組織の力
2016.09.13
人事データベースを活用した、最先端の人事施策〈前編〉
セプテーニが導き出した「人材育成の方程式」
インターネットマーケティング事業を中心に、新規事業の創出にも力を入れている株式会社セプテーニ・ホールディングス。年々加速する事業の成長戦略を支えるためには、戦力となる人材の採用と人材の育成強化が大きな課題になっていた。それを解決すべく考えられたのが『人材育成エンジン』である。果たして、『人材育成エンジン』とはいったいどんなものなのか。このエンジンの生みの親である専務取締役の上野勇さんと、現場で開発に関わった人的資産研究所の進藤竜也さんに『人材育成エンジン』のコンセプトや考え方について伺った。
人は育てられない。
人は自ら育つものである
ベンチャー企業であれば、いかにして戦力化する人材を獲得するか、永遠の課題である。それを解決できるという『人材育成エンジン』とは、いったいどういう仕組みなのだろうか?
「私たちの考える人材育成では、"人は育てられない、人は(自発的に)育つもの"と定義しています。つまり職場で良質な経験を重ねることで、"人は育つ"。これがセプテーニグループの人材育成のコアコンセプトです。
この図は、私たちの人材育成の概念を方程式として表したもので、『人材育成の方程式』といいます」(進藤氏)
「まずは、右側の【相性】について説明します。Pは、その人の<資質>で「個性や志向性」を示し、不変なもの。株式会社ヒューマンロジック研究所が提供するFFS理論を用いて、攻め(未来創造型)⇔守り(課題解決型)を縦軸、直感派⇔理論派を横軸にして、大きく4つのタイプに分類しています。
またEの<環境>は、その人が育つために必要な要素で、人材育成の施策として捉えており、入社すると社員が必ず与えられるTの<チーム>とWの<仕事>の2つを指します。<チーム>は上司や部下、同僚などの人間関係との相性を、<仕事>は職制や職種などとの相性を示しています。こうした、生まれ持った資質(P)×とりまく環境(E)の相互作用が、人の成長に影響をおよぼすと、私たちは考えています。
資質と環境の相互作用が人の成長に及ぼす方程式を証明するために、当社の人的資産研究所を中心に、株式会社ヒューマンロジック研究所に協力を頂きながら、3年かけて実地検証を行い、精度を向上してきました」(進藤氏)
資質はその人がもっている不変なものなので、環境いかんによって、成果(パフォーマンス)の良し悪しが変わるという。環境や仕事の向き不向きは、実体験としても思い当たるところはある。気になるのは、資質と環境との相性がどのように導き出され、それがどう評判(成果)に反映されるかである。
「個人とチーム、個人と仕事、それぞれの相性がマッチしているかどうかをどのように判定するのか。それは半年に1回、全従業員に行っている通常とは少し異なる方法を用いた『360度評価』。このスコアが上がったり、下がったりすることで、評判がよくなった、悪くなったと判定しています。環境をチューニングすることで、この評判は大きく変わります。スコアがよくなれば、この人との環境の組み合わせがよくなった。スコアが悪くなれば、この人にこの環境はマッチにしていない。とわかるわけです。しかし、この方程式はあくまで「人材育成」という観点で作られたものであり、これで人事評価するものではありません。だから、この方程式をもとにした『人材育成エンジン』を使って社員一人ひとりに最適な環境を与えて、成長を後押しすることが重要な役割なのです」(上野氏)