仕事の効率化

2018.08.01

中長期の仕事に確実に取り組むための「しくみ」をつくる

仕事の効率化13:1日10分、「じぶん会議」の時間をもつ

中長期の仕事を先延ばしにし続けていると
組織も個人も成長できない

今回は、連載第1回で紹介した「忙しさの7つのタイプ」でタイプ3の「短期の仕事で精一杯で、中長期の仕事に手がつかない」に当てはまる人に向けて、一つの解決案をお話します。
ここで言う中長期の仕事とは、人材教育や新規顧客開拓、商品開発など、「今すぐ取り組まなくても困らないけれど、組織にとっても個人にとっても今後の成長に関わる重要な仕事」を意味します。
 
これまでの回ではおもに、短期の仕事を効率よく消化していくための方法を説明してきました。しかし、目の前の仕事に集中すればするほど、中長期の仕事は先延ばしになりがちです。緊急度は低くても重要度の高い中長期の仕事に取り組まないままだと、「部下が育たない」「顧客数が先細りする」など後々重大な影響が生じることは明らかです。目先の仕事ばかりに追われず、中長期の仕事を確実に進めるコツをここで身につけてしまいましょう。
 
 
 

仕事における時間は
大きく分けて4種類ある

 
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マトリクスからもわかる通り、仕事における時間は、以下の4種類に分けることができます。
①時間の「消費」…緊急かつ重要度が高い
②時間の「投資」…緊急ではないが重要度は高い
③時間の「浪費」…緊急だが重要度は低い
④時間の「空費」…緊急でもなく重要度も低い
 
私がこれまでにコンサルティングや企業研修などでお会いしたビジネスパーソンにヒアリングした感触では、全労働時間のうち①に60%、②に5%、③に20%、④に15%程度を費やしている人が多いようです。
 
中長期の仕事をする時間は②の「投資」に該当します。中長期の仕事が重要であることは冒頭で説明しましたが、多くの人が時間の「投資」をしてその重要な仕事を進めることなく、時間の「消費」で1日を終えてしまうのではないでしょうか。「投資」にかける時間を、できれば15%程度に引き上げ、中長期の仕事を着実に進めていきたいものです。
 
 
 

毎日10分ずつ中長期の仕事に
ついて考える時間を取る

では、「投資」の時間を増やして中長期の仕事に取り組むにはどうしたらよいでしょうか。中長期の仕事は緊急度が低いだけに、目の前の業務に追われているときは意識に上らないことも多いもの。まずは、中長期の仕事についてじっくり考える時間を確保することが大切です。私はこの時間を「じぶん(自分)会議」と名付け、定期的に時間を取っています。中長期の仕事を含め、今後の自分に大切なことは何かと考えて整理し、新たにやるべきことを決めるわけです。
 
組織に属する方にも、毎日10分でよいのでじぶん会議の時間を取り、中長期の仕事について考えることをお勧めします。中長期の仕事がいかに重要であるかは多くの人が認識しており、「時間に余裕ができたら必ず進めよう」と考えています。しかし、日々の業務に追われ、割り込み仕事も次々と入ってくる生活の中で、時間に余裕が生まれることは期待できません。そこで、じぶん会議を先にスケジュールに組み込むことによって、考えるためのしくみをつくってしまうのです。
 
 
 

中長期の仕事も細かく分割し
今後のスケジュールに組み込む

じぶん会議の10分間には、中長期の仕事について、今後どう進めればいいかじっくり考えます。ただし、中長期の仕事は人材教育や新規顧客開拓、商品開発など大きいテーマがほとんどなので、具体的に何をすればいいかがイメージしづらいかもしれません。
 
そこで、連載の第3回「仕事は細かく分けて取り組む」で紹介したように、まず仕事を最小単位に分けてみてはいかがでしょうか。例えば商品開発なら「1行レベルのアイデアを100案出す」「100案のアイデアを20案に絞り込む」「既存商品のユーザー10人程度を集めてグループインタビュー」といった具合に、やるべきことが具体的にイメージできるところまで分解するのです。
そのうえで、最小単位に分解した仕事を「アイデア出しは5月15日の17時から2時間取ろう」と実際のスケジュールに組み込みます。ここまでやれば、中長期の仕事を先延ばしにせず実行していけるというわけです。
 
 
 

「じぶん会議」の時間は
10分を超えてもまったく問題ない

あれこれ段取りを考え始めると、じぶん会議の時間が当初予定の10分を超過してしまうこともあるでしょう。しかしそれは、中長期の仕事について具体的に煮詰めることができた証拠といえます。他の業務に支障が出ない範囲なら、しっかり時間を取ってよいのではないかと私は考えます。
 
大切な中長期の仕事について考える習慣を確立し、着実に進めていきましょう。
 

鈴木 進介 (Suzuki Shinsuke)

経営コンサルタント。独自の思考整理術を構築し、「思考の整理家」として、現在では一部上場企業からベンチャー企業までコンサルティング実績は100社以上。講演会や人材教育の分野でも活躍する。『1分で仕事を片づける技術』『1分で頭の中を片づける技術』(共にあさ出版)など著書多数。

イラスト/海老佐和子