リサーチ

2021.05.06

働き方に対する考え方を世界8か国で調査・比較

コロナ禍でも日本人は変化に対して慎重な姿勢?

新型コロナウイルスの拡大で仕事に対する姿勢や考え方はどう変わったのか。アデコグループは2020年5~6月『日常の再定義:新たな時代の働き方とは』と題してレポートを発表した。
※『日常の再定義:新たな時代の働き方とは』は世界8か国(日本・米国・英国・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オーストラリア)、各国1,000人(男性4,006人/女性3,994人)への調査レポート。

世界8か国で見られた
仕事に対する考え方の変化とは

暮らしや働き方に大きな変化を及ぼした新型コロナウイルス。日本では限られた企業でしか実施されていなかったリモートワークや時差出勤が推進され、大きなターニングポイントになった。

事業継続と感染対策の狭間で対応に苦労した企業や、経験したことがない働き方に戸惑ったビジネスパーソンも多いが、今後の働き方について実体験をもとに考えるための、貴重な経験になったといえる。

新型コロナウイルスの影響は、もちろん日本だけに留まるものではない。強制的なロックダウンが行われた国も少なくなく、「今までになかった働き方」を経験したビジネスパーソンは世界中で増え、海外のビジネスパーソンたちも、自分たちの暮らしや働き方に対する考え方が一変するような経験をした。

アデコグループが実施した世界8か国調査をもとに、世界のビジネスパーソンの意識変化や他国と日本に見られる差異についても紹介する。




リモートワーク環境で
フレキシビリティのレベルが向上

新型コロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウンや外出自粛の間、日本を含む世界中で在宅勤務が推進された。日本よりもリモートワークが進んでいる国においても、これほど長期にわたる在宅勤務を初めて体験したビジネスパーソンも少なくないはずだ。その期間にビジネスパーソンたちが体感した「変化」の一つにフレキシビリティが挙げられる。

日本を含む8か国すべての回答者に「仕事のスケジュールに対する個人の決定権」について聞くと、パンデミック前は「自分ですべて決定できる」と答えた人がわずか7%であったのに対して、パンデミック中は3倍に上昇。「完全に会社が決めている」という回答は45%から25%に減少した。

さらに50%の従業員が「パンデミックによってワークライフバランスが改善した」と回答。決定権を自分で持つことは仕事のスケジュールをフレキシブルに保つために重要だとして、75%が「将来手にしたい」と答えていた。仕事を自分の裁量で進められることは、「働きやすさ」という意味でも従業員にとって重要であるため、納得の結果といえる。

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経営者・経営幹部が
フレキシビリティの重要性を認識

興味深いのは、一般社員よりも経営者や経営幹部のほうが、フレキシビリティに対してメリットを感じていることだ。

下図の3項目(①雇用者はフレキシビリティが増したことでメリットを受ける/②企業はフレキシビリティを容認することでメリットを受ける/③働き方に対するフレキシビリティを高めることでより多くの人が仕事につけるようになる)において、回答者全体よりも経営層のほうが「YES」の回答が多かった。

フレキシビリティの向上は、社員の主体性や生産性の向上、人材確保面などでメリットが大きいといわれているが現状では一般社員よりも経営層のほうが、それらを強く認識していることが読み取れる。おそらく、新型コロナウイルス感染拡大による長期のリモートワーク実施によって、こうしたメリットに対して確信を強めた経営層も少なくないのではないだろうか。

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勤務形態や働き方への意識変化
他国と日本の違い

調査では74%が「オフィス勤務とテレワークのハイブリッド型が最適な勤務モデルである」、77%が「勤務場所を含めたより柔軟な働き方を求める」と回答。オフィスが果たす役割も活かしながら、より柔軟で新しい働き方に変化していくことを、多くのビジネスパーソンが求めていることがわかった。

しかしこの結果を国別に見てみると、日本は他国と比べて数値が低い傾向がある。対面文化が根強く、新型コロナ影響下でデジタル化・オンライン化の遅れも指摘された日本においては、約6割がハイブリッドな勤務モデルや柔軟な働き方に肯定的であること自体が、じゅうぶんに大きな変化ともいえるかもしれないが、他国と比較すると心もとない数値だ。

デジタル化・オンライン化の遅れなど、柔軟な働き方への準備がじゅうぶんに整っていないことや、変化やデメリットに対して慎重な国民性も影響しているのかもしれない。

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働き方の変化は世界で加速
日本は追いつけるか

リモートワーク推進を含む働き方改革、デジタル化・オンライン化などは以前から始まっていたが、新型コロナウイルス感染拡大によって一気に加速したといえる。そして、それらが日本よりも進んでいた他国のビジネスパーソンにも、パンデミックが起爆剤になったという感覚があるようだ。

新型コロナウイルスを機に「会社に行かなくても仕事はできる」と知ったビジネスパーソンは多く、通勤のロスタイムがなくなる、ワークライフバランスが向上するなど、暮らしへのメリットを体感した人も多い。

企業にとっても、新しい働き方を継続・定着させていくための課題を見出す貴重な機会となり、既に先進的だった企業では、新しい働き方が「通用する」ことを確認し、自信を持つことができたのではないだろうか。

強制的なロックダウンや外出自粛要請によって急加速したリモートワークであるが、そもそも「持続可能な将来の働き方」として以前から望まれていた。

日本は他国と比較すると「新しい働き方」に対して消極的な結果が出ていたが、元々進んでいた他国がさらに変化に対する意欲を高めた今、停滞・後退は好ましくない。グローバル化の世の中においては、働き方の変化に二の足を踏むことが、日本経済の発展の足枷となる可能性も否定できないので、もう一歩進んだ意識改革が望まれる。


【出典】アデコグループ『日常の再定義:新たな時代の働き方とは』
作成/MANA-Biz編集部