リサーチ
外国人を雇用する企業の心得
人材獲得のためのポイントは?
※『第2回理系外国人留学生の会社選びとキャリアプランに関するアンケート』は2020年10月~11月、外国人留学生就職情報サイト『リュウカツ®』を運営する株式会社オリジネーターが実施。
高まる外国人労働者へのニーズ
少子高齢化が進む日本では、遠くない将来には深刻な労働力不足が予測されている。そのなかで年々高まっているのが、外国人労働者に対するニーズだ。外国人労働者というと、コンビニなどの小売店、運送業、工事現場、介護の現場など、現時点で特に労働力不足が深刻な場で求められている印象が強いかもしれないが、労働力不足は今後さまざまな業種・職種に拡大していくことが予測されるし、優秀な外国人留学生を企業の中枢に抜擢したいという流れもある。
現在は新型コロナウイルスの影響下で諸外国との往来が難しい状況にあり、グローバルな採用や留学に一時的な歯止めがかかっている状況であるが、グローバル化が完全にストップするようなことはないだろう。また、日本における人材不足は深刻で、もう外国人労働者は日本の社会にとって「なくてはならない存在」になりつつある。外国人労働者へのニーズは、緩急こそあれ今後も高まっていくと推察され、限られた外国人人材を獲得するために、今まで以上の企業努力が必要な時代になってきている。外国人労働者の雇用を実現するにあたって企業がおさえるべきポイントを、『第2回 理系外国人留学生の会社選びとキャリアプランに関するアンケート』をもとに読み解いていく。
理系外国人留学生が 企業選びで重視すること
就職企業を選ぶ際に重視するポイントを聞くと、「給与水準が高い」が最多。「福利厚生が充実している」や「業績が安定している」なども上位にランクインしており、条件の良い職場で安定して働きたいと考える留学生が多いことがわかった。
2位は1位と僅差で「グローバルに仕事ができる」。海外に留学して、海外で働くからには、就職してもグローバルに活躍したいという希望を持つのは、ごく自然なことといえる。企業は、不足した労働力の補填のような形で外国人の採用を考えるのではなく、その人の特性やスキルが活きるようなポジションをきちんと用意することで、貴重な人材の確保に一歩近づくのではないだろうか。語学や他文化に精通している外国人労働者は、企業にとっても大きな戦力になるため、ぜひ活かしたいところだ。
3位の「職場環境や社風が合う」には、少し注意が必要。国籍を問わずビジネスパーソンなら誰もが望むことであるが、そもそもの文化が違うため、日本企業が正とすることと、相手にとって居心地が良いことは、まったく別物である可能性がある。相手の立場や目線で考えることや、寛容に受け入れる姿勢が、従来以上に大事になるかもしれない。
外国人労働者にも 昇給・昇進のチャンスを
日本で就職するにあたって不安なことを聞くと、「外国人だと昇給・昇進ができない」が半数以上の回答を集めて1位。現状の実態は企業にもよるだろうが、過半数の留学生が不安に感じていることであり、早期に見直しが必要な内容といえる。
外国人労働者と日本人労働者の間で、与えられるチャンスや待遇に差があるのは好ましくない。グローバル社会では、「日本人だから」、「外国人だから」ではなく、「一人ひとりを1ビジネスパーソンとして見る」という新しい視点が必要になるだろう。すでにその準備が整っている企業は、その強みを積極的にPRして外国人留学生の不安を払拭することで、人材確保のチャンスが増えるかもしれない。
日本語やビジネスマナーに自信がないという人も多いので、研修制度を充実させることも安心材料になりそうだ。「残業が多い」、「有給休暇が取りにくい」などは、日本人労働者目線でも是正が必要と認識されているが、まだ海外と同じ基準の感覚に達しているとは考えにくいため、本腰を入れて取り組まなければならない。「転勤」や「ジョブローテーション」に不安を抱く人もいるため、ジョブ型雇用の推進なども外国人労働者の確保につながるかもしれない。
外国人労働者の確保と 良好な雇用関係構築のために
外国人留学生は、グローバルな視野を持っている。母国と日本、両方の文化・慣習や国民性に対する造詣、語学力、そして日本人とは異なる発想ができるなど、魅力的な要素が多く、企業にとっても戦力や起爆剤になってくれる存在だ。ただ、外国人労働者へのニーズが高まっている一方で、人材が豊富というわけではないので、企業間で争奪戦になることも予測される。おそらく、外国人留学生が抱く不安を積極的に解消したり、できるだけ彼らの望む形で受け入れ態勢を整えたりすることができる企業が、優秀な人材を勝ち取れることになるだろう。
調査では32.7%の留学生が、「日本の企業に就職した場合、一社で10年以上働きたい」と回答していた。これは新型コロナウイルスの影響もあってか、前年の調査より5.1ptアップしている。日本の企業に採用され、「この企業に就職して良かった」と思えたら、長く貢献する意思のある留学生は多い。この意欲に応え、優秀な人材を確保するためには、ミスマッチがないようにきめ細やかなすり合わせを行う、日本人労働者との待遇の差を是正する、互いの文化の違いを理解・受容する、研修態勢を整えるなどの施策が必要であるし、それを成し遂げてこそ、国籍を越えた良好な雇用関係が築けるのではないだろうか。