リサーチ
企業の課題解決には、オフィス環境とDXが重要
DXへの期待は高いが理解が進まず、弊害を不安視する声も
近年はITや先端技術を活用してオフィスのデジタル化やDXを推進する企業が増えている。コクヨ株式会社が実施した調査結果をもとに、DXを含む「オフィスの変化」に対するワーカーの関心や、課題解決との関連性、今後の可能性を読み解く。
課題解決の施策は オフィス環境の改善から
組織に属して働いていると、さまざまな課題と直面します。それは組織や企業の内部から発生する場合もあれば、新型コロナウイルス感染症の拡大で、働き方もオフィス環境も大きく変わらざるを得なかったように、社会の変化という外部要素がもたらす課題もあります。企業やワーカーは、次々と出てくる新しい課題に、対応していかなければなりません。 課題を解決するためには、大きく分けて2種類の対策が考えられます。
- ・制度やルールの策定・改変
- ・オフィス環境の見直し
DXは課題解決の新たな秘策となるのか
経済産業省が発表している「DX推進ガイドライン」によると、DXは下記のように定義されています。
オフィスのDX推進による期待と不安
DX推進に期待する内容では「時短」に関する項目が総じて高く、DXの利点としては業務効率化のイメージが強いようです。一方、仕事中の会話や質問・相談が減るなどコミュニケーションにかかわる項目では、不安の値の方が高く出ました。 コロナ禍で利用率が急激に高まったWEBミーティングは、雑談や本音の会話が減るといった問題が多いことが過去の調査からもわかっています。DXでネット上のコミュニケーション促進が期待される一方で、対面コミュニケーションの減少による弊害が不安視すされるのは、当然の結果といえるでしょう。また、「これまでの仕事の仕方が通用しなくなる」との不安感が26.5%と最も高くなっている背景には、ITやAIによる仕事の代替えへの不安があるのかもしれません。
DX推進の可能性
DX推進に対して、不安より期待のほうが高いものの、現状は日常業務での改善にとどまっており、さらなる推進のためには、DXへのより深い理解が必要です。 業務の改善や効率化以外にも、部署間コミュニケーション、キャリアアップ、イノベーション、ダイバーシティ、SDGs、リカレント教育など、活用場面は多々あるはずですが、DXの可能性を知らないだけでなく、逆に業務を奪われかねないとの危機感を抱いている企業やワーカーも少なくないでしょう。ただし、労働力不足や国際競争力の点などからも、DXの活用は今後ますますさけては通れない課題になっていくでしょう。 コロナ禍の追い風を受けてデジタル化やDXへの関心や期待が高まっている今、DXの可能性を狭めずに幅広い視野をもつことが大切ではないでしょうか。
実施日:2021.5.18-20実施
調査対象:社員数500人以上の民間企業に勤めるワーカー
ツール:WEBアンケート
【図版出典】Small Survey「オフィスの変化」
河内 律子(Kawachi Ritsuko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。