リサーチ
2020.11.04
ITツール導入者と利用者の意識にギャップ
利用者はスペックよりも「運用しやすさ」を重視。事前の説明が満足度UPの鍵
IT化が進む社会では、ビジネスに役立つITツールも次々と開発され、導入する企業が増えているが、導入後にうまく活用できないケースや、社員が不満を抱くケースもあると聞く。IT製品のレビューサイト「ITreview」を運営するアイティクラウド株式会社が2020年2月に実施した『ITツール導入に関するアンケート』の結果から、ビジネスにおけるIT導入を成功に導くためのポイントを探る。
2019年4月から順次施行されている働き方改革関連法を受け、業務効率アップを図るために、ビジネスにおけるITツールの導入が加速した。また、これまでIT化に消極的だった企業も、新型コロナウイルスの影響で重い腰を上げ、さらに加速した印象だ。グローバル化やダイバーシティの推進といった要素も考えると、これからの時代、ビジネスはますますITと無縁ではいられなくなる。
『ITツール導入に関するアンケート』は、ITツール導入決定者と利用者(導入に関与せず利用だけしている人)の意識を別々に集計。職場のITツール導入に対して、導入者と利用者で意識のギャップがあるという実態を明らかにしている。
直近1年以内に導入されたITツールへの満足度を聞くと、導入決定者の90.0%が満足している一方で、利用者は68.5%しか満足していなかった。また、ITツール導入による業務効率向上の成果についても、導入決定者87.0%、利用者が68.5%と、実感値にギャップが生じていた。
この調査で興味深いのは、導入前の説明の有無によって、利用者の満足度に差が生じているところだ。利用者に「導入の段階で担当者から十分な説明がありましたか」と聞くと、74.0%もの人が「十分な説明を受けていない」と感じていることがわかった。そして、「十分な説明を受けていた」と回答した人の層では92.3%がITツールに満足しているが、説明不足を感じている人の層では満足度が60.1%まで低下している。
調査では、導入者にはITツールの選定に際して重視した点、決裁・発案に関与していない利用者には、何を重視すべきだったと思うかを聞いている。利用者の回答で最も多かったのは「運用の簡単さ」、次いで「充実した機能・スペック」という順になったが、導入者では1位と2位が逆転している。導入者よりも利用者のほうが、「いくら機能が充実しスペックが高くても、使いにくいものだと困る」という認識が強いものと推察される。「価格」は導入者・利用者ともに3位だが、コストインパクトを考慮しなければならない導入者と利用者では、数値の差異が大きかった。
IT化はこれからの社会に必須であるが、企業がITツールを導入しても、一部の社員しか使いこなせない、利用者に不満があがるというケースも多い。せっかく導入しても浸透しなければ意味がないので、導入者と利用者の意識ギャップをなくす必要がある。
導入決定者の満足度が高いのは、発案やITツールの選定、決裁に関わっているので、至極当然ともいえる。導入者として抜擢されている時点で、元々のITリテラシーも高い可能性が大きい。しかし、ITツールを最大限に有効活用するためには、利用者が満足することが重要なのではないだろうか。
調査では、導入前に十分な説明をすることで、利用者の満足度が向上することがわかった。説明が不十分であった場合、元々のITリテラシーによって格差が生まれ、使わない・使えないという社員も出てきてしまうだろう。十分な説明を受ければ、導入されるITツールへの理解も深まり、より多くの人が使いこなせるようになる。導入前、そして導入後も、利用者への手厚いフォローが鍵となりそうだ。
また、実際に使う頻度の高い利用者が、ITツールの選定に関わることも有益だ。利用者側に「使いやすいものがいい」、「この機能が欲しい」などの希望がある場合は、導入者が重視している価格面なども考慮して意見を言うと、より建設的なディスカッションが実現するだろう。
【出典】ITreview(アイティクラウド株式会社)『ITツール導入に関するアンケート』