リサーチ

2021.04.28

テレワークで社員のエンゲージメント低下95.7%

テレワークのさらなる推進には課題克服が必須

テレワークの弊害にはコミュニケーション量の低下、モチベーションやエンゲージメントの低下がある。株式会社月刊総務は2020年10月に『モチベーションに関する調査』を実施。調査結果には、テレワーク環境における深刻な課題が映し出された。

新型コロナウイルスの影響で
長期化するテレワーク

新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークが急速に推進された。今までテレワークと無縁だった人が、この機に初めて経験したというケースも多く、慣れないオンラインや電話主体のコミュニケーションに、多くのビジネスパーソンが戸惑ったことだろう。

日本のビジネス界は元々、対面文化が根強く、デジタル化・オンライン化において先進的であるとは言い難かった。突然ビジネスシーンにおけるコミュニケーションの形が変化したことで、さまざまな問題が生じ、2020年5月に緊急事態宣言が全面解除された後もテレワークを継続してきた企業では、すでに半年以上という長期間にわたっているため、より問題が深刻化してきているとの指摘もある。

しかし、短期間での新型コロナ収束は考えにくいため、テレワーク推進は今後もしばらく続き、働き方改革として定着していくことが予測される。「問題があるからテレワークを止める」という判断よりも、問題を克服しながらテレワークを続けていく方向に舵を切るほうが、企業にとっても現実的であり、生産的であるといえる。




会社に行けない・会えないことが
社員のモチベーションに影響

『モチベーションに関する調査』では、新型コロナウイルス感染拡大以降、社員同士が会う機会が「減少した」という回答が9割以上にのぼった。忘年会や新年会、懇親会、入社式などの社内イベントはもちろん、社内研修さえも大幅に減少し、顔を合わせる機会が極端に減っている。

特に業務上でつながりのない社員同士は、電話やメール、チャットなどでコミュニケーションをする機会もほとんどないだろう。研修や社内イベントはオンラインでの開催に移行が進んでいるようだが、対面とは全く違った距離感になることは否めない。

「社員同士が顔を合わせる機会が減ることで、モチベーションに影響があると思うか」を聞くと、8割以上が「ある」と回答。対面コミュニケーションの減少は、業務上の弊害だけではなく、ビジネスパーソンの心理にもマイナスの影響を及ぼしていることがわかった。

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対面コミュニケーション減が
負の連鎖の始まり

テレワーク実施企業に対して、テレワーク下で会社の方向性を社員に伝えることができているかどうかを聞くと、約8割が「とても伝えにくくなった」「やや伝えにくくなった」と回答し、そのことによって、95.7%が社員のエンゲージメントが「とても低下している」「やや低下している」と感じていることがわかった。

フリーコメントには、「オンラインでは、問いかけへの反応が希薄になったり発言が減ったりするなど、受け身の社員が増え、本音が届きにくくなった」という声が寄せられていた。一般的に、オンラインでは「間が取りにくい」「相手の反応が読みにくい」など、モニター越しだからこその難しさはあるが、一足飛びでエンゲージメントが下がるとは考えにくく、コミュニケーションツールだけが問題ではないだろう。

95.7%もの人が実感しているエンゲージメントの低下には、社員のモチベーションの低下が影響していると考えられる。対面のコミュニケーションが減ることによって、会社の方向性や仕事の手応えなどが掴みにくくなり、社員のモチベーションが低下し、それがエンゲージメントの低下につながるという負の連鎖が起こっているのではないだろうか。「退社をする若手社員が増えた」という声もあり、かなり深刻な状況だ。

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今の課題感を未来に活かす
テレワークへの向き合い方

コロナ禍での長引くテレワークにより、社員同士の会う機会が減り、モチベーションやエンゲージメントの低下につながっていることは重大な課題として認識されている。

日々の会議や研修、社内イベントなどをオンラインで代替えすることで、顔を会わせる機会はつくれても、72.3%が「テレワークによって気軽なコミュニケーションが取りにくくなった」と回答しており、対面の気軽さや距離感にはかなわないという実感があるようだ。

この問題を克服するために、経営陣や会社全体を統括する立場にいる総務担当者には、テレワーク下でも社員の声を吸い上げて経営にフィードバックする取り組みや、対面以外のコミュニケーション手段を工夫するなど、試行錯誤しながらより有効な手段を確立してくことが求められる。

また、現場レベルでは、管理者の立場にいる人が、部下に対して今まで以上にきめ細やかなコミュニケーションやフォローを心がけることが必要になるだろう。

新型コロナウイルス影響下でのテレワーク推進は、誰も予測しなかった突然の変化だったこともあり、デメリットが一気に噴出した側面もある。長期的に見れば、多くの企業にとってテレワーク導入はスタートラインに立ったばかりなのだ。

テレワークは今後、ニューノーマルな働き方として普及・定着していく。こうした問題が顕在化してきたことは、改善すべき点が明確になったと前向きにとらえ、地道にステップアップしていくことが必要ではないだろうか。


【出典】株式会社月刊総務『モチベーションに関する調査』
作成/MANA-Biz編集部