リサーチ
ポストコロナにおけるコミュニケーションスタイル
WEB会議活用状況から見えた今後の傾向とは?
コクヨ株式会社では、約7,000人の従業員を対象に、2020年1~6月におけるWEB会議の活用状況を調査した。この期間、新型コロナウイルスの拡大と共に、多くのワーカーの働き方は激変した。中でも大きく変化した項目の一つがコミュニケーションスタイルだ。WEB会議に関する調査から見えてきた「今後の社内外コミュニケーションのあり方」について、同社ワークスタイルイノベーション部でコンサルタントを務める伊藤毅氏が考察する。
在宅ワーク×オンライン活用で
仕事が効率化される
今回の調査からは、コクヨ社員がオンラインコミュニケーションを加速度的に使いこなしていったプロセスが読み取れました。では、仕事の効率という面で、ワーカーはオンラインによるコミュニケーションをどうとらえているのでしょうか。一つの答えとして、コクヨのお客さまである某卸売業の企業様にご協力いただいたアンケート調査の結果をご紹介します。
この企業では、コロナ禍以前から一部の部門・部署でテレワークを実践していました。そこで私たちは、2020年1月に第1回調査を行い、「テレワークでよく行っている行動」(仕事内容)を6つまで選んでもらいました。そして6月の第2回調査では、「テレワークで生産性が上がったと感じる項目」を任意で挙げてもらいました。調査の結果を示したのが以下のグラフです。
結果を見ると、「資料作成」「情報収集」などの個人作業は、テレワークで行っている人が多いのと同時に、「生産性が上がった」と感じている人が目立ちます。個人作業、特に一人で黙々と行う作成型の業務はオフィスよりもテレワーク(在宅ワーク)の方が効率的である、ということです。
また、社内外のコミュニケーションの結果にも注目すべきポイントがありました。一般的にコミュニケーションはリアルな場が良いというイメージがありますが、コミュニケーションの種類によっては、テレワーク(在宅ワーク)が効果的であることがわかったのです。
例えば「社内コミュニケーション」の領域では「意見交換」「結果・経過報告」「社内段取り調整」項目において、「社外コミュニケーション」の領域では「社外段取り調整」といった項目において、テレワーク(在宅ワーク)による効果を感じている人が一定数いることがわかりました。
すなわち、リアル重視だった社内外のコミュニケーションも、内容によってはオンラインでも十分可能で、むしろ効率的が可能だ、ということです。
まして、テレワークなら、通勤ストレスやコロナウイルスの感染不安もありません。出社したりお客さまのオフィスを訪問したりせずに、コミュニケーションの何割かをオンラインで行う人は今後も減らないと考えられます。
オンラインコミュニケーションだけで
新しモノ・コトを生み出すのは難しい
しかし、ビジネスにおけるコミュニケーションがすべてオンラインに置き換わることはないと私は考えています。私自身は、仕事をしていて、WEB会議には「自分のチーム・部署以外の仕事内容がわかりにくい」「部署全体の雰囲気をつかみづらい」といったデメリットがあるのを実感しています。
社内での異部門・部署どうしのコミュニケーションがないと、新たなビジネスが生まれる土壌がつくりにくいのではないでしょうか。
また、先ほどご紹介したお客さまへのアンケートでも、社内コミュニケーションでは「意思決定の会議」「アイデア出し打ち合わせ」、社外コミュニケーションでは「商品・サービス紹介」などは、『テレワークで効果があった』と感じる人は少数でした。
これらの項目は、新しいビジネスに乗り出したり、新たな顧客と関係性を構築するためのコミュニケーションに分類できます。つまり、オンラインコミュニケーションは「新しいモノ・コトを生み出す」という面で課題があると推測できます。
リアルとオンラインを効果的に使い分けて
生産性と創造性を共に向上させる
コクヨでは、多様な視点から働き方改革に関する研究を行い、WEB会議に限らずテレワークは、仕事をよりスピーディに回していく「生産性の向上」の面で、大いに有効であると結論づけています。しかし、新しい仕事を生み出す「創造性の向上」においては、まだまだ弱いと分析しています。
生産性と創造性を両輪で向上させるには、オンラインで代替できないコミュニケーションを切り分けることがまず大切です。そして、感染防止策などを徹底しオフィスの安全性を確保したうえで、リアルな場でのコミュニケーションを効果的に行っていくことが企業成長につながると私は考えています。
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伊藤 毅(Ito Go)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
2007年コクヨ入社。セキュリティやITなど働き方を支援する仕組みや環境づくりに従事し、コクヨのクラウドを活用したワークスタイル企画に参画。現在は、働き方・IT・制度の3つテーマを働き方プロジェクトマネジメントとして実施。