リサーチ

2016.07.27

IT部門の「高齢化」が生む弊害とは

40代以上のミドル層によるブラックボックス化

少子高齢化が進む日本では、企業における人材の高齢化は深刻な問題である。それは、昔はIT技術の進展の速さや変則的な勤務形態といったイメージから「若者の仕事」というイメージも強かったIT部門でも起こっている。この「IT人材の高齢化」は、他の部門と比べて特に深刻な問題を抱えているようだ。

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が、経済産業省商務情報政策局の監修を受けITユーザー企業を対象に行った調査によると、各企業のIT部門の年齢構成について、「40代以上の層が多い」と答えた企業は56.9%。シニア層で構成される組織が過半数を占めた。情報子会社はそれよりは幅広い年齢構成ではあるものの、それでも「40代以上の層が多い」と答えた企業が一番多く、31.9%におよぶ。IT部門、情報子会社とも、40歳以上の層が厚い傾向にあるようだ。
 
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このIT技術者の高齢化問題については、どのような問題が危惧されるのだろうか。
高齢化に伴う問題について1位~3位まで聞いたところ、最も多く挙がったのが、「現行システムを維持する人材のスキル移転」 、すなわち過去に構築したシステムの取り扱いに関する知識や技術を若い世代に伝えるということが、1位から3位の合計で74%。次に「新しいIT技術への対応の遅れ」が66%という結果だった。なお、この2点については、1位もしくは2位で同時に回答した企業が多かった(259社 25.4%)。
 
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IT部門は専門的なスキルや知識が必要であることから、年齢が上がっても現場担当を続けがちである。その結果、若い人材を登用しにくく、かといって今さら会社側が他に最適なポストを用意するのも難しい。さらに、基幹システムのような長年使い続けるものでは、かつてシステムを組んだベテランが保守業務を長年続けていることで、システムがブラックボックス化してしまい、若手に引き継ぎづらくなるといったケースも起こりうる。また、親会社がグループ内のIT統制を強化するために子会社にシステムの刷新を求めても、担当者が古い技術に固執して抵抗するためIT統制が進まない、というケースも想定される。
さらに、このまま高齢化が進むと、高賃金の現場担当者がたくさん生まれ、コスト面での圧迫も考えられる。
しかしながら、自社のシステムなどの構造を知りつくしたベテランIT人材は、企業にとって貴重な財産でもある。彼らが高齢化した後の最適なポストと、次世代へ引き継ぎやすい形を考えて、早急に対策することが必要となってくる。例えば、彼らのモチベーションを上げるために、課長→部長などの職種とは別に、専門的なキャリア職種(専任部長、エキスパート職など)を設置するという方法があるだろう。
さらに、IT部門の高齢化という構造を打ち破るためには、システムそのものの再構築も必要になってくる。高いスキルを持つIT担当者がいるうちに、プロジェクトを終えなければならないが、このプロジェクトのマネジメントを任すことで、「自らのスキルを若手に引き継げる体制づくり、それ自体が仕事である」という意識を持たせるのが有効かもしれない。
 
 
 
 
(出典)一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「第21回 企業IT動向調査2015(14年度調査) ~データで探るユーザー企業のIT動向~」をもとに作成
作成/MANA-Biz編集部