リサーチ
SDGsの認知は5割以下。2030年に向けて社員の理解促進が急務
SDGsの実践以上に求められる企業内での情報共有
国際社会の共通目標であるSDGs。企業のHPや名刺にSDGsのアイコンを見かけることも増え、ビジネスシーンでも認知度の高まりを感じるが、その実態はどうなのだろうか。コクヨ株式会社が実施した調査結果をもとに考察する。
SDGsの認知度
SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」は、2015年9月の国連サミットで採択されました。2016年から2030年の15年間で達成するために、17の目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。 予備調査ではSDGsについて理解している人は44.5%と半数以下であることがわかりました。 SDGsの認知が拡がり始めたきっかけには、「TV番組」を挙げたワーカーが多く、次いで、プラスチックストローの廃止やレジ袋の有料化など。日々の生活に密着した場面で進むSDGsの取り組みが、個人とSDGsの初期接点になっているようです。 ただし、SDGsを理解しているのは44.5%であるとの予備調査をふまえると、コンビニやスーパーなどでレジ袋の有料化を目の当たりにしていても、その目的が持続可能な社会に向けたSDGsの取り組みの一つだということを知らない人がとても多いことが推察されます。
日本企業のSDGsの現状
そもそもSDGsは、国や国際機関だけではなく、すべての組織や市民にとっての目標であり、企業も当然そこに含まれます。また、SDGsの目標のなかには、企業の協力なしに達成するのは難しい項目も複数あります。 しかし調査では、「自社がSDGsに取り組んでいる」と回答したワーカーは約7割でしたが、「積極的に取り組んでいる」はそのうちの3割強にとどまっています。目標期限としている2030年まであと9年しかないことを考えると、日本企業の取り組みは大きく出遅れていると言わざるを得ません。
企業がSDGsを推進するためには
調査からは、多くのワーカーが、自社におけるSDGsの取り組みを社員に共有すること、さらにSDGsの基本的な考え方を学ぶ機会を設けることが必要と考えていることがわかりました。SDGsが採択された2015年以降、教育の現場ではSDGsが取り上げられて学ぶ機会も確実に増えてきています。ただ、今の社会や企業を担っている大人世代はSDGsをじっくりと学ぶ機会を得られていません。 SDGsの理念に反対する人はおそらくいないでしょう。意味を正しく理解できれば、その重要性と必要性を誰もが理解するはずです。しかし現状では、少なくとも約3/4の企業がSDGsに積極的に取り組めていない、または取り組みが広く社内に浸透していない可能性があります。その原因の一つには企業としてのSDGsへの理解が不足していること、そしてもう一つには従業員への働きかけ(情報発信、学びの機会提供)が不十分なことがあるようです。 これからの時代はSDGsへの姿勢が企業の価値として評価される時代です。SDGsに取り組むことは企業としての社会に対する責任であり、同時に、事業の継続、企業の成長・発展にも欠かせません。まずは、SDGsへの社内理解を促進すること、そして自社の取り組みを社内外へしっかりと発信していくことが求められます。
SDGsは2030年以降も続く
SDGsが掲げる理念や目標は、2030年という期限を迎えたら終わるものではありません。もともとSDGsは、MDGs「MDGs(エムディージーズ/ミレニアム開発目標)」が2015年に達成期限を迎えたことを受け、新たな目標として定められたものです。調査でも、58.6%ものワーカーが、「2030年以降も、SDGsの取り組みが持続可能な事業として継続されていると思う」と回答しています。 9年後、さらにアップデートされた世界目標に乗り遅れないためにも、SDGsの取り組み推進、そのための理解促進が急務といえそうです。
実施日:2021.5.25-26実施
調査対象:社員数500人以上の民間企業に勤めるワーカー
ツール:WEBアンケート
【図版出典】Small Survey「SDGs」
河内 律子(Kawachi Ritsuko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。