リサーチ
2021.03.02
エコバックやマイボトルで注目される「エシカル消費」
地球規模の課題解決は企業と消費者のエシカルな意識から
「地球環境に配慮しながら、持続可能で豊かな生活を」という価値観が世界中で高まっている。その流れを受けて注目されているのが「エシカル」という考え方だ。トレンダーズ株式会社が2020年10月に実施した『エシカル消費に関する意識・実態調査』をもとに、エシカルな消費活動と、これからの企業のあり方について考察する。
エシカル消費とは
エシカルとは、直訳すると「倫理的」「道徳上」という意味。法律上の縛りなどがなくても、人々が普遍的に「正しい」「公平だ」と認識している概念や社会的規範のことを指す。近年この「エシカル」という言葉に、地球環境、社会、地域、そこに暮らす人々への配慮といった考え方が含まれるように。「エシカル消費」とは、このエシカルな考え方にもとづく消費のことを指している。
『エシカル消費に関する意識・実態調査』で、「エシカル」という言葉の認知度は23.0%と低いことがわかった。日本でもここ1~2年の間にようやく聞かれるようになってきた言葉であり、認知度が低いのも無理はない。
今、「貧困」「人権」「気候変動」の3つが、世界の緊急課題となっている。これらの課題を解決していくために、人や社会、地球環境に配慮した、倫理的に正しい消費活動=エシカル消費を行っていこうという気運が高まっているのだ。
この地球上に生きるすべての人が「消費者」。一人ひとりは微力でも、エシカル消費を意識して実践する人が増えることで、大きな力になる。
エコバッグの使用も
エシカルな行動
エシカルという言葉の認知度は高いとはいえないが、すでに生活のなかでエシカルを実践している人は多い。最近では、レジ袋の有料化を受けてエコバッグを活用する人が増えているが、これも地球環境に配慮したエシカルな行動の一つといえる。
調査によると、「エコバッグの使用」を実践している人は74.6%(男性59.6%、女性89.6%)にのぼり、「食べ残しを減らす」も6割以上(男性52.0%、女性71.6%)が実践していると答えた。「エコ」や「食品ロス」に関するニュースはメディアでも頻繁に取り上げられるため、多くの人が意識していることが推察される。
特に意識が高いのは女性で、ほとんどすべての項目において、男性に比べて女性のほうがより実践率が高いという結果が出ていた。女性ならではの感受性もあるだろうが、女性の社会進出が進み男女の垣根がなくなってきているとはいえ、まだ女性のほうが「生活」と身近であることが影響しているかもしれない。
エシカルへの取り組みが
企業のイメージアップに
調査で「エシカルな商品やサービスの開発」に取り組む企業に対する印象を聞くと、「良い印象」と「やや良い印象」の合計は9割以上にのぼり、大多数の人がポジティブな印象を抱いていることがわかった。
エシカルな商品やサービスを開発・提供することは、企業の利益に直結するとはかぎらない。しかしこの調査結果は、積極的にエシカルな取り組みを行い、それを発信していくことが、企業のイメージアップにつながることを示している。エシカルな取り組みは、長期的にみるとメリットが大きいのではないだろうか。
地球温暖化や海洋汚染などの環境問題が深刻化している今、人々がこれから地球上で豊かに生きていくうえで、エシカルはもう無視できない概念だ。それは国家や行政、個人はもちろん、地球上で経済活動を行うすべての企業にも求められている。
エシカル消費普及への課題
「エシカルな商品・サービス」を購入・利用する際に、気になる点やネガティブに感じるポイントを聞くと、27.8%は「特にない」と答えたが、「値段が高い」「貢献度が分かりづらい」という回答はいずれも3割を超え、「対象の商品やサービスが分かりづらい」という回答も4人に1人以上から挙がっていた。エシカルな考え方にもとづいて開発や商品・サービスの提供を行う際には、これらの課題をクリアすることが必要になる。
エシカルな考え方が
企業にも必須になる時代へ
エコバッグや紙ストローの利用、食品ロスを減らすための取り組みなど、「エシカル」は言葉の認知よりも早く、既に私たちの生活のなかで始まっている。
地球温暖化や海洋汚染など、環境問題が地球規模で取り組むべき最重要課題となって久しいが、近年その意識が、個々人の実質的な取り組みを伴うまでに急速な高まりを見せており、社会全体に浸透してきた印象がある。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(※)をビジネスチャンスとして活かそうとするスタートアップが注目を集め、政府や地方自治体による取り組みも加速するなか、生活者の「エシカル諸費」への意識は、今後さらに高まっていくと考えられる。
企業にとっても、エシカルは決して無視・軽視できない、これからの時代に必須の価値観になってきているといえるだろう。
※SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成すべき目標として掲げられたもの
【出典】トレンダーズ株式会社『エシカル消費に関する意識・実態調査』