リサーチ

2021.09.13

週休3日制、約9割が「利用したい」

ライフの充実やスキルアップの時間にあてる

新型コロナウイルス感染防止対策として一部企業で採用された「週休3日制」が、働き方改革の一環としても注目されている。『週休3日制に関する調査』の結果から、現状と展望を考察する。
※『週休3日制に関する調査』に関する調査は、株式会社学情が2021年3~4月に、20代専門の転職サイト「Re就活」への来訪者に対して実施。有効回答数は494名(20代)。

週休3日制の概要

「選択的週休3日制」は、ワーカーが希望すれば週3日の休日をとれる制度。働き方改革における「多様な働き方」を実現するための施策の一つだが、新型コロナウイルス感染防止対策として、オフィスの出社人数を削減するための策として、「週休3日制」を導入する企業が増えている。

コロナの追い風も受けて導入促進の議論が加速し、2021年4月には自民党の一億総活躍推進本部が政府に提言。加藤勝信官房長官は、同年同月に行われた記者会見で、「育児や介護、闘病など、生活と仕事を両立させる観点からも多様な働き方の推進が重要だ」として、導入に向けた中間提言をまとめる意向が示された。




週休3日制のメリット・デメリット

週休3日制には、以下のようなメリット・デメリットがあるといわれている。

〈メリット〉

  • ・コロナ禍における出勤者の抑制(感染防止対策)
  • ・育児や介護との両立、家族と過ごす時間や、プライベートを楽しむ時間の増大
  • ・柔軟な働き方の実現
  • ・短時間で集中的に仕事をすることによる、生産性の向上

〈デメリット〉
  • ・給与減少
  • ・勤務日数は減っても仕事の量は変わらず、出勤日の残業が増える
  • ・コミュニケーションロスが生まれる
  • ・作業効率の悪化




週休3日でも給与は維持したい

調査によると、週休3日制について、「給与が維持されるなら利用したい」と回答したワーカーが7割近くにのぼった。利用そのものについては、おおむね前向きな印象だが、大半は「給与維持」を条件としている。

一方で、「給与が減っても利用したい」という意見も2割強あった。育児や介護といった局面を迎えたときに、退職や転職をするよりも、給与が減っても現在の職場で勤めたいというワーカーは、決して少なくないだろう。

〈利用したい理由 自由回答〉

  • ・「リフレッシュする時間を確保できれば、より効率的に働くことができそう」
  • ・「ライフステージに変化があっても、働き続けることができそう」
  • ・「副業や資格の勉強などに時間を使えそう」

〈利用したくない理由 自由回答〉
  • ・「給与や賞与カットにつながるのであれば利用したくない」
  • ・「20代は、仕事を覚えたり、スキルを習得する期間だと思う。将来的には利用を検討したいものの、今は積極的に利用しようとは思わない」

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週休3日制の利用目的

週休3日制が導入されたら取り組みたいことでは、「趣味など自分の時間の確保(66.0%)」が1位。次いで「資格取得やスキルアップのための勉強(58.1%)」の2位に、「家族や友人との時間の充実(3位)」、「Wスクールや大学院などでの学び直し(5位)」と続く。これまでの働き方では、時間的拘束や多忙などが理由から、やりたくてもできなかったコトにチャレンジしたい、という期待感が見てとれる。

一方で、テレワークの実施により注目が高まっている副業やインターンシップに取り組みたいという回答は、約3割に留まっている。副業は柔軟な働き方の一つとして国も推進しているが、トータルの労働時間などの負担を考えると、まだ現実的とはいえない状況なのかもしれない。


しかし、週休3日制が採用されれば、副業の実現を視野に入れるワーカーが増えるかもしれない。コロナ禍のような有事のリスク軽減・分散策としても、副業は注目されているので、体制さえ整えば積極的になるワーカーも少なくないだろうか。

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週休3日制導入企業への印象

導入している企業はまだ少ないが、週休3日制を導入する企業に対して、ワーカーは良いイメージを持っている。
「柔軟な働き方ができそう(60.7%)」が圧倒的最多で、「ライフステージに変化があっても働き続けることができそう(34.4%)」が続く。出産・育児、介護など、女性のキャリアを阻む壁を打破するためにも、また近年、多くのワーカーが重視しているワークライフバランス確立のためにも、週休3日制の導入は有効であると考えられる。

4位の「生産性が高く効率的に働けそう(28.5%)」には、仕事に対する意識の変化が表れている。日本企業では長い間、長時間労働が当たり前で、そうした働き方によって飛躍的に成長した側面もあるため、時間や労力を注いでこそ生産性が上がると考えられていた。
しかし、その考え方は、もう古くなっている。不毛な時間を費やすよりも、短い時間で成果をあげること、効率化を図ることが重視されつつある。テレワークで社員の就業時間や業務の過程が把握しづらくなれば、そう遠くない将来に、就労時間よりも成果で評価される時代が来のではないだろうか。

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週休3日制は
ワーカーの多彩なニーズを叶える

週休3日制は、新型コロナウイルス感染拡大という不測の事態によって、突如注目され始めた制度であり、国が意欲を見せているといっても、まだ「提言」の段階にある。実際に導入している企業は、極めて少ないと言わざるを得ないだろう。

しかし、「時短」や「フレックス」、「リモートワーク(テレワーク)」などに次ぐ、柔軟な働き方を推進するための施策として、これから注目を浴びていくのではないだろうか。

給与への不安が拭えないという現状はあるものの、給与が減っても週休3日制を利用したいワーカーはいる。育児や介護といった人生の重要な局面で仕事を諦めないための選択肢になるとともに、ワークライフバランス、スキルアップ、副業との両立など、多彩なニーズに応えるための施策としても有効だ。

企業にとっては、週休3日制の導入による労働力の低下が懸念されるだろう。しかし、柔軟な働き方が広がれば他企業と優秀な人材をシェアすることも可能になる。時間管理を徹底することによって、生産性の向上にもつながるのではないだろうか。
労働力不足の深刻化が予測されているなか、これからの時代は企業にもメリットのほうが大きくなると考えられるため、今後の動向を注視したい。


【出典】株式会社学情 『週休3日制に関する調査』
作成/MANA-Biz編集部