リサーチ

2021.06.28

会話と雑談の不足で7割以上が心的不調

テレワーク時代のメンタルケア

働き方だけではなく暮らしや健康管理のあり方をも急速に変化させた新型コロナウイルス。『週5日テレワーク勤務する会社員と健康管理』のアンケート調査の結果から、テレワーク下での健康管理について考察する。
※『週5日テレワーク勤務する会社員と健康管理』のアンケート調査は2020年12月に株式会社イーヤスが東京在住でテレワーク勤務をしている会社員110人に実施。

テレワークで心的ストレスが増加

新型コロナウイルスによるテレワーク推進や外出自粛によって、深刻化している課題が「孤独」と「孤立」。人と接する機会が減ることで、メンタルへの影響が懸念されている。

日本国内では、2020年の自殺率が11年ぶりに増加に転じ、新型コロナウイルスによる「孤独」と「孤立」との関係が深いのではないかと懸念されている。2021年2月には、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」が設置され、坂本哲志少子化相が担当相に任命されたことでも話題となった。

社内でのコミュニケーションはストレスの原因になることも多く、近年は、会社の飲み会や社員同士のプライベートな会話を好まない風潮も高まっている。会社だけと割り切り、仕事に関係のない会話はしたくないというワーカーも多くなっているように感じる。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大によるテレワークの長期化で、コミュニケーションが大幅に制限された今、コミュニケーション不足から孤独や孤立を感じ、心的ストレスに悩む人が急増しているという。




「会話」「雑談」の減少で
不安や孤立感が増大

『週5日テレワーク勤務する会社員と健康管理』のアンケート調査によると、出社時と比べて「会話」や「雑談」をする時間が減ったという回答が70.9%。ワーカーにとって、会話・雑談の多くが、オフィスで行われていいたことがわかる。

会話・雑談が「減った」と回答した層に、減ったことによる影響を聞くと、「ちょっとした不安(39.7%)」「孤立感が増えた(37.2%)」「寂しさが増えた(25.6%)」が上位にきた。会話や雑談の減少が、メンタルの不調につながっていることがわかる。また「気分の落ち込み(23.1%)」もあることから、仕事に影響する可能性も大いにあり、メンタルケアの必要性を感じさせる。

また、「チャットで意図を汲むことでの疲れ」との回答からは、慣れないネットミュニケーションに苦心している状況が読み取れる。対面とは勝手が違うコミュニケーションそのものがワーカーのストレスになることを防ぐためには、コミュニケーション方法の確立や、ネットに特化したコミュニケーションスキルの向上も求められる。

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運動不足も
メンタル不調の要因に

テレワーク下での課題には運動不足もある。毎日決まった時間に起きて、自宅と会社を行き来するという行為は、それ自体が一定の運動になり、生活のリズムを整える役割もあったが、テレワーク下ではそれがなくなってしまう。

調査では70.9%が、出社時と比べてテレワークでは体を動かす機会が「減った」と回答。運動不足が影響して、「肩こり、首のこり」「肥満」といった身体的な不調を感じている人が多く、4人に1人が「気分の落ち込み」というメンタル面への影響も感じている。

また、「眠気が多い」「慢性的な疲れ」など、メンタル不調につながりやすい身体的不調が多いのも気がかりだ。

テレワーク下では、意識的に生活のリズムを整える、運動をする機会を積極的につくるなど、出社時以上に、個々人での健康管理が重要になりそうだ。

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働き方の変化にあわせて
心身のケア方法もアップデートを

今、ワーカーの不安感が高まっているのは、外出自粛でストレス発散ができない、経済状況の悪化で今後の生活が不安など、新型コロナウイルスが最大の不安要素であることは間違いない。しかし、たとえ新型コロナウイルスが収束したとしても、テレワークそのものによるメンタルへの影響は継続するだろう。

新型コロナウイルス感染拡大によって、テレワークを急遽導入した企業も多いが、準備が不十分だったことで、数々の問題が顕在化している。社員のメンタル不調もその一つで、テレワークが推進されれば遅かれ早かれ直面する課題だ。新型コロナウイルスによってその時期が早まり、参考にする好事例がないなかで、現状は各企業が自ら対策をひねり出さなければならない。

環境の変化によってメンタルが左右され、体調にも影響を及ぼすのは、人間として自然なこと。働く環境や働き方が変わると、個々人としては気持ちの切り替えが必要で、企業としては社員の健康管理の方法を見直す必要がある。

調査結果から、テレワークで多くの業務が個人ワークになることが、メンタル不調に強く影響していることが明らかになった今、従来の健康管理だけでは不十分だ。テレワークという働き方そのものを「心と身体の健康」という視点から、ケア・改善していく必要がある。 また、ケア・改善のポイントがコミュニケーションであることを調査結果が示している。「心と身体の健康」という視点をふまえた、新しいコミュニケーションのあり方を考えていく必要もあるだろう。


【出典】株式会社イーヤス 『週5日テレワーク勤務する会社員と健康管理』のアンケート調査
作成/MANA-Biz編集部