リサーチ
オフィス出社者からみたオフィスの価値
テレワークの活用と業務改善でオフィスの役割を見直す
新型コロナウイルス感染拡大に伴いテレワークが普及した一方で、感染リスクを感じながらもオフィスに出社して働くワーカーも多い。そんなワーカーにとってオフィスの価値とは?コクヨ株式会社で行ったWEBアンケート調査「オフィス出社者からみたオフィスの価値」から、オフィスワーカーならではの苦労や課題意識をもとに解説する。
コロナ禍のオフィスで ワーカーが抱える思いとは?
今回の調査では、「オフィス出社者からみたオフィスの価値」をテーマに、現状の課題や働き方に対する希望についてWEBアンケート調査を実施しました。 ここで対象者としたオフィス出社者は、「自社(全社または所属部署)でテレワークを導入しているにも関わらず、自身の利用は週1日以下のワーカー」と定義しました。つまり、テレワークの制度を利用できる環境にありながら、オフィスや現場で働くことが多い人です。 感染リスクを感じながらも、ワーカーがどんな思いをもってオフィスで働いているのかを調査しました。
ワーカーの本音 6割以上がテレワークを希望
今回の対象はテレワークの頻度が週1日以下のワーカーです。調査を前に、テレワークを導入しているにもかかわらず利用頻度が少ない理由として、以下の3つがあると予測しました。
- ① オフィスの方が快適に働けると考え、自らの意思でテレワークをしていない
- ② 現場やオフィスでなければできない業務が多い
- ③ 自社の企業文化としてテレワークを利用しづらい
コロナ禍で フリーアドレスは有効?
新型コロナウイルス感染症が拡大しているこの時期だけに、オフィスに出社して仕事をするうえで気になるのが「密」になることです。そして、この「密」への対処策としてフリーアドレスが議論されることがあります。 そこでフリーアドレスの採用状況を調査しました。「あなたの会社・部署ではフリーアドレスを採用していますか?」と質問したところ、7割超の人が「固定席のみ」と回答。また「一部固定席ありのフリーアドレス」が約2割と、合わせて9割以上が固定席を基本とした働き方であることがわかりました。 感染症対策としてのフリーアドレスについては意見が分かれるところですが、メリットとデメリットを整理して考えてみましょう。まずデメリットは、デスクを複数のワーカーでシェアするため、感染リスクが高まるという考え方です。一方、メリットとしては、利用者が少ないエリアを選ぶなど、他者との距離、ソーシャルディスタンスをとることで密の回避ができることです。 オフィスの出社状況などによっても変わりますが、業務上やむを得ず出社しているケースなどでは、出社者が多い部署が偏る可能性があり、その部署だけ「密」の状態になる怖れがあります。一方、4月の第一波の時と異なり、個々人の感染対策への意識が定着し、マスクやアルコールなどの対策グッズも潤沢にあります。シェアするからこそ、デスクの使用前後で除菌を徹底するなど、自席以上に感染予防を意識するという行動変容も期待できます。 感染予防の面からオフィスの安全・安心を考えたとき、フリーアドレスという対策も運用しだいでは、固定席以上に効果的な対策です。オフィス出社率が高い企業・部署は特に、フリーアドレスを視野に入れる必要があるかもしれません。
オフィスに出社すると 業務の負担が増える
働く場所がオフィス以外になっても、互いにコミュニケーション取りながら仕事することに変わりはありません。元よりメールや電話を利用していたコミュニケーションに加えて、対面で行っていたコミュニケーションも、メールやチャット、電話といった遠隔ツールに置き換わったことで、出社しているワーカーがより負担を感じていることが見てきました。 テレワーカーとの業務で苦心していることを聞くと、「業務の相談」や「進捗確認」、「社外からの連絡」などコミュニケーションに関する項目が上位を占めました。どれも対面であればタイムリーにできていたコミュニケーションです。テレワーカー側であれば「ある程度しかたがない」と思えることも、オフィスにいるワーカーにとっては「今までできていたことができなくなった」との印象が強く、ストレスを感じているのかもしれません。 また、代表電話や固定電話があるオフィスではなおさらですが、出社しているワーカーがお客様やパートナーとの連絡役を担う機会が多くなってしまうのも事実です。仕事が中断される、集中力が切れる、効率的に仕事ができなくなるだけでなく、頻繁に発生すれば「自分だけ...」と不公平感を感じることもあります。 出社しているワーカーだけに負担が偏らないように、電話や郵便といった社外からの連絡について、運用面での工夫が必要になりそうです。
河内 律子(Kawachi Ritsuko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。