リサーチ
ジェンダーギャップ解消の本質的な課題とは
男女の役割分担意識からの脱却が重要
世界各国と比較して課題視される日本のジェンダーギャップ。『職場のジェンダーハラスメントについてのアンケート調査』の結果から、ジェンダーギャップ解消に向けての課題や打開策を検討する。
※『職場のジェンダーハラスメントについてのアンケート調査』は2021年2月に、株式会社ワークポートが同社サービスを利用している全国の転職希望者(20~40代の男女)を対象に実施。
世界に指摘される 日本の「男女格差」
日本におけるジェンダー平等の遅れが世界から指摘されている。2019年12月に発表されたグローバル・ジェンダー・ギャップ指数 (※1) をみると、日本は153か国中121位、G7で最下位。2021年3月31日発表分では156か国120位と停滞し、G7でも引き続き最下位だった。 日本の数値を著しく下げている要因は、「政治」と「経済」分野での低迷だ。政治分野では女性議員や閣僚の少なさ、経済分野では女性管理職の登用が進んでいないことが、日本のジェンダー平等の足を引っ張っているといわれている。
※1:グローバル・ジェンダー・ギャップ指数とは、2006年から世界経済フォーラムで公表されている、世界各国の男女間の不均衡を示す指標
職場で「男女平等」を感じているのは5割
調査によると、現在(直近)の勤務先が男女平等であると「感じる」「感じない」の割合がおよそ半々。職場でダイバーシティ推進や男女平等に繋がる取り組みがされているかどうかについては、「はい」は2割に留まり、4割以上が「いいえ」という結果だった。日本国内で男女平等や女性の社会進出が推進されて久しいが、令和になってもこの実態である。
日本企業の現状 進まない女性役員の登用
調査では、現在(直近)の勤務先の現状について、以下のような声が挙げられた。
具体的な取り組み
「男女問わず育児休暇、子どものための休暇の認可、推進」(20代・男性・事務アシスタント) 「昇進・昇給の評価が平等。ハラスメントに対する処罰内容がハッキリしている」(20代・女性・システムエンジニア) 「LGBT支援団体を招いての講演・ワークショップ」(20代・女性・企画、マーケティング)
取り組んでほしいこと
「女性役員をもう少し増やし、女性にお茶汲みなど昭和的な価値観を押しつけないでほしい」(30代・男性・事務アシスタント) 「男性の育児休暇取得の推進」(30代・女性・クリエイター) 「産休をとると役職が降格になるのをやめてほしい」(30代・女性・クリエイター)
平等な昇給・昇進のチャンスやハラスメント対策などは進んできているが、「女性役員登用」については進んでいない印象。2003年6月20日、内閣府男女共同参画推進本部が、2020年までに女性管理職の比率を30%にする目標を掲げたが、国際労働機関(ILO)の2018年度調査によると、世界平均27.1%に対して、日本はわずか12%だった。 意識改革の問題もあるが、一番の課題は、女性が管理職として活躍しやすい、活躍したいと思える環境が整っていないこと。「産休をとると役職が降格になる」などは最たる例で、表面上は平等にチャンスが与えられていても、実際には女性が男性並に活躍するのは難しい状況があるのではないだろうか。男女両方に見られる ジェンダーハラスメント
職場におけるジェンダーハラスメントは、対女性で28.5%、対男性で21.8%「見たことがある」という結果。女性にフォーカスされることが多いが、男性にもジェンダーハラスメントは存在し、その差は大きくない。女性の活躍推進という名目のもと、逆に男性が不利益を感じる場面もあるようだ。また、日本の企業で女性が活躍しにくい最大の要因は、「男だから」「女だから」という固定的な性別役割分担意識が、職場でも家庭でも根強いことだろう。
女性に対するハラスメント
性別による役職や業務の制限、女性に対する固定観念の押しつけ。 「産休から復帰し時短勤務になる女性は強制的に契約社員にさせられていた」(30代・女性・クリエイター) 「女のくせにやかましい、黙って従えといった発言」(40代・女性・接客販売) 「性別による昇格試験の結果の差」(20代・女性・その他) 「未婚の女性を複数人でバカにして笑いものにする」(40代・女性・建築土木)
男性に対するハラスメント
女性への配慮を優先したしわ寄せ、男性に対する固定観念の押しつけ。 「育休取得、時差出勤の不許可」(30代・男性・教育) 「女性の上司が男のくせにナヨナヨして、と陰口を言っていた」(30代・女性・営業) 「女性ばかりひいきされている」(40代・男性・営業) 「男性は重い荷物を自主的に運ばなくてはならない」(20代・女性・接客販売)
真の男女平等、 ダイバーシティとは何か
そもそもの障壁は、「男は」「女は」という性別役割分担意識が根強いこと。育休取得はもちろん、育児中の時短勤務も、男性に認められていいはずだ。男性が家庭に貢献しやすくなれば、女性も社会で活躍しやすくなる。従来の男女の役割分担意識を取り払って、仕事でも家庭でもプライベートでも男女に等しく機会を与えられることが、真の男女平等、ひいては女性の活躍推進の突破口になるのではないだろうか。 男女、国籍など、ダイバーシティは、日本社会における根深い課題。調査では「転職するならダイバーシティ推進に力を入れている企業に転職したい」が84.8%を占めた。近年は男女ともにさまざまな選択肢があり、性別による制限をなくそうとする動きも目立つ。ただ現状としては、ハラスメントや男女差が根強く、進んでいるとは言い難い状況にある。本質的な問題を見極めた男女平等・ダイバーシティの推進が、これからの企業に求められる。
【出典】株式会社ワークポート『職場のジェンダーハラスメントについてのアンケート調査』