仕事の効率化

2018.08.22

「労働時間をお金に換算する習慣」が効率化の動機づけに

仕事の効率化14:時給・分給の視点を仕事に取り入れる

労働時間を金額に換算すると
いやでも時間に対してシビアになる

この連載では、仕事を効率化する方法をさまざまな切り口から紹介してきました。最終回となる今回は、効率化の動機づけとして効果的な考え方をお教えします。その方法とは、「労働時間をお金に換算して考えること」です。ダラダラと時間をつぶすことにはそこまでシビアでなくても、お金をムダ遣いするとなると罪悪感を感じる人は多いでしょう。その心理を利用すれば、いやでも費用対効果ならぬ「時間対効果」を意識するようになり、仕事の効率化が実現しやすくなります。
 
今回の内容は、連載第1回で紹介した「忙しさの7つのタイプ」の中でも、自分はタイプ5「完璧に仕上げないと次の仕事に移れない」の傾向がある、と感じた人に読んでいただきたいと思います。労働時間をお金に換算する視点をもつと、たとえダラダラ働いているわけではなくても、「この仕事にはこれだけの金額をかける価値があるか」と考えざるを得ません。その結果、的確な優先順位でメリハリをつけた効率的な働き方ができるようになると期待できます。
 
 
 

ムダにした時間を時給で考えれば
効率化の必然性に気づける

あなたは自分の時給がいくらかご存じですか? 知らない人は「月収÷労働時間」で計算してみましょう。月収は額面と手取りの2パターン計算すると、より実感がわきやすくなります。出した時給を60で割ると「分給」が計算できます。時給と分給がわかれば、仕事時間を金額換算できます。それぞれの仕事に自分がどれくらいの金額を費やしているかはもちろん、ムダにしてしまった時間についても計算してみるとよいでしょう。
 
例えば、時給2000円(分給は約33円)の人が「タバコを吸いに喫煙コーナーに行き、同僚とダラダラ世間話をしていたら10分経ってしまった」というケースについて考えてみます。その人は1回の喫煙タイムで330円をムダ遣いしたことになるのです。そして、1日に5回同じことを繰り返すと1650円となります。
一方で、同じように時給2000円の人が、完璧に資料を揃えようとリサーチに2時間かけた場合はどうでしょう。2時間の中には実際には使わない資料を集める時間も含まれているので、4000円(2000円×2時間)のうちどれだけ金額に見合う仕事ができたかは疑問です。
 
リアルな支払いは発生しなくても、金額換算してみることで「ムダな時間を使ってしまった。もっと効率的に働かなければ」と強く感じるのではないでしょうか。
 
 
 

組織全体で金額換算の習慣を取り入れれば
効率化をポジティブに楽しめる

時間をムダにするのとは逆に、効率的な働き方で予測より短時間で仕事が終わった場合は、浮いた時間を「余剰資金」として計算してもいいでしょう。私がお付き合いさせていただいている企業様では、業務ごとの時間見積もりと実際にかかった時間を比較しながら「バーチャル貯金」を楽しんでいらっしゃいます。貯金を増やすためには効率のよい働き方が求められるので、自然と仕事への取り組み方を工夫する人が増えたそうです。
 
また別の企業様では、「会議で何も発言しなかったら時給をムダにしたのと同じことなので、共有の貯金箱に100円を入れる」というルールを決めて実行していらっしゃいます。貯金箱に入れたお金はもちろん後で返金されるのですが、このルールを始めてから、会議が目に見えて活性化したとのことです。
 
時給・分給の視点を取り入れれば、時間を「見える化」できるうえ、仕事の効率化にゲーム感覚で取り組めます。「働き方を改革する」などと考えると具体的なイメージがわきにくく堅苦しいので、「貯金額を増やす」という身近なモチベーションをもって効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
 

鈴木 進介 (Suzuki Shinsuke)

経営コンサルタント。独自の思考整理術を構築し、「思考の整理家」として、現在では一部上場企業からベンチャー企業までコンサルティング実績は100社以上。講演会や人材教育の分野でも活躍する。『1分で仕事を片づける技術』『1分で頭の中を片づける技術』(共にあさ出版)など著書多数。

イラスト/海老佐和子