リサーチ
コロナ禍でも高まる、企業の採用意欲
一歩先を見すえた採用の重要性
※『マイナビ人材ニーズ調査』は2020年12月、株式会社マイナビが、人材採用に関して採用実施・手法選定・雇用の決定のいずれかの決裁権を持つ採用担当者を対象に実施。
コロナ影響下で広がる 雇用への不安
新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響は深刻で、経営難に苦しむ企業、収入減に苦しむワーカー、就職活動を進められない学生、再就職の希望が持てない失業者など、暗いニュースが後を絶たず、新型コロナウイルスの収束や経済再建の見通しが立たない。 そのなかで、特に不安視されているのが雇用の問題だ。経済の低迷による失業者の増加が予測される一方で、雇用が落ち込めば再就職の門戸が狭くなり、さらに深刻な状況になる。 今後の採用活動について、企業はどのように考えているのだろうか。株式会社マイナビが、新型コロナウイルス感染拡大第3波の最中2020年12月に実施した『マイナビ人材ニーズ調査』には、意外な結果があらわれていた。
2021年の採用は増加傾向
「2020年に一人でも働き始めた人がいるか」と、雇用形態別の採用状況を聞くと、「正社員(中途採用)」が最も高く、次いで「正社員(新卒採用)」。2019年の調査結果と比較すると、正社員はほぼ横ばい、非正社員は減少している。 2020年は時短要請や経営状態の悪化により、事業の縮小を余儀なくされた企業も多く、アルバイト・パートや派遣社員の雇い止めなどが話題となり、それは非正社員の減少という形で数字にも反映されていた。一方、正社員の採用では大きな落ち込みが見られなかった。さらに、中途社員の雇用実績が最も高いことから、感染拡大後も中途採用を積極的に進めていた企業が意外に多かったことが読み取れた。 興味深いのは、すべての雇用形態で2021年の採用予定数が2020年より増加していること。新型コロナウイルスの影響で先行きが不透明な状態でも、来年に向けた採用意欲は正社員・非正社員にかかわらず高いことがわかった。
企業は長期視点で採用に積極的
2020年に非正社員(契約社員・嘱託社員、パート・アルバイト、派遣社員)の採用が減った要因としては、人手不足が一時的に解消したことが考えられる。 非正社員の採用理由を雇用形態別に見ると、2019年、2020年ともに「慢性的な人手不足」が最も高い。しかし、その数値を比較すると、2020年の方がいずれの雇用形態でも減少している。慢性的な人手不足状態であることにかわりはないが、感染拡大で通常業務が行えなくなったことで、人手不足が一時的にでも解消し、非正社員の採用が鈍化したと推察される。 一方、新卒採用の採用理由では、「事前の計画による定期的な採用(38.3%)」が最も高く、中途採用では「専門能力や技術を持つ人材の獲得(47.4%)」が高かった。 新卒採用は、新型コロナ感染拡大前に内定が決まっていたため、計画どおりに採用するケースが多かったと思われるが、中途採用への意欲も前年度レベルを維持していた。さらに、収束の見通しが立たない現在でも、企業は新卒・中途ともに採用意欲を失っていない。「定期的な採用」や「優秀な人材の獲得」は、非常時でも滞りなく進めたいとする企業の採用姿勢のあらわれだ。
採用コストは減少傾向
採用コストの増減を聞くと、2019年度と「変わらない」がすべての雇用形態で最多。しかし一方で、すべての雇用形態で「前年より増えている」が減少し、「前年より減っている」が増加している。新型コロナウイルス影響下で、説明会やイベントが中止、もしくはオンライン化したことで、図らずもコストダウンにつながったと考えられる。 また、この1年間で採用時の基本給を上げたかを聞くと、すべての雇用形態で前年より減少。2020年は前年より採用にコストがかからず、また買い手市場だったこともあり、採用目標達成を目的とした基本給のつり上げも少なかったということだ。 おそらく今後、採用活動のオンライン化はますます進むと予測される。対面からオンラインへと採用方法が変われば「人材の見極め」という点で課題が出てくるだろう。ただ、オンライン化により遠方の優秀人材へのアプローチが容易になるなど、コストダウン以外のメリットも大きそうだ。
苦境を乗り越え、 その先の発展のために
調査から2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、慢性的な人手不足に一時的なストップがかかり、非正社員の採用が減少していることが読み取れた。 また、すでに雇用されていた非正社員においても、経営悪化による契約打ち切りなどで、全体的に企業が雇用する非正社員の数は減少している。 しかし、慢性的な人手不足が解消されたわけではない。収束まで数年単位の時間がかかるとも言われているなかで、withコロナ時代を生き抜くためにも、また、さらなる企業の成長・発展を考えれば、この苦しい時期も人材採用をおろそかにはできない。 長期視点で将来を見すえている企業は、この苦境の時期にも採用意欲を失わず、オンライン化によるコスト削減や新たな可能性を好機ととらえているのではないだろうか。一方で、人員削減を進めている企業は、たとえ今を耐えられたとしても、いずれは人材不足という深刻な課題に直面することが予測される。ますます、人材獲得競争において格差が広がることが予見される。
【出典】株式会社マイナビ 『マイナビ 人材ニーズ調査』