リサーチ

2021.03.29

テレワーカーからみたオフィスの価値

オンラインスキルの向上がテレワーカーの意識を変える

テレワークで働く人が急増した2020年。オフィスの価値は変わったのか? コクヨ株式会社で行ったWEBアンケート調査「テレワーカーからみたオフィスの価値や働き方」から見えてきた、テレワーカーの意識や行動の変化をもとに解説する。

ワーカーの意識変化から
オフィスの価値を調査

今回の調査は2020年11月中旬に実施しました。4月の緊急事態宣言解除から半年が過ぎ、多くの企業では感染予防に努めながら新しい働き方のスタンダードを構築し始めていたタイミングです。

調査では、従業員500名以上の企業に所属するテレワーカー(週3日以上テレワークを実施している人)を対象に、現状の働き方や課題についてWEBアンケート調査を行いました。

2021年1月に再発令された緊急事態宣言が解除されても、withコロナ時代の働き方としてテレワークは定着していくと予測されます。どこでも働けるこれからの時代、オフィスの価値はどう変化していくのか、テレワーカーの意識変化から読み解きました。




テレワークになっても
残業が減るとは限らない

厚生労働省の発表によれば、2020年10月の所定外労働時間(残業時間)は対前年度比で12.1%減少しています。その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業が陥った業績不振があると考えられます。

くわえてテレワーカーの場合、通勤やその他の移動時間をカットできるうえ、残業への同調圧力もないため、なおさら残業時間は減ると予測していました。

しかし実際には、「残業が減った」という人は38.0%にとどまりました。そのうちの一定数は、感染拡大の影響により仕事が減った業界に属するワーカーだと考えると、テレワークになったことで残業が減った人の数はもっと少なくなります。

逆に、テレワークなのに、「残業が増えた」または「かわらない」人が62.1%いることから、必ずしもテレワークが残業削減につながるわけではないことが読み取れます。

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オンラインスキルの向上で
コミュニケーション満足度アップ

オフライン(オフィス)で行いたい業務とオンライン(テレワーク)で行いたい業務を聞いたところ、「顧客ヒアリング」や「社外交流」「社内イベント」などは、「オフィスがよい」「どちらかといえばオフィスがよい」と答えた人の合計が60%を上回っています。積極的に他者と関わり、情報を収集・発信する業務については、相手と対面できるオフィスで行いたいと考える人が目立ちます。

コクヨでは2020年5月にも、全国約3000人のワーカーに向けて『ポストコロナに向けた働き方の変化』を調査し、「オフィス・自宅それぞれで快適に行える活動」という、今回とほぼ同じ質問をしていました。2つの調査結果を比較したところ、傾向に大きな変化はみられませんでしたが、今回の調査では「アイデア創発」「面談・相談」に関してはテレワークで、と考える人が前回より増えていました。

テレワーク普及から半年以上が過ぎ、オンラインコミュニケーションが日常となってきた今、WEB会議ツールの使い方やオンラインでのファシリテーション力は向上したと予測できます。その結果、オンラインでもある程度密度の高いコミュニケーションが可能になってきたのではないでしょうか。

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河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

文/横堀夏代