結果はhttps://info.waris.co.jp/henkakugatafreelance2018を参照)。

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出典:「Waris_変革型フリーランス実態調査資料」より


「変革型フリーランスはどういう人たちなのか」という1つ目の視点については、調査結果から下記のような特徴が見えてきた。

● 高額な単価を獲得している(中央値3,000円/時)
● 月160時間以内の労働時間で、リモートワークを活用して働いている
● フリーランスになったことに満足して働いており、将来もフリーランス、もしくは経営者として働きたいと思っている
● 会社員としての経験が10年以上ある
● 多くが企画、マネジメント型の業務に従事している

ここで、フリーランスの定義について触れておきたい。前出の「ランサーズ・フリーランス実態調査2018年版」では、「広義のフリーランスは1,119万人(推定)に上る」としているが、この数字には「すきまワーカー(副業)」や「パラレルワーカー(複業)」も含まれている。また、厳密には、農家、漁師、大工なども個人事業主であるケースが多く、フリーランスと言える。そのため「フリーランスを厳密に定義するのも統計をとるのも難しい」としたうえで、小崎氏はWarisが考えるフリーランスについて、「ビジネス系フリーランスで、フリーランスとしての収入が収入全体の8割以上を占めるワーカー」と基準を示した。

本記事後編ではこの基準に従い、とくに「変革型フリーランス」に焦点を当てながら、企業との関係性について探っていく。

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出典:「フリーランス白書2018」より

小崎 亜依子(Kozaki Aiko)

株式会社Waris ワークアゲイン事業統括/Waris Innovation Hubプロデューサー。明治大学「女性のためのスマートキャリアプログラム」講師。日本テレワーク学会会員。北九州市未就業女性の活躍戦略策定事業アドバイザー(2017年) 。1996年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2002年ピッツバーグ大学公共政策国際関係大学院修了 (公共政策マネジメント修士)。野村アセットマネジメント株式会社を経て、留学・出産育児で 5 年のキャリアブランク後、NPOのアルバイトで復職。2007年より株式会社日本総合研究所で「なでしこ銘柄」における企業分析などを担当した後、2015 年(株)Warisに参画。自身の経験を活かし、キャリアブランクのある女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」を手がけるとともに、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。著書に『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当)、『スチュワードシップとコーポレートガバナンス―2つのコードが変える日本の企業・経済・社会』(共著)、などがある。

文/笹原風花 撮影/荒川潤