リサーチ
ビジネスシーンでの感染症対策意識に温度差
対策の徹底が信頼に繋がる
新型コロナウイルス感染拡大が長期化するなか、感染症対策意識の違いは、ときに大きな不信感のもとになる。『ビジネスシーンにおける新型コロナウイルス感染症対策意識に関する調査』の結果から、対策の重要性とポイントを解説する。
※『ビジネスシーンにおける新型コロナウイルス感染症対策意識に関する調査』は2021年3月に株式会社スペースマーケットが、10代から60代の有識者1,085人を対象に実施。
感染症対策意識の温度差
新型コロナウイルス感染症対策に対する個々の意識や取り組みに温度差があることは、感染拡大初期から問題視されていたが、1年強が経過してコロナ慣れやコロナ疲れが出てきた今、ますます顕著になっている。プライベートでも難しい問題であるが、特にビジネスシーンでは、個人の意識に加え、企業の方針にも左右されるため、すり合わせが難しい部分がある。 調査では8割以上が、仕事で会う相手の感染症対策実施状況が「気になる」と回答。「気にならない」は12.6%に留まった。また、6割以上は、相手が普段どのような感染症対策をしているか「知りたい」と回答した。
感染症対策の実態、 相手に確認できない
仕事で会う相手の感染症対策実施状況が、「気になる」8割以上、「知りたい」6割以上である一方で、会う前に相手に確認している人は54.1%と数値が下がる。 事前確認をしていない理由は、「適切な確認方法がわからないから」「失礼なことを指摘できる関係性ではないから」「疑っていると思われたくないから」など。プライベートであれば、親しい間柄の相手には気軽に聞くことができるし、何気ない会話のなかから察することもできる。しかし、ビジネスシーンではそれが難しい。感染症対策について確認することは「失礼」や「相手を疑うこと」にあたるとして、聞きたくても聞けないワーカーが多いと考えられる。
意識が低いと感じても 指摘するのは難しい
ビジネスシーンにおいて相手の感染症対策意識が低いと感じたとき、「指摘したことがある」は24.9%、「指摘したことがない」が66.5%だった。感染症対策実施状況の事前確認と同様、ビジネスシーンでは特に言いづらい現状がありそうだが、一方で4人に1人が指摘していることに、意外と多い印象も受ける。 ただし、指摘できるかどうかは、相手との関係性次第でもある。発注側なのか受注側なのか、上司(先輩)なのか部下(後輩)なのかなど、立場や力関係によっても、難しさが変わってくるのではないだろうか。
ビジネスシーンにおける 感染症対策のポイント
調査では、企業としての感染症対策への意識の低さよりも、ワーカー個人の意識に課題があることも見えてきた。 感染症対策意識が低いと感じる理由の上位は、1位「鼻をマスクで隠さない(50.5%)」、2位「食事後にマスクを付けずに話す(35.2%)」、3位「大人数での会食や外出をしている(33.4%)」。 3位は企業や組織として対処すべきであり、個人が抵抗を感じていても断りづらいケースも予想できるが、1位と2位は個人レベルの対策であり、常に意識しておくのが良策だろう。4位「大声で話す(31.5%)」、5位「距離感が近い(29.7%)」、6位「手指消毒をしない(26.5%)」などについても同様。
対策徹底が信頼に繋がる
新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、感染症対策意識の温度差は、これまで築いてきた人間関係を危うくする可能性をはらんでいる。ビジネスシーンにおいては、気になっていても「言いにくい」「聞きにくい」といったハードルがあるため、より難しい。 しかし裏を返せば、この時勢では「感染症対策をしっかり実施している」ことが、大きな信頼に繋がることもある。万が一「やりすぎだ」と揶揄されることがあったとしても、対策が甘いことで信頼を失うよりは、はるかに良いのではないだろうか。 調査では、事前確認や指摘の有無は別として、8割以上の人が相手の感染症対策実施状況が「気になる」と回答しており、感染症対策の徹底が裏目にでるケースは、そう多くはないだろう。 会食や外出の実施頻度、狭い会議室で大人数の会議設定などは、組織の方針、職種・業種、オフィス事情などにも起因するため、企業や組織としての取り組みが必須になる。一方で、マスクの着用や消毒の徹底などワーカー個人ができる対策も多い。ビジネスシーンでは会社の代表としての意識をもち、いつも以上に感染症対策に気を配ることが大切になりそうだ。
【出典】株式会社スペースマーケット『ビジネスシーンにおける新型コロナウイルス感染症対策意識に関する調査』