HOME > オフィスづくりに役立つコラム > フリーアドレスとABWの違いとは?導入企業の事例や導入方法も紹介
公開日:2024.4. 9
執筆:コクヨコラム編集部
フリーアドレスとABWは、どちらも働き方の多様化に対応したオフィスづくりという観点から注目されているキーワードです。
この記事では、混同されやすいフリーアドレスとABWの違いや関係性、それぞれのメリットやデメリットについて、導入した企業の事例も交えながらわかりやすく解説します。
目次
フリーアドレスとABWは、似ているようでいて大きく意味の異なる言葉です。
この2つの大きな違フリーアドレスは座席を選ぶという「オフィス内の座席ルール」であるのに対して、ABWは働く時間や場所といった「働き方」に関する要素を含むという点が大きな違いのひとつです。
以下にそれぞれの特徴を簡単にまとめました。
フリーアドレスオフィスの執務エリア例
フリーアドレスは、社員ごとの固定席を設けない座席運用方法です。ワーカーにとっては好きな席を選べるのがメリットで、運用面では固定席と比べてスペースを有効活用でき、組織編制の変更や出社率の変動に対応しやすいのが魅力といえます。
<フリーアドレスの特徴まとめ>
・概要:自席が固定されない「オフィス内の座席ルール」
・目的:スペース効率化によるコスト削減
・働く場所:オフィス内
・座席:座席は均一であることが多い
・運用:チームや部署ごとで区域を決めて座る「グループアドレス」、役員は含めず役員室は残した運用などのパターンもある
ABWオフィスのさまざまなエリアの例
ABWは、業務における活動(アクティビティ)に合わせて、ワーカー自身が働く場所や時間を選択できる働き方で、ワーカーの都合や業務内容、会社の状況などの変化に柔軟に対応できるという特徴があります。
<ABWの特徴まとめ>
・概要:業務や気分に応じてワーカーが働く場所や時間を選べる「働き方」
・目的:ワーカーの生産性や働きやすさの向上
・目的:ワーカーの生産性や働きやすさの向上
・座席:オフィス内でも業務にあわせて適した空間が選べるよう、席が多様であることが多い
・運用:オフィスはフリーアドレスが多いが、固定席両方のパターンもある
フリーアドレスとABWの関係性は、「オフィス内の座席」という点から見るか、「働き方」という点から見るかで異なります。
「オフィス内の座席」という点から見ると、下の図1のようになります。
フリーアドレスには、均質な執務席の中から席を選べる「単純フリーアドレス」もあれば、ABWの一部に含まれる場合もあります。
また、ABWはフリーアドレスをともなう場合もあれば、オフィスの固定席+さまざまな執務環境という形で導入されることもあります。
図1オフィス内の座席という点から見たフリーアドレスとABWの関係
「働き方」全体という視点から見ると、フリーアドレスとABWの関係は下の図2のようになります。
この図の下半分は、オフィスの固定席を前提とした働き方、中央よりも上にいくと働く場所の選択肢が増えていきます。また、働く場所が自由でも時間が固定的ならば単純なフリーアドレスやテレワーク、働く場所も時間も自由度が高ければABWとなります。
図2働き方の自由度という点から見たフリーアドレスとABWの関係
フリーアドレスとABWは厳密には異なる部分もありますが、「自席に固定されずに働く場所を選べる」という点では共通しています。
そのため、メリット・デメリットにも似た部分があります。
フリーアドレスとABWのメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
コクヨ梅田オフィス
テーブル「Region(リージョン)」、チェアー「ingLIFE(イングライフ)」
<フリーアドレスのメリット>
①スペース効率・人員変動が柔軟
②コミュニケーション促進
③自律的な働き方を促進
フリーアドレスのメリットはたくさんありますが、固定席と比べてスペースを有効活用でき、組織編制の変更や出社率の変動に対応しやすいのが魅力といえます。
人数分のデスクを設ける固定席は、自席で荷物が増えやすく、またハイブリッドワークなどで出社しない社員がいる場合はスペースにロスが発生してしまいます。
一方で、フリーアドレスでは、ワークテーブルなどで必要な荷物だけ持って業務を行うため、柔軟で効率的な働き方ができます。
また、自部門以外のメンバーと顔を合わせる機会になったり、座席を選ぶことで社員の自律的な働き方を促進する効果も期待できます。
<フリーアドレスのデメリットや課題>
①固定席化しやすい
②集中しにくい
③マネジメントや業務連携しにくい
目的があいまいなままフリーアドレスを導入すると、結局社員が毎日同じ場所に座り、固定席化してしまう場合があります。
また、さまざまな業務の人が同じスペースで仕事をすることで集中しにくくなる、お互いの居場所を把握しにくくなるなどの問題が生じる場合もあります。
ただし、これらのデメリットや課題は、導入目的の共有やツールの整備など、事前の対策で回避できます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
コクヨ名古屋ライブオフィス
ソファ「OSFA(オスファ)」、テーブル「Franka(フランカ)」
<ABWのメリット>
①スペース効率・BCP対策
②ワーカーの働きやすさ向上による生産性アップ
③自律的な働き方促進
ABWでは自宅、カフェ、ブランチオフィスなど、社外の空間も働く場所として含めることができるため、生産性と空間の効率を同時に改善できる働き方といえます。
また、オフィス外でも仕事ができる仕組みを整えることは、災害など非常時のBCP(災害発生時などにおける事業継続計画)対策にも役立ちます。
<ABWのデメリット・課題>
①ICTツールの整備や就業ルール変更が必要
②対面コミュニケーションの減少
③労務管理や人事評価の難しさ
働く環境の選択肢が多様である一方、それらを支えるICTツールや就業ルール整備が必要になります。また、別々の場所で働くシーンが多いため、コミュニケーションの促進が必要などの課題もあります。
しかし、これらの課題も事前の対策や進め方の工夫、施策によって回避ができます。
目指す将来像から、選ぶべき働き方を考える
フリーアドレスとABWのどちらが適しているか、導入メリットがあるかの判断ポイントは、「自社の目指す将来像」です。
企業のありたい姿から、社員にどのように働いてほしいかを考え、それを実現するためのオフィスの役割や必要な設備、制度などを導き出し、将来像を明らかにしていきます。
働き方の将来像が明らかになれば、それを実現するために必要なのはフリーアドレスなのか、ABWなのか、または両方なのかが見えてくるはずです。
<将来像の設定からオフィスの構築までの流れ>
コクヨのオフィス構築・導入のプロセス
また、取り組み体制としては以下のようなパターンが考えられます。
<オフィス構築までの実施パターン>
・経営企画部門や人事部門、総務部門など、特定のチームが主体となって進める
・部門横断のプロジェクトチームを立ち上げる
・外部のコンサルタントなど、専門家を入れる
コクヨは、数多くの企業のオフィスづくりを手掛けてきた経験とノウハウを活かして、働き方やオフィスの変革を支援するコンサルティングサービスを提供しています。
■関連コンテンツ
・ワークスタイル改革コンサルティング
働き方と環境の両面から、企業のありたい姿を叶える「働き方改革」を実現
・ABW導入コンサルティング
働く場所の選択肢を増やし、自律的・効率的・創造的な働き方を実現
フリーアドレスとABWの違いやメリット・デメリット、自社にはどちらが向いていそうかなど、将来の働き方やオフィスに対するイメージが掴めてきたでしょうか。
ここからは、フリーアドレスとABWの導入方法や導入事例をご紹介していきます。
フリーアドレスを導入するフリーアドレスを導入する際、最初にするべきことは目的の明確化です。当然ながら、働き方や業種や職種によってはフリーアドレスが不向きな場合もあります。
導入の目的を明確にした上でオフィス作りの方針を決め、デメリットを避けるための対策や運用ルールなども事前に用意しておきましょう。
詳しくは関連記事をご覧ください。
フリーアドレスと一口に言っても、運用のスタイルはさまざまです。区域や部署で分けたり、役職で分けたりなど自社にあった設定をするのが成功のポイントです。
たとえば、執務エリア内で部署別にの執務エリア内で席を選べる「グループアドレス」や役員室は残した運用にする、役員も含め全社でのフリーアドレス、一区画で試験的に導入、などさまざまなパターンがあります。
コクヨ品川オフィス「THE CAMPUS」
6階「育む」フロア
ABWを導入する際も、最初にやるべきことはフリーアドレスと同様、目的を明確にすることです。そのうえで進め方の方針や計画を立て、ABW運用ルールの整備、ICTツールやオフィス改装などソフト・ハード面の準備を進めていきます。詳しくは関連記事をご覧ください。
コクヨ品川オフィス「THE CAMPUS」では、社員が業務に応じて最適な時間や場所を選択できる、オフィス内ABWを導入しています。
業務の内容や目的に応じて使い分けることができる多様なフロアを設置し、各フロアには「集う」「試す」「育む」「整う」「捗る」など機能をあらわす名称がついています。
オフィスの音や社員の持ち物への対策、設備の工夫はもちろんのこと、ABWを運用するための制度やルールを整え、社員に理解してもらうための取り組みも行っています。
■納入事例
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
■関連コンテンツ
オフィスリニューアル・移転事例紹介
コクヨのWEBサイトでは、働く空間やお困りごと解決のヒントとなるさまざまな記事やコラムを掲載しています。
ここでは、フリーアドレスやABWをもっと知るための、お役立ちコンテンツをご紹介します。フリーアドレスやABWを検討する際の参考にご活用ください。
・フリーアドレスのよくあるQ&A
席の使い方やマネジメント・人材育成のこと、社員の所在確認や備品のこと等、フリーアドレスの疑問を一気に解決できるQ&A集です。
・経験者が感じるフリーアドレス導入後の課題と解決のポイント
導入しただけではコミュニケーションが低下する⁉ コクヨが実施したフリーアドレス未経験者・経験者向け調査の結果と、フリーアドレスの課題や解決ポイントについての考察です。
・フリーアドレスの謎編 第1話 コミュニケーション活性化の巻
社内のコミュニケーションを活性化するには、社員に頑張ってもらうしかない??そんなことはありません!フリーアドレスオフィスでコミュニケーションを活性化するポイントをご紹介します。
・フリーアドレスの謎編第2話 スペース効率化の巻
限られたオフィススペースで、人員増加や人事異動のたびのレイアウト変更に苦労していませんか?フリーアドレスでオフィススペースを効率化するノウハウをお伝えします。
・フリーアドレスの謎編第3話 フリーアドレスのプランニングの巻
フリーアドレス導入時の課題として起こりがちな「作業に集中できない」「ミーティングしにくい」などの問題。これを防ぐカギとなる「バランス」と「柔軟性」とは?
・フリーアドレスの謎編 第4話 フリーアドレスの運用の巻
フリーアドレスを導入したら、多少の不便があるのは当たり前??いいえ、便利なグッズを活用すれば、そんな状況は回避できます。フリーアドレスに役立つ製品をご紹介します。
・はじめてのABWを失敗させない、社員自身が押さえておきたい"意識改革"のポイント
ABWは働き方を選ぶ自由が大きくなる分、社員の働き方に関する意識改革といったチェンジマネジメントも必要になります。その中でもとくに重要となる「コミュニケーション術」をお伝えします。
・ABW導入事例-ABW導入によってオフィスはこう変わる-
ABWを導入することで、オフィスはどう変わるのでしょうか。多様なスペースのインテリアやレイアウト、実際に社員が働いている様子など、コクヨ社内の導入事例を豊富な写真とともにご紹介します。
・ABWとは?働く「時間」と「場所」を自由に選択できる時代の到来
働く「時間」と「場所」を選べると、どのような働き方になるのでしょうか?業務やプライベートのスケジュールを考慮しながら働く3人のモデルケースをご紹介します。
・【オフィスのチカラ】ABWって何ですか?
ABWの定義や導入のメリット、ABW採用時のポイントなど。ABWに関する基本的な情報をまとめました。
コクヨ梅田ライブオフィス
フリーアドレスやABWを導入すべきか、どちらが適しているかは組織の目指す姿や業種・職種、組織風土によって異なります。まずはさまざまな事例を見ながら、自社に適した働き方のイメージを膨らませることがおすすめです。
コクヨのショールームや、実際にコクヨの社員が働くライブオフィスやでは、コクヨがご提案するさまざまな働き方やオフィスの工夫、家具などをご見学いただけます。
ツールや制度の整備に関するノウハウや事前準備と社員へのインプット方法などもお伝えしていますので、ぜひご活用ください。
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