レポート
2019.01.21
課題の深掘りと「見える化」が生産性向上の第一歩に
2018年12月14日、コクヨの東京品川SSTオフィスにおいて、「これから求められる“幸せな”働き方改革」と題して、株式会社日立製作所とコクヨ株式会社の共催によるセミナーが実施された。講師を務めるコクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部 ワークスタイルコンサルタントの立花保昭氏と、株式会社日立製作所ソリューション開発営業部主任の阪口絵美氏は、数百の企業に対して働き方改革の提案に携わってきた経験をもとに、働き方改革における重要な観点や実際の取り組み事例を紹介した。2人の講師が語った内容を凝縮して紹介しよう。
データを活用して
「見える化」することが効果的な改革につながる
続いて、株式会社日立製作所ソリューション開発営業部主任の阪口絵美氏が、「先端ITを活用した働き方改革実現」というテーマで、同社の新技術を活用した自社における働き方改革の取り組みについて紹介した。
【阪口氏講演概要】
日立製作所では1990年代から、人の気持ちに寄り添った働き方のあるべき姿を追求し、現在の働き方改革につながる施策を行ってきました。数々の失敗や挫折に直面しながらも少しずつ成功事例を蓄積し、現在は改革のノウハウを「日立ワークスタイル変革ソリューション」としてお客さまに提案しています。
また2016年からは、「日立ワーク・ライフ・イノベーション」と題して全社規模の働き方改革を進めています。そこで、日立における働き方改革の取り組みからいくつかの事例をご紹介します。共通するポイントは、「デジタルで働き方を変えていく」です。近年は、コンピュータやセンサなどを通じて、ワークシーンにおける多様なデータが取得できるようになってきています。このデータを解析することで働き方の「見える化」が可能になるため、より効果的な施策を打つことができると私たちは考えています。
ワーカー情報の分析によってサテライトオフィスの候補地を割り出し
効率的な働き方につなげる
日立では、働き方改革における施策の一つとして「タイム&ロケーションフリーワーク推進」(限られた時間を効率的に活用して最大限の成果を上げる)を決め、サテライトオフィスの拡充を進めてきました。2018年現在は首都圏42拠点を備えています。
サテライトオフィスをどこに設置すればタイム&ロケーションフリーワーク推進につながるかを検証するために、日立の中央研究所では「人流シミュレーション」という技術を活用して検証を行いました。約7400人のワーカーを対象に最寄り駅と通勤ルートを調査したうえで、多くの利用者がより短時間で通えるオフィスの候補地を特定し、その場所に郊外型サテライトオフィスを設置していったのです。
その結果、2016年10月時点では1か月あたり2760人だったサテライトオフィス利用者が、2018年5月には5万人を超えるほどになりました。つまり、少なからずワーカーが、通勤時間や移動時間のムダを減らして効率的に働けるようになったわけです。
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人事採用やストレスケアの分野でも
データ活用で次の一手を繰り出せる
私たちは、データを活用することによってこれまでは定量化しづらかった分野でも「見える化」を実現し、改革に活かしています。
その一つが、システム&サービスビジネス統括本部で実施したピープルアナリティクス(人財データ分析)を取り入れた採用です。適正検査などから得られた定量的なデータや社内のハイパフォーマーへのインタビューなどによる定性的なデータから4象限のあるべき人財ポートフォリオを設計。さらに優秀な人財を採用するための人財要件を設計し、面接官へのトレーニングを実施するなど選考手順を大幅に変更することで、結果としてこれまで1つの事象に63%の人財が偏っていた採用が、2017年には41%に減少し、あるべき人財タイプの比率を大きく変えることができました。
またワーカーのストレスケアにおいても、大量かつ多様な人財データをAIを活用して解析することで、ストレスケア候補者を含む組織を検出することができます。日立ソリューションズでは、これまでの休職者データなども含め、本ソリューションで検証したところ、休職者の53%を予測することができました。ストレスケアは早期ケアが大変重要であるため、メンタルバランスを崩す前に、産業医や保健師などの専門職が対策することが可能になります。
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働き方改革においては、まず「ありたい姿」を見定めることが大切です。そのうえで現状をデータによって見える化し、目標とする姿に対してどれだけのギャップがあるのかを知ることで、打ち手が見えてきます。もし必要なデータがなければ、ほしい情報をデータ化するためのツールを整えることも必要です。
日立は自社での取り組みや経験を活かして、多様な情報のデータ化において企業を支援できる体制を整えてきました。「見える化」を起点に、より少ないインプットでより多くのアウトプットを出せるような、生産性の高い働き方をお客さまができるよう、お手伝いさせていただければと考えています。