リサーチ

2021.02.25

緊急事態宣言下におけるワーカーの意識

宣言の再発令で危機感はどう変わった?

2回目の緊急事態宣言が発令され、再び制限された環境下で働くこととなったワーカーは、どんな意識で仕事をしているのか。新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中で、首都圏企業に勤めるワーカーを対象にコクヨ株式会社が実施したWEBアンケート調査の結果を解説する。

緊急事態宣言下で迎えた2021年初頭
ワーカーの思いは?

「2021年の始まり・緊急事態宣言再び」をテーマとした今回の調査では、緊急事態宣言再発令から間もない1月12日~13日に実施。新型コロナウイルス関連の質問に加えて、年始というタイミングに合わせて2021年の目標や期待についても聞きました。

昨年以降、多くのワーカーのワークスタイルは急変しました。さらに今回の再び発令された緊急事態宣言で、ワーカーは今後の生き方と本気で向き合わざるを得ない環境に直面しています。この調査は、昨年からの新型コロナウイルスの影響によってワーカーの意識がどう変化したかのか明らかにすることを目的に実施しました。




業績や雇用、働き方に対しても
危機感が増している

2度目の緊急事態宣言下におけるワーカーの思いを知るために、調査では2020年4月の緊急事態宣言時と比較した現在の危機感について、仕事とプライベートに分けて聞きました。

全体としては、仕事でもプライベートでも危機感は「とても増している」「少し増している」「変わらず危機感がある」の合計が約8.5割でした。メディアでは「コロナ慣れ」の風潮が指摘されていますが、この結果を見るとワーカーの危機感が保たれていることがわかります。

印象的なのは、仕事に関しての危機感が「とても増している」と答えた人が22.7%と、プライベートの16.2%をかなり上回ったことです。企業によってはテレワーク利用が制限されていたり、従業員が望む感染予防対策がオフィスで実施されていない場合があります。出社するとなれば通勤中に感染する不安も出てきます。そのため、「仕事ではプライベートと比べて感染を自主回避しづらい」と考えるワーカーが多いようです。

また、フリーアンサーを見ると、業績・雇用不安など感染とは別の危機感を抱く人も少なくありません。さらに、「テレワークによるオンライン商談には限界がある」など今後のワークスタイルに対して危機感をもつ人もいました。

感染への不安が長引く中で、ワーカーのさまざまな危機感を払拭するために、間に合わせでない施策を打つことが求められています。


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感染対策のルール化で
安心安全な環境づくりを

新型コロナウイルス感染予防に向けて気をつけている項目については、「自分が気をつけていること」に加えて「自分の勤めている会社がどれだけ注意喚起をしているか」も5段階で評価してもらいました。

「ワーカー自身が気をつけていること」と「会社からの発信レベルが高いこと」の項目はほぼ一致しており、企業様が従業員の意識をくみ取った発信をしていることがわかります。

気になったのは、「エレベーターでは人数や会話を制限」や「オフィス内で一定時間での換気」「密室空間の利用を控える」「デスクやチェアの消毒」などワーカーの関心が高い項目で、「全社で注意はあったが、個人の自主性に任せている」の割合が高かったことです。

感染予防対策のあり方は、個人の健康状態や予防意識、年齢や家族構成などによって人それぞれ異なります。しかしオフィスでの感染予防対策が個人の自主性に任されているとなると、ワーカー間の意識差が互いにとってストレスになりかねません。

従業員が出社する必要があるなら、企業はオフィスでの感染不安を取り除く取り組みをしていく必要があります。密にならない空間づくりといった安心・安全な環境づくりに加えて、換気や消毒、エレベーターの利用法など感染予防対策についても、社員の自主性任せではなく、会社としての仕組みやルールをつくる時期にきているのではないでしょうか。

例えばエレベーターなら、床に靴型のシールを貼って適切なソーシャルディスタンスを「見える化」するなどの具体策を提示すると、ワーカーは迷わずに行動できるはずです。


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河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

文/横堀夏代