リサーチ
2021.02.08
ドローン市場2025年度には6500億円規模⁉
企業発展を支える重要ツールに
ドローン関連ビジネスを展開する企業など50社以上への取材をもとに、市場動向、ビジネス動向、行政、法律や規正、今後の展望や課題などが分析した『ドローンビジネス調査報告書2020』を株式会社インプレスが2020年3月26日にを発行。
企業のドローン導入が進む
現代社会をより良いものに発展させていくために、最新テクノロジーの導入が必須になりつつある。新型コロナウイルス感染拡大の最中にあっては、日本国内の電子化・IT化の遅れが頻繁に指摘されたる。今後はさらに積極的かつ貪欲にテクノロジーに向き合っていく時代となるだろう。最新テクノロジーのなかで、特に注目されているものの一つがドローンだ。ドローンとは無人航空機(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が200g未満のものを除く)のことで、遠隔操作や自動操縦で飛行させることができる。
産業におけるドローン導入の例としては、エンターテイメントや広報などを目的とした空撮、インフラや土木・建築分野における測量・点検、農薬の散布、物流、農地や山林の鳥獣害対策、防犯や災害分野での活用などがある。
ドローン導入の背景には
市場課題の解決がある
『ドローンビジネス調査報告書2020』では、2016年度から2025年度の、ドローンビジネスの市場規模(推測値)が示されている。まずは「サービス市場(※)」の分野別市場規模を見てみよう。
※サービス市場...ドローンを活用した業務の提供企業の売上額。ソリューションの一部でのみ活用の場合は、その部分のみの売上を計上。
サービス市場における分野別市場規模をみると、元々農業分野での普及率が多分野より群を抜いて高く、2016年度~2020年度までの上げ幅も大きい。農地の多い地域では法規制の縛りが少なく、ドローンを導入しやすいことが一因といえるだろう。
国内および海外メーカー各社から、用途に合わせた産業用機体が販売されているが、特に農薬散布機が普及し始めているというデータがあるほか、最近は都市農業においても、ドローン導入を積極的に検討する動きがあるようだ。
2016年度~2020年度で最も普及が進んだのは、インフラや点検の現場。この分野は、危険を伴う作業が多いため、安全性を確保できるドローン導入のメリットが大きい。また、測量・建築・土木系は、労働力不足や人件費の高騰が深刻な分野の一つでもあるため、ドローンを積極的に活用したいというニーズが高いのではないだろうか。
今後の期待値が最も高いのは物流分野。物流分野は労働力不足が特に深刻で、ドローンの活用が期待されているが、法規制の壁が厚く都市部ではまだ難しい。
しかし、農地や山間部における実証実験などは既に全国で実施されており、今後はさらなるドローンの利活用に向けた法整備が進むと考えられる。
また、ドローン活用の幅が広がれば、より高度な性能が求められる。長距離飛行を可能にするための機体やバッテリーの性能向上や、5G普及への期待から、さらなる進化が予測されているのだろう。
ドローンビジネスの市場規模は
数年間で爆発的に拡大
2019年度に1409億円(前年度比51%増)だった日本国内ドローンビジネスの市場規模は、2020年度には1932億円(前年度比37%増)、2025年度には6427億円(2019年度の約4.6倍)に達すると見込まれている。
特に前項で紹介したサービス市場の規模が占める割合が高く、伸び幅も大きいが、前年に発行された年度『ドローンビジネス調査報告書2019』で想定されていた成長速度よりも遅れが見られるようだ。
その要因には、運用ノウハウの蓄積、マニュアルの作成、人材育成や業務フローの再構築などの課題があり、ドローンの導入・活用はそれほど簡単なことではない。しかしこうした課題を考慮したうえでも、5年後には現在の4.6倍の市場拡大が見込まれているのは驚異的だ。
企業の発展に
ドローンが一翼を担う時代へ
これまで人の手で行っていた業務をドローンが担うことで、人材不足の解消、時間や労力の削減、大幅なコスト減も期待できる。
また、ドローン導入により積年の課題が解決されることで、業務効率や質の向上が可能となり、効率化によって生まれた余剰時間と人員によって、新しい事業やサービスが生まれる可能性もある。
現在、ドローンを先行導入しているのは、法規制の影響を受けにくく、需要が見えやすい分野であったが、規制緩和や市場の拡大が予測されていることから、これからは多分野でドローン活用が検討されていくことだろう。
ドローンの導入・活用には多くの課題があり、導入後も手応えが得られるまでに一定の時間がかかるケースも多い。機体の購入や人材育成にもコストがかかるため、有用性を認識していても二の足を踏む企業が少なくない。活用の可能性を拡げる実証実験などは進みつつあるが、ビジネスの現場での実装には至っていないケースも多いようだ。
しかし、初期投資は必要でも長期的にみればメリットが大きいと判断し、導入を決断する企業や自治体も増えてきている。新しいチャレンジには常に課題やリスクが伴うものだ。多くの企業が長期視点で導入の価値を見出せば、ドローンがビジネスに欠かせないツールとなる日も近いかもしれない。
【出典】インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2020』